小規模な食品事業者における食品防御の推進のための研究

文献情報

文献番号
202024016A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模な食品事業者における食品防御の推進のための研究
課題番号
H30-食品-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 安全政策推進部)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 加藤 礼識(別府大学 食物栄養科学部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 経営学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
17,775,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年食品への意図的な毒物混入事件が頻発したことも相まって、特に大規模食品事業者(食品工場等)では食品防御への対応が進んできた。一方、サプライチェーンの大部分を占める小規模食品事業者(飲食店を含む)では、参考となる食品防御ガイドラインが存在せず、十分な対応が行われているとは言えない。本研究では既存研究を発展させ、大規模食品事業者だけではなく、飲食店を含む小規模食品事業者においても、食品への意図的な毒物混入を防御するための方策の検討を目的とする。
研究方法
今年度は、以下に示す9項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、学術論文・書籍等既存の公表情報の収集整理と、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。
中小規模の事業所2箇所、また比較の参考として、大規模事業所2箇所についてオンライン/オンサイト訪問を行い、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理し、これまでの研究成果で策定された「食品防御対策ガイドライン」への改善を行い、より中小事業所にとっても実用的なものとなるような改訂を検討した。
結果と考察
(1)フードチェーン全体の安全性向上に向けた食品防御対策ガイドラインの改善、および中小事業所向け教育ツール等の検討については、中小規模事業所向け『食品防御対策ガイドライン(案)』(食品製造工場版、運搬・保管施設版、調理・提供施設版の3パターン)を作成した。さらに、それらのエッセンスを抽出し、中小規模事業所管理者向け『食品防御対策学習資料(案)』、中小規模事業所従業者向け『食品防御対策学習資料(案)』を作成した。
(2)国立医薬品食品研究所における人体(血液・尿等)試料中の毒物の検査手法の開発と標準化について、LC-MS/MSによる血液・尿等人体試料中のシアン配糖体、及びカーバメート系農薬の分析法と、ICP-MSによる人体試料中のヒ素、鉛、6価クロムの検出法を検討した。
(3)国立医薬品食品研究所における人体試料中の病原細菌の検査法の開発と標準化についても検討した。
(4)地方自治体試験施設における人体(血液・尿等)試料中の有害物質の検査法の開発と標準化については、健康危機管理事例への早期対応及び安全な試験実施のため、地衛研の理化学検査担当における人体試料の取扱いについて参考となるべく、「感染性物質を含有する可能性のある人体試料等の理化学試験に関するガイドライン」を作成し、公表した。また、ガイドラインに沿った一地衛研における対応例についても論文にまとめた。
(5)中小規模事業所の食品防御に関する脆弱性の評価については、中小規模の事業所2箇所、また比較のための参考として、大規模事業所2箇所についてオンライン/オンサイト訪問を行い、食品防御の観点からみた各事業所の脆弱性に関する情報を収集・整理した。
(6)食品防御対策の現状調査については、食品流通業(小売業)における対象として食品防御対策ガイドラインに記載された項目に対応したアンケート調査を行い、協力が得られた企業への現地聴き取り調査を行った。
(7)食品防御と食の安心安全に関する意識調査については、インターネット調査会社の登録モニタ(パネル)を対象としたウェブアンケート調査を計画し、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う2度目の緊急事態宣言発出下という特殊なタイミングでの調査実施となった。本年度の分析は主に集計結果をグラフ化するとともに、6段階尺度を2段階に統合することで、全体の傾向を把握することができた。
(8)海外(主に米国)における食品防御政策の動向調査については、米国において令和2年度に講じられた主な食品テロ対策の最新情報を把握した。具体的には、2011年1月に成立した食品安全強化法(FSMA)に関して、FDAが「食品への意図的な混入に対する緩和戦略」ガイダンス(全産業向け)の全内容を公開した点に着目し、この改訂内容を中心に整理を行った。
(9)食品の安全に関わる一つの問題 ~いわゆる「バイトテロ」から食品をどう守るのか?については、ウェブアンケート調査を実施し、食品防御に対する認知度や異物混入等に対する意識等を明らかにした。
結論
これまでの研究によって得られた成果は、大規模事業所にとっては取り組むことができる内容であったが、フードチェーンの大部分を構成する中小規模事業所にとっては、コスト負担等の問題から取り組み難いものであった。本研究において得る中小規模事業所や食品流通業・飲食店(小売店・レストラン)の実態に即した成果(ガイドライン、教育ツール等)は、わが国のフードチェーン全体の安全性向上に寄与するはずである。またこれらを通じて、意図的な食品への毒物混入からの国民の保護、及び大規模イベント時の訪日外国人に対する安全・安心な日本食の提供にも寄与するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-12-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-12-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024016B
報告書区分
総合
研究課題名
小規模な食品事業者における食品防御の推進のための研究
課題番号
H30-食品-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 総合品質保証担当)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所  衛生微生物部)
  • 加藤 礼識(別府大学 食物栄養科学部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 経営学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年食品への意図的な毒物混入事件が頻発したことも相まって、特に大規模食品事業者(食品工場等)では食品防御への対応が進んできた。一方、サプライチェーンの大部分を占める小規模食品事業者(飲食店を含む)では、参考となる食品防御ガイドラインが存在せず、十分な対応が行われているとは言えない。そこで本研究では、大規模食品事業者だけではなく、飲食店を含む小規模食品事業者においても、食品への意図的な毒物混入を防御するための方策について研究する。
