日本国内流通食品に検出される新興カビ毒の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
202024027A
報告書区分
総括
研究課題名
日本国内流通食品に検出される新興カビ毒の安全性確保に関する研究
課題番号
19KA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第四室)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 良子(東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学大学院 農学研究院動物生命科学部門)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カビ毒はカビが感染した農作物中に生産され、カビ毒に汚染された食品により、急性的な中毒症状や慢性的な摂取によるガンの発症などが引き起こされている。これまで厚生労働科学研究において、2001年より様々なカビ毒について日本に流通する食品における汚染実態や毒性に関する研究を行い、カビ毒に汚染された食品の摂取の低減を目的とした施策策定の科学的根拠となるデータを取得し、食の安全性確保に貢献してきた。本研究事業では、3種のタイプAトリコテセン系カビ毒、ステリグマトシスチン(STC)、エンニアチン類(ENs)及びビューベリシン(BEA)を研究対象とした。
研究方法
カビ毒の汚染実態については、昨年度多機関共同試験によって妥当性を評価したLC-MSMSを用いた分析法を用い、国内に流通する食品を対象に行った。毒性試験については、エンニアチンBを0、7.5、15、30 mg/kg 体重の投与量でそれぞれ6週齢ICR〔Crl:CD1 (ICR)〕マウス(雌雄各10匹/群)に28日間反復経口投与した。投与期間中は一般状態の観察及び体重、摂餌量の測定を実施した。投与期間終了後、剖検時に血液を採取し、血液学検査と血液生化学検査を実施した。簡易測定法の開発については、3種の市販の4,15-ジアセトキシスシルペノール(4,15-DAS)を測定可能なELISAキットについて、それぞれのキットに添付されている標準品の濃度を参考に、その1000倍濃度までの溶液を実験に用い、検出能を調べた。ハト麦におけるカビ毒複合汚染のリスク解明については、検体から複合汚染の原因菌を分離し、培養後、発育したコロニーを目視によって観察し、観察されたFusarium 属とAspergillus 属を得た。それぞれのカビのカビ毒生産能を評価した。

結果と考察
汚染実態調査では、タイプAトリコテセン系化合物については、6食品目計146検体の調査を行い、ハト麦加工品ときな粉において3種の化合物の同時汚染が認められた。BEAとENsについては、9食品目167検体の調査を行った。BEAの汚染レベルが高かったのはきな粉、ゴマ及びハト麦加工品でENsの汚染レベルが高かったのはライ麦粉と小麦粉(国産)であった。STCについては、7食品目164検体の調査を行った。玄米の汚染レベルが最も高く、小麦加工品からもSTCが検出された。毒性試験では、エンニアチンB(ENB)のマウスを用いた28日間反復経口投与毒性試験を実施した。最高用量を30 mg/kg、公比2、溶媒対照群を含む4用量群を設定し、一般状態観察、体重、摂餌量測定、投与期間終了後の血液・血液化学検査、剖検、病理組織学検査を実施した結果、無毒性量は30 mg/kgとなった。簡易分析法の開発では、市販のT-2トキシンELISA kitに使われている抗体が4,15-DASも認識するか否かを市販T-2トキシンELISA3種で検討を行った結果、いずれも交差性を示さなかった。複合汚染のリスク解明については、カビ毒汚染レベルの高いハト麦からその原因菌の探索を行った結果、輸入ハト麦においてはアフラトキシン、STCおよび4,15-DAS汚染リスクが高く、国内産ハトムギはフザリウム属真菌が産生するトリコテセン類の複合汚染リスクが高いことが示唆された。
結論
カビ毒汚染調査については、今年度は、昨年度の結果から汚染レベルが高いと推定される食品やヨーロッパで高レベルの汚染が報告されていた食品を対象に調査を行った。ヨーロッパで汚染が報告された食品からは必ずしもカビ毒は検出されなかった。次年度は、ばく露量推定を行うことを踏まえ、日本人における摂取量が多い食品を中心に調査を行う。ENBの毒性評価については、明確な毒性は確認できなかった。ENBはブロイラーでの経口投与後の吸収性が低いことが文献的に示唆されており、マウス28日間毒性試験での明らかな毒性が検出されない理由と考えられた。ENsは肝臓のシトクローム P450を介して代謝される。そこで次年度は、マウスにおけるENBの薬物動態試験を実施する。簡易測定系の確立については、市販のT-2トキシンELISA kit3種類は4,15-DASには交差性を示さなかった。次年度は国外で販売されているT-2トキシンおよびHT-2トキシンを認識するELISA kitの検討と、STCの高感度ELISA系の確立を行う。ハト麦におけるカビ毒複合汚染のリスクについては、輸入品の検体からアフラトキシン生産能を有するAspergillus 属菌とトリコテセン系カビ毒生産能を有するFusarium属菌が検出され、これらのカビによる感染がカビ毒の複合汚染の原因であることが明らかになった。次年度は、カビ毒の複合汚染が頻繁にみられるライ麦を対象とした試験を行う。

公開日・更新日

公開日
2021-10-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,154,000円
(2)補助金確定額
11,154,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,484,827円
人件費・謝金 1,320,767円
旅費 85,247円
その他 3,263,159円
間接経費 0円
合計 11,154,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
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