文献情報
文献番号
199700452A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体遺伝子を検査する体外診断用医薬品の評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 昭行(大蔵省印刷局東京病院)
研究分担者(所属機関)
- 岩本愛吉(東京大学医科学研究所)
- 上田國寛(京都大学化学研究所)
- 北村聖(東京大学医学部)
- 吉原なみ子(国立感染症研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 薬物療法等有用性向上推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、病原体の遺伝子を検査するための診断用医薬品の評価に関する課題を明らかにすることが目的である。
研究方法
病原体の遺伝子を検査する体外診断用医薬品を使用している検査技師、検査結果を利用している臨床医、医薬品を製造・販売している業者に対して、医薬品が実地診療に使われるようになってから気づかれた問題を調査するとともに、その問題に対して、それぞれがどのように対応したかを調べた。次にこの調査結果を基に、病原体の遺伝子を検査する体外診断用医薬品の評価に関する今後の課題を検討した。
結果と考察
病原体の遺伝子を検査するための体外診断用医薬品として承認されたもののほとんどが、資料中から病原体由来の核酸を抽出した後、病原体遺伝子に特有の核酸配列とハイブリド結合する核酸プローブを用いて、一部の核酸配列を増幅・同定して、病原体の有無を調べ、核酸の濃度を推定する方法を用いている。
この検査法は、従来の顕微鏡検査法や培養検査法と比較して、感度がよく、特異性が高く、迅速に測定できるばかりでなく、培養が困難な病原体でも検査できるという利点がある。遺伝子増幅検査法は、病原体の遺伝子の一部を増幅しているので、増幅部の核酸配列が存在することは証明できても、病原体の生死は判定できない。また、薬物耐性遺伝子検査の場合を除き、病原体の薬物耐性を検査できない難点がある。この検査法では、核酸プローブとハイブリッド結合する核酸配列が、試料中に数十分子程度微量混入しても陽性となるため、汚染により疑陽性になり易いという難点がある。逆に、変異株や亜型については、核酸プローブと結合しなかったり、増幅速度が異なるため、測定値が低くなったり疑陰性となるという問題も指摘されている。
HIVやHCV等のRNAウイルス感染症では、血清中のウイルスRNA量が、抗ウイルス療法の適応を決めるのに、あるいは治療効果のモニターに役立つことが明らかになり、測定の精度管理が重要となっている。
病原体には、他の生物にない特有な核酸配列が多数存在するため、種々のプローブが検査に利用できる。事実、同じ病原体を検査する目的で、既に多種類の遺伝子検査法が登場している。核酸配列の増幅技術はまた発展途上であり、今後多種多様の方法が開発される可能性がある。検査法が多様であるほど、検査結果の施設間格差が生じやすく、精度管理も困難となり易い。培養可能の微生物については、基準となる物質(微生物)を利用できるので、精度管理は可能であるが、ウイルスなど培養が困難な微生物については、基準となる物質の入手が困難であり、精度管理用試料がないと精度管理ができず、誤った検査結果が、主治医に報告される可能性がある。
病原体の遺伝子検査の結果は、診断及び治療方針に決定的な影響を与えることを考えると、精度管理は今後の重要な課題である。
精度管理の対象は、検体の受付から検査結果の報告までの全過程である。病原体の遺伝子を検査する体外診断用医薬品のキットには、検体試料中から核酸を抽出する試薬等が含まれていない場合が多い。その場合、試薬キットの添付資料には核酸抽出過程までを含めた検討結果は含まれておらず、検査結果だけを利用する医師は検査を課題評価しがちである。検体試料中からの病原体由来の核酸の抽出については、試料中に存在する妨害因子を除去しつつ、目的の核酸を効率よく抽出するキットが別の業者によって開発されている。
遺伝子増幅技術に特有な汚染の対策については、自動測定装置、増幅物破壊技術などが開発され、これらを利用できる場合は汚染をある程度回避できる。しかしすべての検査に適応されるものではなく、汚染対策は依然として重要な課題である。
