文献情報
文献番号
200812008A
報告書区分
総括
研究課題名
抗体ライブラリを活用した疾患関連蛋白質可視化解析技術の研究
課題番号
H18-ナノ・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
角田 慎一(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤的研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、細胞内で機能する一本鎖化Fv(scFv)抗体、あるいは細胞内発現型抗体(イントラボディ)を創出し、疾患関連蛋白質の機能解析・機能制御に応用することを目的に、(1)簡便かつ迅速に、微量の抗原蛋白質に対する抗体を創製可能な抗体ライブラリおよび、そのスクリーニング法の確立、(2)それら抗体と蛍光蛋白等との結合体を用い、蛍光分子イメージング技術を活用することで、細胞内疾患関連蛋白質の動態や蛋白間相互作用等を効率よく解析できる技術の開発を目指すものである。本研究により、イントラボディ創出方法の最適化、細胞内疾患関連蛋白質の動態解析による疾患分子病態の解明、治療標的の探索、細胞内分子標的治療薬(細胞内抗体医薬)創出等への展開が期待される。
研究方法
抗体プロテオミクス技術の実証のため、乳がん細胞株の2D-DIGE解析から発現変動蛋白質を同定し、それらに対する抗体作製と、得られたファージ抗体と乳がん組織アレイによる発現プロファイリングにより、有用な乳がん関連蛋白質の絞り込みを行った。絞り込んだ蛋白質の機能解析のため、scFvと蛍光蛋白質Venusの融合体の遺伝子をイントラボディとして細胞に発現させ、標的分子の蛍光イメージングを試みた。
結果と考察
本年度は、まず抗体プロテオミクス技術の実証を試みた。本技術用いて乳がん関連蛋白質の同定を試みたところ、20種類の候補蛋白質を2D-DIGEにより見出した。2D-DIGEゲルから回収した蛋白質の一部を用いて、質量分析により蛋白質を同定し、同時に抗体の単離を試みたところ、全ての候補蛋白質に対する抗体を取得することに成功した。このように、プロテオミクスで同定できる多数の蛋白質に対し、わずか数週間で網羅的に抗体を創製可能な本技術は、極めて有用であると考えられる。さらに、同定した蛋白質の中の機能未知分子の解析を目的に、取得したscFv抗体を蛍光蛋白質との融合蛋白質をとして細胞内で発現させ、蛍光イメージング解析を試みたところ、細胞内の当該標的分子を可視化できる可能性が示唆された。
結論
今後、さらなる最適化等が必要であるが、本研究で開発した技術は、疾患プロテオミクスによる創薬ターゲット、バイオマーカー候補の探索から、可視化機能解析までの絞り込みを効率化し、創薬研究を大きく加速するものと期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-