文献情報
文献番号
200812006A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞性免疫誘導能を持つペプチド結合リポソームを応用したウイルスワクチンの創製
課題番号
H18-ナノ・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
内田 哲也(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
- 赤塚 俊隆(埼玉医科大学 微生物学教室)
- 松井 政則(埼玉医科大学 微生物学教室)
- 梶野 喜一(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
- 種市 麻衣子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
- 垣内 史堂(東邦大学医学部 免疫学講座)
- 小田 洋(日油株式会社 DDS研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
24,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現行のウイルスワクチンはウイルス表面抗原に対する抗体の産生を誘導することを目的としているため、表面抗原の異なるウイルス亜種に対して有効に働きにくいという欠点がある。これに対し、ウイルス内部の蛋白に特異的な細胞性免疫を誘導するワクチンが開発されれば、ウイルスの変異の影響を受けにくいワクチンの創製が期待される。我々は近年、細胞性免疫誘導能の高いリポソーム処方を開発した。本研究ではこのリポソーム処方を細胞性免疫(CTL)誘導型ウイルスワクチンの創製に応用し、インフルエンザワクチン、SARSワクチン、C型肝炎ワクチンを開発することを目的とする。
研究方法
平成19年度までに同定されたCTLエピトープを用いてリポソーム結合ペプチドによるウイルス感染抵抗性誘導の可否について、ヒトHLAを遺伝子導入したマウスを用いて検討を行った。
結果と考察
リポソーム結合ペプチド免疫マウスは致死量のH5N1型およびH1N1型インフルエンザウイルスの経鼻感染に対し無徴候で生存した。さらに、免疫群ではH5N1型、H1N1型、およびH3N2型ウイルスの肺における増殖が顕著に抑制された。以上のことから、細胞性免疫誘導型ワクチンによってウイルス感染抵抗性が誘導可能であること、インフルエンザウイルス亜型に共通して含まれるCTLエピトープを用いてワクチンを創製することにより、ウイルス亜型に共通して有効性を発揮するワクチンを創製することが可能であることが示唆された。リポソーム結合抗原は貪食阻害剤で処理したマクロファージにおいても細胞内に取り込まれたが、ピノサイトーシス阻害剤によって取り込みが著しく抑制された。このことから、リポソーム結合抗原は抗原提供細胞のピノサイトーシスを利用してマクロファージに取り込まれ、その結果、細胞性免疫が誘導されることが示唆された。我々が開発したリポソーム結合抗原によって高効率に細胞性免疫が誘導される機序は通常の外来抗原の場合と著しく異なるものであることを示唆する結果が得られた。
結論
本年度の検討の結果、CTL誘導型ワクチンによってインフルエンザウイルス感染抵抗性を誘導することが可能であることが明らかとなった。同様の手法は表面抗原の変異しやすい他のウイルス(HIV、HCV、SARS等)による疾患を予防するワクチンの創製にも応用可能であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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