生体超微細1分子可視化技術によるナノDDSとがん標的治療

文献情報

文献番号
200812001A
報告書区分
総括
研究課題名
生体超微細1分子可視化技術によるナノDDSとがん標的治療
課題番号
H18-ナノ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大内 憲明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 元博(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石田 直理雄(産業技術総合研究所)
  • 権田 幸祐(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 水関 博志(東北大学 金属材料研究所)
  • 多田 寛(宮城県立がんセンター 乳腺外科)
  • 小林 正樹(東北工業大学 電子工学科)
  • 小林 芳男(茨城大学 工学部)
  • 名嘉 節(東北大学 多元物質科学研究所)
  • 亀井 尚(東北大学病院)
  • 権田 幸祐(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 甘利 正和(東北大学病院)
  • 仲田 栄子(東北大学医学部 保健衛生学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
36,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はこれまで機能性ナノ粒子作製から、単粒子イメージング可能な三次元リアルタイム共焦点顕微鏡システム開発を行ってきた。今年度も1.高感度計測を可能とする蛍光・X線・MRIナノマーカーの開発、2.高速共焦点レーザー顕微鏡システムを用いた超微細in vivoイメージング法の確立と細胞内タンパクの動態観察、3.生体における分子標的腫瘍タンパクマッピング技術に基づく外科治療の確立の3項目について研究を進めた。
研究方法
1. 蛍光ナノ粒子にシリカコーティングを施す際、最適なTEOS濃度を検討し、同粒子によるラット鼠径部のセンチネルリンパ節検出を試みた。
2. 高転移性がん細胞を抗腫瘍抗体結合蛍光ナノ粒子でラベルし、三次元リアルタイム共焦点顕微鏡システムにより、がん細胞が腫瘍間質を移動する様子を生体内で観察した。
3. 電子走査方式光変調蛍光計測法開発のため、リニアアレイ型トランスデューサの各素子への信号の位相制御による集束化および走査の検討を行った。また、鏡視下蛍光計測装置を試作し、量子ドットによるブタ胃センチネルリンパ節検出実験を行った。
結果と考察
1.シリカコーティング生成実験において、TEOS濃度0.02Mで厚さ10nmのシリカ層を形成することがわかった。ラット鼠径リンパ節検出実験では色素法に比べて高い検出率と造影効果の長時間持続が認められた。シリカコーティングは蛍光色素保護とサイズ調整に有用である。
2.血管から遠方の細胞のPAR1は、細胞全体が緩い拡散性を示したが、血管近傍の細胞では10-300倍速い拡散性を持つことが分かった。さらに血管近傍のがん細胞では、血管に向かって浸潤突起を形成している様子の可視化に成功した。
3. 電子走査方式の研究では、液体散乱媒質中に蛍光体を挿入し,計測を行った結果、蛍光体の蛍光変調信号のピークを確認できた。電子走査プローブの開発に成功は超音波変調蛍光検出法の生体応用に向けて大きな前進である。
ブタ胃鏡視下センチネルリンパ節検出実験では色素法に比べ高い検出感度を示すことがわかった。内視鏡は拡大観察可能であり病巣の蛍光ラベルによる蛍光計測と組み合わせることで精密な外科手術に有用と思われる。
結論
1粒子蛍光計測技術、ナノ粒子シリカコーティング技術を初め、ナノ医療を推進する基盤作りを順調に進めることができた。今後、癌の転移メカニズムの解明や薬物動態解明など臨床に直結する研究への幅広い展開が期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200812001B
報告書区分
総合
研究課題名
生体超微細1分子可視化技術によるナノDDSとがん標的治療
課題番号
H18-ナノ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大内 憲明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 元博(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 川添 良幸(東北大学 金属材料研究所)
  • 粕谷 厚生(東北大学学際科学研究センター)
  • 水関 博志(東北大学 金属材料研究所)
  • 小林 正樹(東北工業大学 電子工学科)
  • 小林 芳男(茨城大学 工学部)
  • 名嘉 節(東北大学 多元物質科学研究所)
  • 亀井 尚(東北大学病院)
  • 権田 幸祐(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 甘利 正和(東北大学病院)
  • 仲田 栄子(東北大学 医学部保健衛生学科)
  • 多田 寛(宮城県立がんセンター)
  • 桜井 遊(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 河合 賢朗(東北大学・大学院医学系研究科)
  • 高見 誠一(東北大学 多元物質科学研究所)
  • 北條 大介(東北大学 多元物質科学研究所)
  • 魚森 昌彦(東レ・ダウコーニング株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はこれまで機能性ナノ粒子作製から、単粒子イメージング可能な三次元リアルタイム共焦点顕微鏡システム開発を行ってきた。今回、1.高感度計測を可能とする蛍光・X線・MRIナノマーカーの開発、2.高速共焦点レーザー顕微鏡システムを用いた超微細in vivoイメージング法の確立と細胞内タンパクの動態観察、3.生体における分子標的腫瘍タンパクマッピング技術に基づく外科治療の確立、について研究を進めた。
研究方法
1. ナノサイズヨウ化銀ビーズの体内動態検討と蛍光ナノ粒子のシリカコーティングおよび同粒子によるラット鼠径部のセンチネルリンパ節検出を試みた。
2. 抗HER2抗体結合量子ドットを作製し、担がんマウス内の移動を、三次元リアルタイム共焦点顕微鏡システムを用いて観察した。また高転移性がん細胞を抗腫瘍抗体結合蛍光ナノ粒子(抗PAR1抗体)でラベルし、がん細胞が腫瘍間質を移動する様子を生体内で観察した。
3. 深部蛍光標的検出を目的に光変調蛍光計測法検討のため、高分散媒体中の蛍光色素検出を試みた。また、鏡視下蛍光計測装置を試作し、量子ドットによるブタ胃センチネルリンパ節検出実験を行った。
結果と考察
1.ナノサイズヨウ化銀ビーズは長時間の造影効果を示し、肝細胞への集積を示し、胆汁排泄を示唆する結果を得た。蛍光ナノ粒子のシリカコーティングに成功し、ラット鼠径リンパ節検出実験では色素法に比べ高い検出率と造影効果の長時間持続が認められた。シリカコーティングは蛍光色素保護とサイズ調整に有用である。
2.抗HER2抗体結合量子ドットの腫瘍細胞の取り込みをリアルタイムに観察することに成功した。また血管近傍の腫瘍細胞のPAR1は血管から遠方の細胞に比べ10-300倍速い拡散性を持つことが分かった。
3. 電子走査方式の研究では、液体散乱媒質中に蛍光体を挿入し、計測した結果、3cmの深さの蛍光体を確認できた。深部蛍光色素検出の成功は蛍光計測の生体応用に向けて大きな前進である。
4.ブタ胃鏡視下センチネルリンパ節検出実験では色素法に比べ高い検出感度を示すことがわかった。内視鏡は拡大観察可能であり病巣の蛍光ラベルによる蛍光計測と組み合わせることで精密な外科手術に有用と思われる。
結論
本研究で1粒子蛍光計測技術、シリカコーティング技術等、ナノ医療を推進する基盤作りを進めることができた。今後、がんの転移メカニズムの解明や薬物動態解明など幅広い研究への展開が期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200812001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
量子ドット-トラスツズマブ結合物がHER2タンパク発現腫瘍において血管から細胞内に到達する様子を世界で初めて観察した。また転移がん細胞に発現するPAR1タンパクに対する抗PAR1抗体を作成、量子ドットとの結合物でがん細胞をラベルし、生体内の挙動観察に成功した。生体内で1分子の挙動を高精度計測できた意義は大きく、1分子計測技術はDDSの新しい評価法として新薬開発に大きく寄与すると思われる。また抗PAR1抗体はがんの転移の挙動観察のみならず、新たな分子標的治療薬としての利用が期待される。
臨床的観点からの成果
本研究は動物モデルによる基礎的研究が主体であるが、1分子計測技術と抗PAR1抗体、蛍光センチネルリンパ節生検法が近い将来臨床応用に有望と考えられる。すなわち1分子計測技術はDDS 評価において唯一分子を1個レベルで直接生体内観察し得る手法として利用され得る。抗PAR1抗体はMMP1の阻害作用も持つため、新しい転移防止分子標的治療薬としての利用が期待される。また蛍光センチネルリンパ節生検法は内視鏡と組み合わせ、大型動物での検出に成功し、リンパ経路の複雑な消化器がん手術に応用可能である。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
2007年2月5日 NIKKEI NET:東北大、腫瘍に抗がん剤が到達する様子をナノメーターレベルで観察
2007年2月6日 読売新聞:抗がん剤 細胞内異動の様子とらえた
2007年2月8日 河北新報:分子レベルで抗がん剤動き把握
2007年2月9日 日経産業新聞:東北大 抗がん剤の異動追跡、蛍光微粒子使い動画撮影
2007年2月16日 科学新聞:東北大 抗がん剤の到達過程 ナノレベルでの観察に成功
2008年12月12日 財団法人医療機器センター:低侵襲医療機器に関する取材

