食品や環境からの農薬等の摂取量の推計と国際標準を導入するための研究

文献情報

文献番号
202024023A
報告書区分
総括
研究課題名
食品や環境からの農薬等の摂取量の推計と国際標準を導入するための研究
課題番号
19KA1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第一室)
  • 大河内 博(早稲田大学 創造理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
10,901,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省では食品を介した残留農薬等の暴露量を推定し、ADIの80%を超えないよう食品中残留農薬等の基準値を設定している。しかし、食品以外の暴露経路も懸念され、例えば、家庭用殺虫剤を使用することで経気暴露の可能性がある。食品を介した農薬等の暴露推定のみを根拠とした食品中残留農薬の基準値設定は、食品以外の暴露量に不確定な要素があるため、精密なリスク管理には食品以外の経路も含めた総合的評価が必要である。
また、国内の残留農薬等の検査における検査部位は『食品、添加物等の規格基準』に規定されているが、一部の食品はCODEX基準と一致していない。検査部位の不一致は輸出入の際に係争の原因となるため、国際的な整合性を図る必要がある。CODEX基準の検査部位を採用した場合、現行法とは試料マトリックス等が異なるため、試験操作や分析結果に影響を及ぼす可能性がある。そのため、影響の有無や程度を明らかにするとともに対処法について提案する必要性がある。
研究方法
日常食からの残留農薬摂取量を推定するため、日常食のモデルとしてマーケットバスケット方式によるトータルダイエット試料を5地域で調製した。14の食品群中に含まれる農薬濃度をLC-MS/MSおよびGC-MS/MSで測定した。大気中農薬濃度は都市部と地方においてサンプリングを行い評価を行った。また、不検出値認められた場合の解析方法として、最尤推定(MLE)とベイズ推定(BE)による推定を試みた。
検査部位の変更が残留農薬等の検査及び分析結果に及ぼす影響と対処法の検討には、検査部位が変更される食品のうち、みかん、びわ及びすいかを選択した。共通して基準値が設定されている農薬等のうち、「LC/MSによる農薬等の一斉試験法Ⅰ(農産物)」の別表1に記載された39化合物を選択し、添加回収試験を行った。
結果と考察
食品由来の摂取量は、調査した全ての農薬において、対ADI比は1%未満であった。対ADI比が比較的高かったのは、クロルデン (0.80%), ヘプタクロル (0.52%), メタミドホス (0.35%), クロルピリホス (0.32%) であった。
大気中農薬に関しては、都市部ではフェニトロチオンとアセフェートが検出されたが、地方では検出されなかった。検出できたフェニトロチオン (濃度範囲: 2.21–36.4 ng/m3) およびアセフェート (濃度範囲: 0.160–0.846 ng/m3) 濃度と、日本人の平均呼吸率 (17.3 m3/day) を用いて、吸入曝露量を評価したところ、いずれも対ADI比は1%以下であった。また、食品からの農薬摂取量と比較すると、吸入曝露の寄与は、フェニトロチオン: 16.4–76.4%、アセフェート: 1.1–5.3%であった。
不検出例を含む解析法として、従来使用されていたLOQの1/5を代入する方法 (RL/5)とMLE・BE法を比較した。MLE法が不得意な歪みが大きいあるいは下限値が0となるデータの割合が多いデータにおいて、BE法とMLE法の推定値の差異が大きくなる傾向が認められた。この結果は、BE法による推定結果の方がMLE法による推定結果よりも妥当である可能性が示唆された。
びわ及びすいかについては、検査部位の変更に伴う回収率の変化の程度は小さく、検査部位の変更が分析結果に及ぼす影響は小さいことが推察された。一方、みかんについては、検査部位の変更に伴いイプロジオン、トリアジメノール、トリアジメホン、ブタフェナシル及びメトキシフェノジドにおいて回収率が大幅に低下したことから、実際の検査において誤判定の結果を生じる可能性が高くなることが予想された。
結論
残留農薬の食事性曝露量および吸入曝露量ともにADIの1%未満であった。しかしながら、吸入曝露の寄与率は20%を超えるケースもあることが示されたため、詳細な検討が必要である。不検出例を含むデータの解析法として、BE法の有用性が示された。びわ及びすいかについては、検査部位の変更が分析結果に及ぼす影響は小さいことが推察された。一方、みかんについては一部の農薬について回収率の低下が認められ、実際の検査において誤判定となる可能性が示唆された。このような場合の対処法としては、測定装置の感度に応じて試験溶液を希釈することが有用である可能性があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,901,000円
(2)補助金確定額
10,901,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,471,047円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 429,953円
間接経費 0円
合計 10,901,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
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