ヒトES細胞および間葉系幹細胞の品質管理・医療応用に関する基盤技術開発研究

文献情報

文献番号
200811007A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトES細胞および間葉系幹細胞の品質管理・医療応用に関する基盤技術開発研究
課題番号
H19-生物資源・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所 遺伝子導入制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 水澤 博(独立行政法人医薬基盤研究所 細胞資源研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,210,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
幹細胞の分化制御機構の解明や幹細胞を用いた動物モデルにおける医療への応用実験などの基礎研究は活発に試みられているが、ヒトへの再生医療に応用するうえで必須となってくる幹細胞の品質管理に関する情報は極めて乏しく、国際的な安全性基準が明確に定められていないのが現状である。そこで、染色体解析や遺伝子導入によりヒト ES 細胞や間葉系幹細胞の機能維持、品質管理、ならびにその評価法を開発し、再生医療の安全性の向上や実用化に向けての基礎情報を得ることを目的とする。
研究方法
ヒト間葉系幹細胞あるいは ES 細胞を長期培養後、アレイ CGH 等の染色体解析を行った。また、間葉系幹細胞については、脂肪細胞への分化能評価も併せて行った。ヒトES /iPS細胞への遺伝子導入に最適な Ad ベクターを探索するため、プロモーターの異なる LacZ 発現アデノウイルス (Ad) ベクター (Ad-CMV-LacZ、Ad-CA-LacZ、Ad-EF-LacZ、Ad-RSV-LacZ)をヒト ES 細胞(Kh-ES1)へ作用させて遺伝子発現量を測定した。また、ヒト iPS 細胞についても同様に検討を行った。
結果と考察
細胞のゲノムDNAを用いて、アレイCGHの感度及び再現性を検証したが、染色体の増減を解析するのに十分な検出感度、ならびに再現性を示すことが明らかとなった。本研究に用いた遺伝子導入細胞株は13番染色体1本の特異的欠失を伴うが、間葉系細胞本来の分化能は保持していた。また、欠失する13番染色体が特定アレルに起こっていることが明らかとなり、この細胞株は異数体形成におけるモデル細胞として非常に有用であると考えられた。改良型アデノウイルスベクターを用いることによりヒト ES 細胞に効率良く遺伝子導入が可能であった。これはヒト ES 細胞がアデノウイルス受容体 CAR を高発現しているためと考えられた。しかしながら、ES 細胞と類似していると考えられている iPS 細胞に対しては辺縁部しか遺伝子導入細胞がみとめられず、iPS 細胞への遺伝子導入にはさらなる改良が必要であると考えられた。
結論
・染色体解析は幹細胞の機能維持および品質管理に有用である。
・Ad ベクターは ES 細胞への高効率遺伝子導入に極めて有用である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-