文献情報
文献番号
200811020A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器特異的ストレス応答探索マウスを用いた疾病予防法の開発
課題番号
H20-生物資源・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐野 元昭(慶應義塾大学医学部再生医学)
研究分担者(所属機関)
- 太田 成男(日本医科大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アルデヒドは電子親和性が強く蛋白質やDNA と付加体を形成し細胞障害性に作用するため、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性心血管疾患、がん、アルツハイマー病などの認知症や老化などの酸化ストレス関連性疾患の成因と密接に関わっている。我々は、親電子性物質であるアルデヒドの代謝障害モデル動物aldehyde dehydrogenase (ALDH)2*2トランスジェニックマウスを作製し、心臓において、心筋梗塞の病態形成に深く関与する虚血・再灌流障害に対する抵抗力を賦与する潜在的ストレス応答機構の解明に成功した。
本研究では、これまでの研究成果を発展させて、がん、動脈硬化、神経変性疾患の新規治療法の開発に直結する細胞、臓器特異的なストレス応答機転の解明をめざす。
(Ⅰ)肝臓での薬物代謝酵素誘導の分子メカニズム解明と化学発癌に対する抵抗性の検討
(Ⅱ)神経細胞における酸化ストレス適応機転の解明とその破綻の分子メカニズムの解明
(Ⅲ)血管におけるアルデヒドに対するストレス応答機構の解明と動脈硬化惹起性メタボリックストレスに対する忍容性の検討
本研究では、これまでの研究成果を発展させて、がん、動脈硬化、神経変性疾患の新規治療法の開発に直結する細胞、臓器特異的なストレス応答機転の解明をめざす。
(Ⅰ)肝臓での薬物代謝酵素誘導の分子メカニズム解明と化学発癌に対する抵抗性の検討
(Ⅱ)神経細胞における酸化ストレス適応機転の解明とその破綻の分子メカニズムの解明
(Ⅲ)血管におけるアルデヒドに対するストレス応答機構の解明と動脈硬化惹起性メタボリックストレスに対する忍容性の検討
研究方法
平成20年度:全身組織(特に筋肉系)へのアルデヒド蓄積したALDH2*2 TGマウスの肝臓でのストレス応答ホルメシス機構をトランスクリプトーム解析・メタボローム解析によって検討し、さらにその背景にある分子メカニズムの解明をめざす。
1. ALDH2*2 TGマウスの肝臓における遺伝子発現と代謝産物の変化の網羅的解析
2. アルデヒドに対するストレス応答としての代謝経路の変化の背景にある分子機序の解明
1. ALDH2*2 TGマウスの肝臓における遺伝子発現と代謝産物の変化の網羅的解析
2. アルデヒドに対するストレス応答としての代謝経路の変化の背景にある分子機序の解明
結果と考察
包括的比較トランスクリプトーム解析の結果、ALDH2*2 TGマウスの肝臓では、薬物代謝の第I相、第Ⅱ相反応、異物を肝臓内に取り込むトランスポーター(ATP-binding cassettes)が誘導されていた。メタボローム解析ではglucose からglucose-6-P → glucose-1-P →→ UDP-glucuronate にいたる代謝流速の増加が観察された。その分子基盤としてNrf2 経路の活性化が考えられた。
結論
ALDH2*2 TGマウスの肝臓ではシトクロムp450系の誘導とグルコロン酸抱合反応の活性化を中心とした外来異物に対する第Ⅰ相、第Ⅱ相の薬物代謝機構の強い誘導が観察された。現在、アセトアミノフェン誘発性肝障害に対する抵抗性を検討中である。薬物代謝機構は化学発癌に深く関与しており、今後、前癌原物質に対する感受性の検討をおこない発癌予防の分子基盤を解明していく。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-