食中毒原因ウイルスの不活化および高感度検出法に関する研究

文献情報

文献番号
202024030A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因ウイルスの不活化および高感度検出法に関する研究
課題番号
19KA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 亮介(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第五室)
研究分担者(所属機関)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 片山 浩之(東京大学大学院工学系研究科)
  • 佐々木 潤(藤田医科大学 医学部)
  • 藤井 克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第一室)
  • 村上 耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
19,956,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食中毒の原因と疑われる食材からのウイルス検出は、汚染ウイルス量が少ない事や、食品に含まれる夾雑物が検出を妨げる事などから困難であり、原因食品や汚染経路の特定に至らず、効果的な対策を取る為の知見も不足している。本研究では、各食中毒の原因ウイルスを迅速・確実に検出するために、食材やその洗浄水からのウイルス濃縮/精製法および高感度検出法を開発する。
研究方法
(1)原因として疑われた食材からHEVの濃縮操作を行い、遺伝子検出を試みた。イノシシ血清のHEV IgGおよびHEVゲノムを測定した。
(2) アイチウイルスのリアルタイムRT-PCR法、RT-LAMP法について検出感度を検討した。
(3)ロタウイルスのリアルタイムPCR法について、2種類のプライマー・プローブセットについて比較検証を行なった。
(4)ノロウイルスの不活化条件を検討するため、モデル食品として、微細量のノロウイルスをスパイクした汚染シジミの透明化条件を検討した。
(5) タンパクが豊富な液体からのウイルス濃縮条件の基礎的検討を行った。
(6)食品・食材やふき取り検体について、地衛研で行われている前処理および濃縮・精製法について現状調査、要望等について情報を収集した。
結果と考察
(1)原因食材と疑われる肉からHEV核酸は検出されなかった。イノシシ血清のHEV IgGは、26%が陽性であったが、HEVゲノムは検出されなかった。
(2)アイチウイルスのリアルタイムRT-PCR法について、1-step法の検出感度の検討を行い、101コピーのRNAを検出した。試料水からのウイルス回収については、高濃度の場合は15~20%以上の回収率であった。RT-LAMP法の検討については、103コピーのウイルスRNAから、目視で増幅を確認した。
(3)ロタウイルスRNAの抽出法を比較したところ、ZYMO Researchのキットでは、QIAGENのキットで抽出した場合より10-1000倍程度高く検出される例が見られた。またDNaseの使用により、検出効率が1/10から1/100程度に低下した。
(4)ノロウイルスを添加したシジミの懸濁液上清を腸管オルガノイドに接種したところ、24時間後のウイルス量が増加した。シジミにおける存在部位の視覚的解析のため、中腸腺の透明化を検討し、希釈天然海水中で5日間無給餌飼育したシジミでは透明化処理の改善が見られた。
(5)野菜表面のウイルス検出におけるウイルスの濃縮手法の検討の結果、FeCl3を添加した条件では、多量の沈殿ができ、ペレット形成を促すことが確認できた。野菜表面のウイルス検出におけるウイルスの濃縮条件として、FeCl3を添加しない場合、Φ6においてはペレットの形成と回収率はある程度の整合性があることが示された。
(6)ノロウイルス以外の食中毒原因ウイルスについての検査マニュアルの整備、陽性コントロールの配布、食品からのウイルス検出法の改良、各種検査についての研修、食中毒事例の対応についての情報交換などの要望があげられた。
結論
(1)原因食材と疑われるイノシシ肉からHEVの検出を試みたが、検出には至らなかった。イノシシ86頭の血清からHEV遺伝子は検出されなかった。A型肝炎ウイルスの濃縮が可能な抗血清を得るためにウサギを免疫し、感染中和活性を持つ血清を得た。
(2)アイチウイルスのリアルタイムRT-PCR法に関して、感度、簡便さの点から1-step法が良いと考える。試料水からのPEG沈殿法により、5~20%程度の回収率でウイルス濃縮できた。RT-LAMP法では103コピーのウイルスRNAを検出した。
(3)Freemanらが設計したロタウイルス検出用のプライマー・プローブセットは幅広い流行株を高感度で検出可能であった。便検体では非特異反応が見られることがあるが、102コピー以上を閾値として陽性判定すれば、偽陽性となる懸念は無いと考えられる。
(4)シジミ懸濁液中のGII.4ノロウイルスが腸管オルガノイドに感染することが示された。またGII.4ノロウイルスを含むシジミ懸濁液を90℃で5分間加熱すると感染性が失われた。
(5)ウイルスの誘出法において、酸沈殿法の手法の最適化を行った結果、3%極東肉エキスを誘出液として実験を行うことが最適であると判断した。
(6)地衛研は所属自治体の食中毒原因ウイルス検査において中核的な役割を担っており、各種ウイルスの食品等への汚染経路、感染パターンの解明がすすめば、今後の予防対策に貢献できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
2023-08-01

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,337,000円
(2)補助金確定額
21,337,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,292,941円
人件費・謝金 3,296,064円
旅費 0円
その他 1,366,995円
間接経費 1,381,000円
合計 21,337,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
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