文献情報
文献番号
202024013A
報告書区分
総括
研究課題名
テトロドトキシンのリスク管理のための研究
課題番号
H30-食品-一般-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 敏之(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 及川 寛(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部)
- 松嶋 良次(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部)
- 渡邊 龍一(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部)
- 内田 肇(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部)
- 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
- 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
- 山下 まり(四津 まり)(東北大学大学院農学研究科)
- 此木 敬一(東北大学大学院農学研究科生物産業創成科学専攻天然物生命化学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
24,222,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、(1)qNMRによるTTXやTTX類縁体の正確な定量法を開発し)、(2)正確に定量したTTXを用いて、TTX濃度を合わせた上で、この溶解液と、マウス検定法で使用されるTTXを含むフグ粗毒原液(肝、卵巣、筋肉由来)由来の調整液との急性毒性のハザード(毒力)を、マウス毒性試験(腹腔内投与及び経口毒性)により比較し明らかにする。(3)TTX類縁体の毒性評価については、qNMRなどで正確に値付けした類縁体を用いて、ナトリウムチャンネル阻害試験などにより、TTXに対する比毒性を評価する)。(4)TTXを対象としたLC/MS/MS法を用いてフグ糠漬けに含まれるTTXやTTX類縁体含量を定量して、わが国のフグに係る規制の妥当性を確認する。(5)以上の知見に基づき、フグ卵巣の糠漬けなど長期間塩蔵処理することにより人の健康を損なうおそれがないと認められるフグの部位を対象とした10MU/gの基準値の妥当性について検証する。
研究方法
本研究で調製した正確に定量したTTX調整液(溶媒:0.1%酢酸液)並びに、食品衛生検査指針・マウス検定法で使用されるフグ粗毒原液を用いて、両者のTTX濃度を一致させるよう調整した上で、食品衛生検査指針「マウス毒性試験」(腹腔内投与)を行い、両者のマウスユニット(MU)を求めた。
TTX類縁体の毒性評価は、各種クロマトグラフィーにより精製したTTX類縁体を本研究課題で開発したqNMRにより正確に定量した。これらのTTX類縁体を電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)阻害試験(Neuro2A細胞を用いた比色法)並びに電位依存性ナトリウムチャネル阻害試験(電気生理実験)で測定し、阻害率を調べた。さらに、マウス毒性試験による比毒性の確認も行った。
二枚貝に対して妥当性確認のとれたUHPLC/MS/MS分析法について、フグの子糠漬け製品に対する妥当性を確認するため、フグの子糠漬け試料を用いてTTX添加回収試験を実施し、妥当性を確認した。フグの子糠漬け資料は1%酢酸溶液により抽出し、活性炭固相抽出カートリッジにより前処理を行った。毒性等価係数(TEF)は、過去に得られたTTX類縁体のマウス比毒性値に基づいて、TTXを1として暫定的に設定した。なお、マウス比毒性値のない類縁体については類似する構造から外挿した。
TTX類縁体の毒性評価は、各種クロマトグラフィーにより精製したTTX類縁体を本研究課題で開発したqNMRにより正確に定量した。これらのTTX類縁体を電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)阻害試験(Neuro2A細胞を用いた比色法)並びに電位依存性ナトリウムチャネル阻害試験(電気生理実験)で測定し、阻害率を調べた。さらに、マウス毒性試験による比毒性の確認も行った。
