ヒト末梢血誘導型ミクログリア細胞技術を用いた食品の神経毒性評価システムの開発

文献情報

文献番号
202024043A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト末梢血誘導型ミクログリア細胞技術を用いた食品の神経毒性評価システムの開発
課題番号
20KA3005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
扇谷 昌宏(名古屋市立大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 原口 祥典(佐賀大学 医学部精神科)
  • 加藤 隆弘(九州大学大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,329,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中に微量に含まれる汚染物質(金属類)が示す毒性は様々である。その中でも神経毒性は重篤であり、注意が必要である。近年、神経毒性はニューロン(神経細胞)だけでなく、周囲のミクログリアが出す炎症性サイトカイン等によっても増悪することが明らかとなり、それらの関連が注目されている。
本研究は、申請者が開発したヒト末梢血誘導型ミクログリア細胞技術を用いて、神経毒性を中心とする食品安全性評価システムの開発を行う。汚染物質のミクログリアおよびニューロンに対する影響を明らかにし、科学的根拠に基づく食品安全行政に寄与することを目的としている。
研究方法
研究初年度である本年度は、マウス由来のミクログリア株化細胞およびニューロン株化細胞を用いて、実験系の基礎構築を行った。
 実験に使用した金属は、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン、銅、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、ガドリニウム、カドミウム、ガリウムおよびアルミニウムの塩化物を使用した。なお、金属元素の影響を明らかにするため、リチウムは塩化物と炭酸塩の2種類を用いて実験を行った。
 細胞毒性評価は、酵素活性測定法であるWST法を用いて測定を行った。細胞を96穴プレートに播種し、24時間後に各金属種を添加した。添加24時間後にWST-8試薬を添加し、吸光度を測定した。得られた吸光度から生存率を算出した。
結果と考察
毒性試験の結果、①ミクログリアとニューロンでほぼ同様の毒性を示す金属(カルシウム、カドミウム、ガドリニウム、亜鉛)、②ニューロンの方により強い毒性を示す金属(マンガン、銅)、③ミクログリアの方により強い毒性を示す金属(リチウム、マグネシウム、コバルト、鉄、ニッケル、カリウム、ナトリウム)が明らかとなった。
 また、ミクログリアの重要な機能である貪食能や遊走能に関しても金属種によって及ぼす影響が異なることが明らかとなった。
 本年度の成果として各金属種は、ミクログリアに対する毒性および細胞機能に種々の影響を及ぼすことが明らかとなった。加えて、その作用はニューロンと異なることが今回初めて明らかとなった。
 特に毒性試験において、ミクログリアとニューロンでは毒性が異なる金属種が存在しており、ミクログリアの方がニューロンよりも高い毒性を示す金属種が多く存在した。これは、ミクログリアの方がニューロンよりも金属に対する感受性が高い可能性を示しており、食品安全分野において、従来のニューロンのみを対象としていた研究だけでは不十分であることを示唆している。
結論
本研究によって、食品の安全性確保分野における神経毒性評価にミクログリアを加えることの重要性が初めて明らかとなった。
本年度は、ニューロンおよびミクログリア単体での評価を行い、実験基盤の構築が達成された。次年度に予定しているニューロンとミクログリアの共培養系は、本年度に構築した実験基盤を用いて初めて実施可能となるものであり、本年度の成果は、次年度に活用されるものである。

公開日・更新日

公開日
2022-09-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024043Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,027,000円
(2)補助金確定額
3,027,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,270,164円
人件費・謝金 0円
旅費 57,130円
その他 1,706円
間接経費 698,000円
合計 3,027,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
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