研究方法
以下に示す9つの項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、学術論文・書籍等既存の公表情報の収集整理と、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。食品を取り扱う中小規模の事業所について、2箇所の食品製造工場、1箇所の物流施設、15箇所の飲食提供施設のオンサイト/オンライン訪問を実施し、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理し、これまでの研究成果で策定された「食品防御対策ガイドライン」への改善を行い、より中小事業所にとっても実用的なものとなるような改訂を検討した。
結果と考察
(1)フードチェーン全体の安全性向上に向けた食品防御対策ガイドラインの改善および中小事業所向け教育ツール等の検討については、大規模事業所を念頭に置いた、令和元年度改訂版「食品防御対策ガイドライン」、中小規模事業所向け「食品防御対策ガイドライン(案)」、中小規模事業所向け「食品防御対策学習資料(案)」を作成した。
(2)国立医薬品食品研究所における人体(血液・尿等)試料中の毒物の検査手法の開発と標準化については、人体試料中の有機リン系農薬、カーバメート系農薬、シアン配糖体2種、の分析法と、ICP-MSによる人体試料中のヒ素、鉛、6価クロムの検出法を検討した。
(3)国立医薬品食品研究所における人体(血液・尿等)試料中の病原細菌の検査法の開発と標準化については、病原性Y. enterocoliticaの強毒なAmerican strains とEuropean strainsおよびY. pseudotuberuculosisを識別できる、より高感度なMultiplex PCRならびにMultiplex Real-time PCRの開発を試みた。
(4)地方自治体試験施設における人体(血液・尿等)試料中の有害物質の検査法の開発と標準化については、健康危機管理事例への早期対応及び安全な試験実施のため、地衛研の理化学検査担当における人体試料の取扱いについて参考となるべく、「感染性物質を含有する可能性のある人体試料等の理化学試験に関するガイドライン」を作成し、公表した。
(5)中小規模事業所の食品防御に関する脆弱性の評価については、中小規模の事業所について、2箇所の食品製造工場、1箇所の物流施設、15箇所の飲食提供施設のオンサイト/オンライン訪問を実施し、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理した。
(6)食品防御対策の現状調査については、食品流通業(運搬・保管施設/調理・提供施設/小売業)において、平成29年度に実施した食品製造業(食品製造工場)の調査結果と比べて食品防御対策の取り組みが進んでいないことが明らかとなったため、今後より一層の普及・啓発が必要であると考えられる。
(7)食品防御と食の安心安全に関する意識調査については、インターネット調査会社の登録モニタ(パネル)を対象としたウェブアンケート調査を計画し、主に集計結果をグラフ化するとともに、6段階尺度を2段階に統合することで、全体の傾向を把握することができた。
(8)海外(主に米国)における食品防御政策の動向調査については、平成30年度から令和2年度に講じられたFDAおよびUSDAの食品テロ対策の概要を把握するとともに、これを体系的に整理した。
(9)食品の安全に関わる一つの問題 ~いわゆる「バイトテロ」から食品をどう守るのか?については、ウェブアンケート調査を実施し、食品防御に対する認知度や異物混入等に対する意識等を明らかにした。
結論
これまでの研究によって得られた成果は、大規模事業所にとっては取り組むことができる内容であったが、フードチェーンの大部分を構成する中小規模事業所にとっては、コスト負担等の問題から取り組み難いものであった。本研究において得る中小規模事業所や食品流通業・飲食店(小売店・レストラン)の実態に即した成果(ガイドライン、教育ツール等)は、わが国のフードチェーン全体の安全性向上に寄与するはずである。またこれらを通じて、意図的な食品への毒物混入からの国民の保護、及び大規模イベント時の訪日外国人に対する安全・安心な日本食の提供にも寄与するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-01-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-01-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国のフードチェーン全体の安全性向上のため、中小規模事業所や食品流通業・飲食店(小売店・レストラン)の実態に即した「食品防御対策ガイドライン」や「教育ツール」の作成、また「自治体向けの人体試料等の理化学試験に関するガイドライン」の作成を行った。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
大規模事業所向け『食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)』令和2年度改訂版、
中小規模事業所向け『食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)』、『食品防御対策ガイドライン(運搬・保管施設向け)』、『食品防御対策ガイドライン(調理・提供施設向け)』、
中小規模事業所向け『食品防御対策学習資料(案)』、
地方自治体向け『感染性物質を含有する可能性のある人体試料等の理化学試験に関するガイドライン』の作成を行った。
その他行政的観点からの成果
2021年東京オリンピックパラリンピックへの対策に向けて現在作成されているガイドラインが引用されている。
その他のインパクト
G20大阪サミット2019およびラグビーワールドカップ日本2019のテロ対策の一環としてこのガイドラインが使用された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
2023-06-23

収支報告書

文献番号
202024016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,168,000円
(2)補助金確定額
18,168,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,831,242円
人件費・謝金 3,508,873円
旅費 0円
その他 9,435,521円
間接経費 393,000円
合計 18,168,636円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差額は、自己資金636円です。

公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
-