文献情報
文献番号
200812002A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞内元素アレイ解析の臨床応用に向けた基礎研究
課題番号
H18-ナノ・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
志村 まり(国立国際医療センター研究所 難治性疾患研究部難治性疾患研究室)
研究分担者(所属機関)
- 山内 和人(大阪大学大学院工学研究科超精密加工)
- 松山 智至(大阪大学大学院工学研究科超精密加工)
- 前島 一博(理化学研究所・中央研究所今本核研究室)
- 萩原將太郎(国立国際医療センター血液内科)
- 岡村 匡史(国立国際医療センター研究所ヒト型動物開発研究室)
- 石川 哲也(理化学研究所播磨研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
40,664,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
細胞内元素を可視化する方法として、細胞レベルで直接元素分布を解析した報告は少ない。細胞レベルで網羅的に元素分布を可視化することで、初めて元素変動と蛋白質や遺伝子発現との対応も可能となり、多角的な視点での細胞機能や病態への理解が可能となることが期待される。走査型蛍光X線顕微鏡(SXFM)の改良に加えて、細胞内元素高速測定、医学生物応用、次世代放射光源を用いた場合の当該手法の拡張を目的とする。
研究方法
a.細胞観察用SXFMシステムの高速測定およびユーザーフレンドリー化
b. SXFMの生物・医学応用
1)ATP7bトランスジェニックラット(TGLEC)の作成とSXFMによる元素局在解析
2)蛋白質結合元素の電気泳動による可視化
3)血漿中23元素のICP-MS同時解析
4) 次世代放射光源を用いた場合の当該手法の拡張性
倫理面への配慮;臨床試料を用いる場合は、インフォームドコンセントを十分配慮する。当該機関の患者検体倫理委員会に諮問てから行う(承認済み)。動物実験は、当該機関の動物委員会に報告し、動物愛護への配慮を欠くことのないよう計画する。組換DNA実験はカルタヘナ条約を遵守する。
b. SXFMの生物・医学応用
1)ATP7bトランスジェニックラット(TGLEC)の作成とSXFMによる元素局在解析
2)蛋白質結合元素の電気泳動による可視化
3)血漿中23元素のICP-MS同時解析
4) 次世代放射光源を用いた場合の当該手法の拡張性
倫理面への配慮;臨床試料を用いる場合は、インフォームドコンセントを十分配慮する。当該機関の患者検体倫理委員会に諮問てから行う(承認済み)。動物実験は、当該機関の動物委員会に報告し、動物愛護への配慮を欠くことのないよう計画する。組換DNA実験はカルタヘナ条約を遵守する。
結果と考察
a. 細胞観察用SXFMシステムの開発;情報処理、MCA、検出器の改良を行い、1/17に短縮できる所見を得た。
b. SXFMの生物・医学応用
1)銅代謝異常や肝炎・がんで知られているLECラットの原因遺伝子のTGLECを作成した。TGLECはLECと比較して、肝炎の発症はなく、銅の細胞内局在変化が認められた。
2)等電点電気泳動法での蛋白質結合元素の検出が、SXFMイメージングにより可能となった。
3)血漿での元素変動について、健常人ボランティア、血液癌患者での、ICP-MSでの微量元素分析および比較検討を試みた。統計学的有為な元素変動が血液癌患者には認められた。
4)光の波がそろったコヒーレントなX線を活用した新しいタイプのX線顕微鏡(X線ナノCT)を開発し、ヒト染色体の内部構造の可視化に成功した。
本年度の試料測定結果から、細胞内網羅的元素の測定は、細胞機構や病態を理解する上で有用と考える。生物試料の効率の良い測定やユーザーズフレンドリー化を今後完成することで、統計学的なデータに基づいた測定が簡便になり、より積極的な生物医学情報を発信できるシステムに発展したと考える。将来のSPring-8におけるSXFM専用ビームラインでの貢献が期待できる。
b. SXFMの生物・医学応用
1)銅代謝異常や肝炎・がんで知られているLECラットの原因遺伝子のTGLECを作成した。TGLECはLECと比較して、肝炎の発症はなく、銅の細胞内局在変化が認められた。
2)等電点電気泳動法での蛋白質結合元素の検出が、SXFMイメージングにより可能となった。
3)血漿での元素変動について、健常人ボランティア、血液癌患者での、ICP-MSでの微量元素分析および比較検討を試みた。統計学的有為な元素変動が血液癌患者には認められた。
4)光の波がそろったコヒーレントなX線を活用した新しいタイプのX線顕微鏡(X線ナノCT)を開発し、ヒト染色体の内部構造の可視化に成功した。
本年度の試料測定結果から、細胞内網羅的元素の測定は、細胞機構や病態を理解する上で有用と考える。生物試料の効率の良い測定やユーザーズフレンドリー化を今後完成することで、統計学的なデータに基づいた測定が簡便になり、より積極的な生物医学情報を発信できるシステムに発展したと考える。将来のSPring-8におけるSXFM専用ビームラインでの貢献が期待できる。
結論
細胞内外の微量元素の分布や量を網羅的に調べることは、正常な生体や病態を理解するために有用な方法である。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-