二枚貝に対して妥当性確認のとれたUHPLC/MS/MS分析法について、フグの子糠漬け製品に対する妥当性を確認するため、フグの子糠漬け試料を用いてTTX添加回収試験を実施し、妥当性を確認した。フグの子糠漬け資料は1%酢酸溶液により抽出し、活性炭固相抽出カートリッジにより前処理を行った。毒性等価係数(TEF)は、過去に得られたTTX類縁体のマウス比毒性値に基づいて、TTXを1として暫定的に設定した。なお、マウス比毒性値のない類縁体については類似する構造から外挿した。
結果と考察
正確に定量したTTX標準液と濃度を一致させたコモンフグ抽出物は、TTX標準液と比較し、マウス腹腔内毒性において、84%の毒力であることが明らかとなり、コモンフグマトリクスの影響は比較的少ないことが昨年度に引き続き確認された。一方、経口投与の場合、腹腔内投与の場合とは逆に、無毒のフグ皮膚抽出物を溶媒とした方が、急性毒性はやや強かった。
高純度で精密に定量したTTX類縁体(11-oxoTTX, 4-epiTTX, 11-norTTX-6(S)-ol)を用いて、それらの毒性を明らかにした。11-oxoTTXは、全ての方法でTTXと同等か、それ以上の高い活性をもつことが確認された。4-epiTTXは、初めて電気生理実験で評価することができ、活性はTTXの1/18であることが示された。11-norTTX-6(S)-olは、Neuro2A assay、電気生理実験、競合結合試験で、それぞれTTXの1/23, 1/46, 1/13の活性であった。
市販のフグの子糠漬け製品に含まれるTTX 類の含量を明らかにするため、フグの子糠漬けに適した前処理法を開発し、二枚貝類に含まれる麻痺性貝毒及びテトロドトキシンに対し妥当性の確認された超高速液体クロマトグラフィー-質量分析法(UHPLC/MS/MS)による定量分析を試みた。本年度は、フグの子糠漬けに適した前処理法を検討し、活性炭を充填した固相カートリッジ (Seppak AC2) を使用した前処理法を開発し、この前処理法がフグの子糠漬け製品の試料に対しても十分な精度を有していることを確認した。国内で製造されるフグの子糠漬け製品を異なる製造業者(6業者)から購入し、妥当性の確認された本分析法を用いてTTXおよび類縁体の含量を調べた結果、1社を除き、残りの5社すべての製造業者で製造されたフグの子糠漬け試料の換算毒力は安全と見なされる毒力10 MU/gを上回るものであった。一方、マウス毒性試験では、すべて毒力10MU/g未満であり、食品衛生法で規制される違反検体ではなかった。マウス毒性試験は塩類の影響により毒力を過少評価するため、このことが影響したと推察される。
高純度で精密に定量したTTX類縁体(11-oxoTTX, 4-epiTTX, 11-norTTX-6(S)-ol)を用いて、それらの毒性を明らかにした。11-oxoTTXは、全ての方法でTTXと同等か、それ以上の高い活性をもつことが確認された。4-epiTTXは、初めて電気生理実験で評価することができ、活性はTTXの1/18であることが示された。11-norTTX-6(S)-olは、Neuro2A assay、電気生理実験、競合結合試験で、それぞれTTXの1/23, 1/46, 1/13の活性であった。
市販のフグの子糠漬け製品に含まれるTTX 類の含量を明らかにするため、フグの子糠漬けに適した前処理法を開発し、二枚貝類に含まれる麻痺性貝毒及びテトロドトキシンに対し妥当性の確認された超高速液体クロマトグラフィー-質量分析法(UHPLC/MS/MS)による定量分析を試みた。本年度は、フグの子糠漬けに適した前処理法を検討し、活性炭を充填した固相カートリッジ (Seppak AC2) を使用した前処理法を開発し、この前処理法がフグの子糠漬け製品の試料に対しても十分な精度を有していることを確認した。国内で製造されるフグの子糠漬け製品を異なる製造業者(6業者)から購入し、妥当性の確認された本分析法を用いてTTXおよび類縁体の含量を調べた結果、1社を除き、残りの5社すべての製造業者で製造されたフグの子糠漬け試料の換算毒力は安全と見なされる毒力10 MU/gを上回るものであった。一方、マウス毒性試験では、すべて毒力10MU/g未満であり、食品衛生法で規制される違反検体ではなかった。マウス毒性試験は塩類の影響により毒力を過少評価するため、このことが影響したと推察される。
結論
本課題で妥当性を確認したLC/MS/MS法は、わが国のフグ毒中毒検体の検査で利用することができる。本課題で開発した試料の前処理法はフグの子糠漬けに利用できることから、様々な食品分析に活用することが期待できる。
公開日・更新日
公開日
2023-04-12
更新日
-