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
30件
学会発表(国内学会)
59件
2007、2008年ナノ学会において若手優秀発表賞をそれぞれ1件受賞
学会発表(国際学会等)
49件
9th International Symposium of Tohoku University GCOEにてPoster Presentation Awardを1件受賞
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tada H, Higuchi H, Ohuchi N et al.
In vivo real-time tracking of single quantum dots conjugated with monoclonal anti-HER2 antibody in tumors of mice.
Cancer Res , 67 (3) , 1138-1144  (2007)
原著論文2
Takeda M, Tada H, Ohuchi N et al.
In vivo single molecular imaging and sentinel node navigation by nanotechnology for molecular targeting drug-delivery systems and tailor-made medicine.
Breast Cancer , 15 (2) , 145-152  (2008)
原著論文3
Suvitha A, Kawaoe Y, Ohuchi N et al.
TD-DFT studies on hematoporphyrin and its dimers.
Materials Transactions , 49 (11) , 2416-2419  (2008)
原著論文4
Park YS, Kasuya A, Ohuchi N et al.
Aqueous-phase synthesis of ultra-stable small CdSe nanoparticles.
J Nanosci Nanotech , 7 , 3750-3753  (2007)
原著論文5
Kobayashi Y, Takeda M, Ohuchi N et al.
Preparation of amine free silica coated AgI nanoparticles with modified Stöber method.
Surfaces Engineering , 24 (4) , 248-252  (2007)
原著論文6
Kobayashi Y, Takeda M, Ohuchi N et al.
Control of Shell Thickness in Silica-Coating of AgI Nanoparticles.
Advanced Materials Research , 29 , 191-194  (2007)
原著論文7
Zhou X, Ohuchi N, Kasuya A et al.
Photoluminescence of CdSe and CdSe/CdO•nH2O Core/Shell Nanoparticles Prepared in Aqueous Solution.
Optical Materials , 29 , 1048-1054  (2007)
原著論文8
Li-Shishido S, Watanabe TM, Ohuchi N et al.
Reduction in nonfluorescence state of quantum dots on an immunofluorescence staining.
Biochem Biophy Res Commun , 351 (1) , 7-13  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-