精度管理については、業者から使用者に対して、測定に使用するプローブや試薬の内容が明らかにされていない場合がある上に、精度管理用試料が提供されていないために、培養が困難な微生物については、有効な精度管理が行われていない。したがって、検査室から誤った検査結果を主治医に報告される場合がある。
この検査法は、従来の顕微鏡検査法や培養検査法と比較して、感度がよく、特異性が高く、迅速に測定できるばかりでなく、培養が困難な病原体でも検査できるという利点がある。遺伝子増幅検査法は、病原体の遺伝子の一部を増幅しているので、増幅部の核酸配列が存在することは証明できても、病原体の生死は判定できない。また、薬物耐性遺伝子検査の場合を除き、病原体の薬物耐性を検査できない難点がある。この検査法では、核酸プローブとハイブリッド結合する核酸配列が、試料中に数十分子程度微量混入しても陽性となるため、汚染により疑陽性になり易いという難点がある。逆に、変異株や亜型については、核酸プローブと結合しなかったり、増幅速度が異なるため、測定値が低くなったり疑陰性となるという問題も指摘されている。
HIVやHCV等のRNAウイルス感染症では、血清中のウイルスRNA量が、抗ウイルス療法の適応を決めるのに、あるいは治療効果のモニターに役立つことが明らかになり、測定の精度管理が重要となっている。
病原体には、他の生物にない特有な核酸配列が多数存在するため、種々のプローブが検査に利用できる。事実、同じ病原体を検査する目的で、既に多種類の遺伝子検査法が登場している。核酸配列の増幅技術はまた発展途上であり、今後多種多様の方法が開発される可能性がある。検査法が多様であるほど、検査結果の施設間格差が生じやすく、精度管理も困難となり易い。培養可能の微生物については、基準となる物質(微生物)を利用できるので、精度管理は可能であるが、ウイルスなど培養が困難な微生物については、基準となる物質の入手が困難であり、精度管理用試料がないと精度管理ができず、誤った検査結果が、主治医に報告される可能性がある。
病原体の遺伝子検査の結果は、診断及び治療方針に決定的な影響を与えることを考えると、精度管理は今後の重要な課題である。
精度管理の対象は、検体の受付から検査結果の報告までの全過程である。病原体の遺伝子を検査する体外診断用医薬品のキットには、検体試料中から核酸を抽出する試薬等が含まれていない場合が多い。その場合、試薬キットの添付資料には核酸抽出過程までを含めた検討結果は含まれておらず、検査結果だけを利用する医師は検査を課題評価しがちである。検体試料中からの病原体由来の核酸の抽出については、試料中に存在する妨害因子を除去しつつ、目的の核酸を効率よく抽出するキットが別の業者によって開発されている。
遺伝子増幅技術に特有な汚染の対策については、自動測定装置、増幅物破壊技術などが開発され、これらを利用できる場合は汚染をある程度回避できる。しかしすべての検査に適応されるものではなく、汚染対策は依然として重要な課題である。
精度管理については、業者から使用者に対して、測定に使用するプローブや試薬の内容が明らかにされていない場合がある上に、精度管理用試料が提供されていないために、培養が困難な微生物については、有効な精度管理が行われていない。したがって、検査室から誤った検査結果を主治医に報告される場合がある。
結論
最近登場した病原体の遺伝子を検査する技術は、従来の検査法と比較して感度がよく、特異性が高く、迅速であるばかりでなく、培養が困難な病原体でも検査が可能であるという利点があり、今後も多種多様の方法が開発され登場してくると予想される。
培養可能な病原体については精度管理が可能であるが、ウイルスなど培養が困難な病原体については、精度管理用試料がないと十分な精度管理ができず、誤った検査結果が主治医に報告される可能性がある。検査結果が診断及び治療方針に決定的な影響を与えることを考えると、精度管理が今後の重要な課題である
培養可能な病原体については精度管理が可能であるが、ウイルスなど培養が困難な病原体については、精度管理用試料がないと十分な精度管理ができず、誤った検査結果が主治医に報告される可能性がある。検査結果が診断及び治療方針に決定的な影響を与えることを考えると、精度管理が今後の重要な課題である
公開日・更新日
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