食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究

文献情報

文献番号
202024022A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究
課題番号
19KA2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 岡 明(埼玉県立小児医療センター)
  • 畝山智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
33,128,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中には、ダイオキシン類(DXNs)、有害元素、PCB類や副生成物などの有害物質が含まれている。食品中の有害物質の基準値設定の検討を行うためには、汚染量実態・摂取量実態の把握が重要である。国際規格設定には我が国の汚染実態データは必須となっている。またDXNs対策特別措置法においても、食品の基準値設定によるリスク管理でなく、摂取量調査によるリスク管理を行うことが方針となっており、継続した摂取量調査が求められている。本研究ではトータルダイエット試料の分析により濃度を明らかにし、食事を介した有害物質の摂取量を推定することを目的とする。一部の有害物質の摂取量に関しては継続的に推定し、摂取量の経年的推移を明らかにする。また乳児におけるDXNs対策の検証や乳幼児への影響を調べるために、人体汚染の指標として母乳中のDXNs濃度を分析し、その経年的な変化を調査する。さらに母乳からのDXNs等が乳幼児の発育発達に与える影響を検討する。
研究方法
トータルダイエット試料を用いて、DXNs(PCDD/PCDFs及びCo-PCBs)、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)、の国民平均一日摂取量を推定した。またヒ素 (総ヒ素および無機ヒ素(iAs)を含むヒ素化学種),カドミウム,水銀 (総水銀及びメチル水銀 (Me-Hg)),鉛を含む33元素および5化学種の全国・全年齢層における平均摂取量 (推定1日摂取量) を推定した。国内で市販されている一食分試料(弁当類)からのポリ塩化ビフェニル(PCBs)及び摂取量の調査を行った。
結果と考察
体重(50 kgと仮定)あたりのダイオキシン類の全国平均摂取量は0.40(範囲:0.11~0.91)pg TEQ/kg bw/dayと推定された。ポリ塩化ビフェニル(PCBs)の国民平均一日摂取量推定では、体重(50 kgと仮定)あたりでは6.4 ng/kg bw/dayと推定され、この値は日本の暫定耐容一日摂取量(TDI)の0.1%であった。主要な元素類の推定全国摂取量はカドミウム:17.7 μg/man/day、鉛:12.2 μg/man/day、スズ: 408 μg/man/day、クロム:25.6 μg/man/day等と推定された。総ヒ素と無機ヒ素の全国摂取量は、それぞれ291 μg/man/day、19.6 μg/man/dayと推定された。総水銀とメチル水銀の全国摂取量は、それぞれ6.05 μg/man/day、4.29 μg/man/dayと推定された。弁当一食あたりの総PCBs摂取量は、平均値が931 ng/食、中央値が343 ng/食、範囲が37~9,320 ng/食であった。自動前処理装置を用いてスズキとボラを分析し、従来法(オープンカラム精製)とダイオキシン類の各異性体濃度を比較した。自動前処理装置の各異性体濃度の平均値は、従来法に対してスズキで90~107%、ボラで97~111%であり良く一致していた。さらに、種々の魚試料(5種)を用いて自動前処理装置と従来法における異性体濃度の比較を行った。自動前処理装置の異性体濃度は、殆どの異性体について従来法の±20%以内となった。また、これらの魚試料の毒性当量濃度についても比較した結果、自動前処理装置の各魚試料の毒性当量濃度は従来法に対して98~105%であった。、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いた国内市販の飲料食品についてモニタリング調査した結果、いずれも厚生労働省の示す水質管理目標設定項目のPFOS及びPFOA合算値50 ng/L(暫定目標)よりも低いことが予想された。初産婦の出産後1か月の母乳中のダイオキシン濃度を測定した母乳中のダイオキシン濃度(PCDDs+PCDFs+Co-PCBsの合計)は、WHO2006年の毒性等価係数を用いた毒性等価量の計算では平均±標準偏差7.11±2.53pg-TEQ/g-fatであった。
結論
ダイオキシン類の摂取量調査を実施した結果、平均一日摂取量は0.40 pg TEQ/kg bw/dayであった。ダイオキシン摂取量は行政施策の効果などもあり経年的な減少傾向が示唆されている。今後もダイオキシン摂取量調査を継続し、ダイオキシン類摂取量の動向を見守る必要があると考えられる。PCBsの摂取量調査を実施した結果、一日摂取量は6.4 ng/kg bw/dayと推定され、この値は日本の暫定TDIの僅か0.1%であった。自動前処理装置を用いたGC-MS/MSによるダイオキシン類の分析法は種々の魚試料に適用した結果、従来法と同等の結果になった。母乳中のダイオキシン類濃度は、調査開始時からの長期間の漸減傾向の後、平成25年以降は同レベルで推移しており、定常的なレベルに達していることが考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-10-19
更新日
2022-04-12

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-10-19
更新日
2022-03-18

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202024022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
34,528,000円
(2)補助金確定額
34,528,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 24,347,793円
人件費・謝金 546,000円
旅費 0円
その他 8,234,432円
間接経費 1,400,000円
合計 34,528,225円

備考

備考
消耗品を購入するための研究費が225円不足したため、収入の「(2)補助金確定額」より支出の「合計」の方が多い。不足分は自己資金がら支出した。

公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
-