輸出先国のリスク管理に対応した残留農薬データ等の補完に関する研究

文献情報

文献番号
202024036A
報告書区分
総括
研究課題名
輸出先国のリスク管理に対応した残留農薬データ等の補完に関する研究
課題番号
20KA2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 友紀子(農林水産省大臣官房)
  • 荒川 史博(日本ハム株式会社 中央研究所 品質科学センター)
  • 加藤 拓(東京農業大学 応用生物科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,296,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際標準の農薬最大残留基準値(MRL)の国内設定やインポートトレランス申請に必須であるが、これまでには要求等されていなかった事項について検討し、現在の政府方針である農産品等の輸出促進に貢献することを目的とする。具体的には、(1)消費並びに輸出産品としての可能性から重要であるが検討されていない加工農産品の加工係数の導出、(2)世界で広く利用されている農薬残留物分析法(QuEChERS法)の厳密な性能評価、(3)MRL設定また経口暴露評価の基礎となる残留物の定義に関するガイドライン策定を検討する国際会議への参加、(4)わが国の作物残留試験データの不足を補いインポートトレランス申請にも利用可能なデータセットの特定ついて検討する。
研究方法
①インカード試料の作成:農薬を投与した結果としての残留物を含む試料(インカード試料)を作成するために、稲とエトフェンプロックス並びにジノテフランの組合せについて検討した。約17aの水田を試験圃場として使用し、稲を栽培した。
②QuEChERS法の性能評価:QuEChERS法の性能を、インカード試料の計画的な分析を通じて厳密に評価した。評価では、公示分析法を基礎として構築した一斉分析法により得られたエトフェンプロックス並びにジノテフランの分析値を指標とした。
③加工試験:インカード試料(糠及び白米)を原料とし、プラントレベルでのコメ油製造と家庭での米飯調理について検討した。コメ油は製造工程ごとの試料を得て、農薬残留物濃度への加工工程への影響を詳細に検討した。
④残留物の定義に関する国際的な検討:OECD に設置されたDrafting group on Definition of Residue(Drafting group)によるガイドライン策定の議論に参加した。
⑤MRL設定等に利用可能なデータセット:検証すべき農薬と食品との組合せについて、健康危害リスク、出荷量、JMPRによる評価実施状況、消費量等を考慮し検討した。
結果と考察
①インカード試料の作成:草丈及び茎数、また玄米収量等の比較から農薬投与による生育等への影響は観察されず、適正な農業の結果としてインカード試料を作成することができた。作成したインカード試料における農薬残留物濃度を定量した結果、エトフェンプロックス濃度は籾殻>稲わら>玄米の順に高い値を示した。農薬散布が出穂後に行われていること等を鑑みると妥当な結果と考えられた。α-CO並びにジノテフランも同様の傾向を示した。
②QuEChERS法の性能評価:玄米インカード試料から得られたエトフェンプロックスの分析値は、基本分析法を用いた場合には0.187 mg/kg~0.201 mg/kgであり平均値は0.19 mg/kg 、QuEChERS法を用いた場合には0.161 mg/kg~0.170 mg/kgであり平均値は0.16 mg/kgであった。この分析値についてunparid t-testを用いた検定を行った結果、有意差が認められ、QuEChERS法により得られる分析値が一定の割合で低値になる確率が高いことが示唆された。
③加工試験:コメ油及びその中間産物からエトフェンプロックスが検出されたため、マスバランスを確認し加工係数を導出した。エトフェンプロックス加工係数は、米原油において53.9、脱色油において43.1、脱臭油において14.6であった。
④残留物の定義に関する国際的な検討:約5週間おきに開催されたウェブ会議に参加し意見を述べた。残留物の定義に入れるかどうかを決定するためのDecision treeとその説明文の策定が、本年度研究期間中に開催された会議における議論ポイントの1つであった。
⑤利用可能なデータセット:対象とすべき農薬と食品の特定を試みた結果、glyphosate、 mancozeb、sodium bentazone等の農薬が規準に適合することが明らかとなった。今後わが国のGAPを記述するとともにJMPRに提出された作物残留試験データとの比較を行う。
結論
分析可能な濃度の残留物を含む各種インカード試料を作成することができた。作成されたインカード試料を用いてQuEChERS法の性能を厳密に評価した結果、分析対象化合物によっては、公示分析法とは異なる分析値が得られる可能性が示された。コメ油加工試験の結果、エトフェンプロックス濃度の減少に有効なのは脱臭操作であることや最終製品となる脱臭油の加工係数が10を超えることなどが明らかとなった。Drafting groupへの参画を続け、わが国においても世界標準の残留物の定義を決定できるようにすることが重要である。海外で実施された作物残留試験により取得されたデータセットの利用可能性について引き続き検証を続けることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,985,000円
(2)補助金確定額
11,985,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,781,116円
人件費・謝金 1,884,156円
旅費 114,608円
その他 6,516,120円
間接経費 689,000円
合計 11,985,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
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