文献情報
文献番号
200811019A
報告書区分
総括
研究課題名
複数のガン防御機構を標的として遅発型ガン発症マウスライブラリーの作成とガン予防戦略確立への応用
課題番号
H20-生物資源・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中西 真(名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,739,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒト臨床ガンに見られるこれらガン抑制遺伝子の変異は、ガン発症の原因ではなく、むしろガン悪性化の原因か、あるいはガン進展の結果であると考えられている。臨床ガンにおいてはチェックポイント、アポトーシス、細胞老化等の複数のガン防御機構に機能不全が蓄積することが初発原因と考えられている。これらを踏まえて、本研究ではガン防御機構を制御するシステムの二重、三重変異マウスを作製し、遅発型臨床ガン発症マウスライブラリーを確立して、ガン予防戦略確立に有益であることを明らかにする。
研究方法
野生型マウス、Chk1+/-, Chk2-/-, Chk1+/-Chk2+/-, Chk1+/-Chk2-/-マウスにおける自然発ガン発症率を解析した。プライマリー胎児繊維芽細胞を用いて、DNA損傷に反応したG1/S期、およびG2/M期細胞周期停止機能を解析した。同時にDNA損傷に反応したDNA合成抑制についても明らかにした。また、DNA損傷修復能、アポトーシス誘導能、癌遺伝子誘導早期老化、高複製刺激誘導細胞老化、DNA損傷誘導早期細胞老化能についても解析した。
結果と考察
Chk1およびChk2単独の変異マウスは野生型と比較して高発ガン性を全く示さないが、Chk1/Chk2二重変異マウスは野生型マウスに比較して、高率に遅発性のガンを発症した。ガンの組織学的解析から、多くは悪性リンパ腫であったが、肺ガン、あるいは軟部組織腫瘍等も見られ、マウス自然発ガンに見られる発ガン組織型とほぼ同じであった。Chk1へテロ欠失変異は、細胞周期チェックポイント異常、とりわけDNA損傷に反応したG2/M期停止の部分異常を示した。一方、Chk2の完全欠失はDNA損傷に反応したアポトーシス誘導不全をきたすことが明らかとなった。Chk2完全欠失はDNA損傷修復異常も示した。DNA損傷に反応したG1/S期停止には、Chk1およびChk2の両方が協調的に機能していることが分かった。しかしながら、発ガン防御に重要な役割を果たしているDNA損傷に反応した早期細胞老化誘導はChk1+/-Chk2-/-マウスの胎児繊維芽細胞で維持されていた。以上のことから、Chk1+/-Chk2-/-はヒト型遅発型ガン発症モデル動物として適していると考えられる。
結論
Chk1+/-Chk2-/-およびChk1+/-Chk2+/-二重変異マウスは、DNA損傷に反応した一過性細胞周期停止、およびアポトーシス誘導に重複した部分不全を持つマウスであり、ヒトに見られるガン発症と同様に遅発性にガンを発症した。これらのガンはマウスで通常見られるガンと同様の組織・臓器特異性を示した。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-