既存添加物の品質向上に資する研究

文献情報

文献番号
202024046A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の品質向上に資する研究
課題番号
20KA1008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 西﨑 雄三(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
  • 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,562,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物357品目(枝番込み374品目,但し,香辛料抽出物を1品目(74基原)とする)の内,222品目(枝番品目込み)の成分規格が設定済であるが,残り151品目(枝番込み)と香辛料抽出物1品目(74基原)の成分規格が未設定である(令和2年12月現在).成分規格が未設定である理由として,1.流通確認が取れないもの,2.基原・製法・本質が曖昧なもの,3.有効成分が解明できていないもの,4.現時点の科学技術で妥当な規格試験法が設定できないもの,が挙げられる.すなわち,少なくとも1に該当するものを除き,2〜4の問題を解決することが成分規格設定には必要である.このような背景から,本研究では,自主規格,流通実体,安全性評価状況等の調査,評価手法の基礎検討及び応用研究を通じて,既存添加物の品質向上に資する情報を収集することを目的とした.
研究方法
(1) 既存添加物の成分規格に関する研究:自主規格等を調査する.(2) 既存添加物の有効成分の解明:最新の知見及び技術により詳細な成分解析を行い,成分規格の設定に必要な指標成分を探索する.(3) 試験法及び分析法の開発:従来法では試験法が設定困難なものについては,指標成分又は代替物質の合成による定量用標品の供給体制の確立または定量用標品を必要としない相対モル感度(RMS)を用いたSIへのトレーサビリティを確保した定量法,分子生物学的手法を応用した試験法,等を検討する.

結果と考察
(1) 既存添加物の成分規格に関する研究:現時点における自主規格及び業界団体規格を収集した.また,試験成績等の具体的なデータが得られているものと得られていないものを整理した.(2, 3) 既存添加物の有効成分の解明,試験法及び分析法の開発:ヒマワリ種子抽出物,ショウガ抽出物,香辛料抽出物(コショウ,シナモン,オールスパイス),クチナシ色素,シタン色素,ウコン色素,キトサン,酵素処理ナリンジン等の成分組成及び分析法の検討を実施した.成分規格の定量法を確立するために,qNMR及びRMSを利用した信頼性の高いSIにトレーサブルな分析法の開発及び応用を検討した.qNMRの応用により,香辛料抽出物コショウ等の主成分を直接定量可能であることが確認できた.外部標準法定量NMR (EC-qNMR)の信頼性向上に関する検討を行い,完全自動化スクリプトを作成した.RMSを利用した方法では,酵素処理ナリンジン,シタン色素等,定量用標品が供給できない各種品目への応用を検討すると同時に,装置依存なく精確な定量値が得られるように,UV/Vis及びPDA検出器の応答能校正用物質の探索,全合成ルートを検討した.溶媒に不溶で成分組成または構造の解析が困難なため成分規格の設定が遅れている品目への対応として,13C-CP/MAS NMRの応用を検討した.CCCの応用を検討し,主成分の単離精製が効率よくできることが確認された.MALDI/TOF-MSによるアミノ酸配列及びMascotサーチによるprotein blastサーチにより,酵素品目の基原同定の精度向上を検討した.
結論
本研究は,既存添加物の基礎情報の収集,基礎研究,その応用による評価手法を検討する.得られた結果は,既存添加物の品質向上に必要である成分規格案作成のための重要な基礎資料となっている.(1) 既存添加物の成分規格に関する研究 では,現時点の自主規格及び業界団体規格をとりまとめ,各品目の基原,有効成分の確認を整理するための基礎情報としている.次年度以降に,流通・使用実態,安全性情報を整理し,成分規格作成の実現可能性及び優先順位を整理する予定である.(2, 3) 既存添加物の有効成分の解明,試験法及び分析法の開発 では,(1)の情報を元に,入手可能であった品目について,有効成分が明らかでないものについては成分分析を,有効成分が明らかであっても具体的な分析法がないものについては分析法を検討した.必要に応じて,qNMR, RMS等を用いた分析法を応用し,SIトレーサブルな試験法の開発を行った.試験法が成立したものについては,成分規格素案を別に作成し必要に応じて実試験を行い評価した後,第3者検証を実施し,成分規格案として提案する予定である.成分規格案の作成のこのような手続きに1〜3年を要するが,過去3年間に新規38品目及び改正18品目を同検討会に提案している.また,既存添加物の成分規格案の新規作成及び改正を行うには新たな分析法の導入が必要となることが多いため,本研究では,新規分析法の開発・実用化・標準化を行っている.qNMRについてはJIS K0138 (2018)を成立させ現在ISO化を行っており,RMSについてもJIS化を検討しているところである.

公開日・更新日

公開日
2021-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,536,000円
(2)補助金確定額
9,536,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,337,703円
人件費・謝金 772,200円
旅費 0円
その他 1,430,537円
間接経費 0円
合計 9,540,440円

備考

備考
必要な消耗品を購入したところ研究分担者の分担金において4,440円の不足金が発生したため、合計に差異がある。

公開日・更新日

公開日
2022-11-09
更新日
-