創薬基盤型バイオイメージングに向けたヒトがん細胞株のSCID マウス体内動態と細胞傷害感受性のカタログ化

文献情報

文献番号
200811021A
報告書区分
総括
研究課題名
創薬基盤型バイオイメージングに向けたヒトがん細胞株のSCID マウス体内動態と細胞傷害感受性のカタログ化
課題番号
H20-生物資源・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
村上 孝(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 英司(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,124,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発生起源によって異なる特性を有するヒトがん細胞において、新規化合物のin vitro 評価からヒトがん細胞の体内動態を模倣するモデル系は、がん創薬研究の重要な部分である。本研究では、簡便かつ高感度なルミネッセンス発光によるバイオイメージング創薬基盤の充実を目的に、1)ルシフェラーゼを発現するヒトがん細胞株を作成しながら免疫不全マウス体内におけるがん細胞転移動態情報を付加していく。さらに、2)既存の化合物への感受性をプロファイル化し、ヒトがん細胞に対する先端的医薬品開発の促進•支援に貢献することを目的としている。
研究方法
乳癌などの細胞株を細胞バンク等から汎用性の高いものを入手し、pMSCV-luc発現ベクターをトランスフェクションし、ルシフェラーゼ(Photinus pyralis)を安定発現するヒトがん細胞株を作成した。超音波解析装置のガイド下にNOD/SCIDマウスの左心室腔内へ樹立したルシフェラーゼ発現がん細胞株を移植し、全身散布による主要臓器(肝臓、肺、脳など)への血行性転移について発光イメージング解析を行った。作製された細胞について、文科省がん特定領域研究(化学療法基盤情報支援班)より分与された「標準阻害薬キット」(約300種類)を用いて阻害試験を実施した。
結果と考察
平成20年度ではヒトがん細胞株36種類についてルシフェラーゼヒトがん細胞株の樹立を試み、試験管内での評価が可能な細胞株を24種類作製した。SCIDマウス及びNOD/SCIDマウスは外科学的身襲に耐性であり、ヒトがん細胞を標的とした創薬開発試験ではin vitro から動物実験まで共通した評価系として利用可能であった。作製されたがん細胞において、転移能をもつ細胞では、がんの種類に依存した「臓器選択的な転移」が観察された。しかし、実質的なルシフェラーゼ発光に至らない細胞株が存在したため、導入細胞の性質や発現ベクター等を含めた検討が必要である。試験管内におけるルシフェラーゼ発光を基盤としたアッセイ系の簡便性から鋭敏なHigh Throughput Screening系として利用可能であり、がん種に依存した分子標的阻害の特徴付けが可能であった。
結論
本研究による細胞カタログは、「in vitro」から「in vivo」に統一されたがん細胞資源であり、創薬促進の観点から極めて「有効かつ高度化された情報」を提供するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-