保健機能食品に関する専門家と非専門家のリスク認知の差を解消した効果的なリスクコミュニケーション推進を目的とした研究

文献情報

文献番号
202024011A
報告書区分
総括
研究課題名
保健機能食品に関する専門家と非専門家のリスク認知の差を解消した効果的なリスクコミュニケーション推進を目的とした研究
課題番号
H30-食品-若手-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
種村 菜奈枝(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 柿崎 真沙子(名古屋市立大学 医学部)
  • 小野寺 理恵(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,092,000円
研究者交替、所属機関変更
【所属機関等の変更】 ・種村 菜奈枝(2020年8月1日付) 研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部・室長 ・小野寺理恵(2020年7月1日付) 公立大学法人大阪 大阪市立大学大学院医学研究科・特任講師

研究報告書(概要版)

研究目的
【分担研究1】
リスク認知調査(ベネフィット/リスクの情報提供の違いによる発信者に対する信頼度の変化を測定)を実施した上で、ベネフィットリスクコミュニケーションの必要性を検討することであった。

【分担研究2】
ピクトグラムの活用により、食品に含まれる成分に関する『消費者向け情報』のうち、安全性情報や予防的行動に繋がる情報へアクセスし易くなるかどうかを検証することであった。
研究方法
【分担研究1】
日本人1100名を対象にリスク認知調査(ベネフィット/リスクの情報提供の違いによる発信者に対する信頼度の変化を測定)を2020年11月に調査した。

【分担研究2】
本研究のデザインは、一般消費者1200名を対象とした無記名自己記入式質問紙調査とした。アウトカムは、指示した内容に対して、1)『消費者向け情報』の該当記載箇所へアクセスするまでの時間及び2)実際にアクセスした『消費者向け情報』の記載箇所の正誤とした。
対象者へ提示した内容は6種類である。
・健康被害情報
・公的機関からの警告情報
・注意すべき対象者情報
・未使用者向けの参考情報(健康人)
・未使用者向けの参考情報(罹患者)
・健康被害あり者向けの情報
結果と考察
【分担研究1】
本研究を通して、トピック性質が信頼度に与える影響は大きいことが明らかになった。本研究及び先行研究(吉川ら, 1989、楠見ら, 2013)を踏まえると、同一情報源が両論併記のベネフィットリスクコミュニケーションにおける発信者に対する信頼度は、片面(リスク)、両面(リスクベネフィット)、片面(ベネフィット)の順に高いことが明らかになった。これは、否定的な価値を持っている人は危険性を高く評価する傾向があることが影響していると考えられた。

【分担研究2】
情報アクセス向上かつアクセス後の正答割合が高かったのは、“注意すべき対象者情報”1種のピクトグラムであった。ピクトグラムの活用により、食品に含まれる成分に関する『消費者向け情報』の安全性情報に繋がる情報へアクセスし易くなることが検証できた。
結論
【分担研究1】
専門家と消費者とのリスク認知は異なると言われており、リスクコミュニケーションの対象者である消費者のベネフィット/リスク認知を把握した上で、コミュニケーションデザインすることが効果的なコミュニケーションの推進に繋がると思われる。

【分担研究2】
ピクトグラム活用の有用性があることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2021-10-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024011B
報告書区分
総合
研究課題名
保健機能食品に関する専門家と非専門家のリスク認知の差を解消した効果的なリスクコミュニケーション推進を目的とした研究
課題番号
H30-食品-若手-004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
種村 菜奈枝(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 景一(和歌山県立医科大学附属病院 医療情報部)
  • 長 雄一郎(足利大学 看護学部)
  • 中谷 英仁(静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター 統計解析室)
  • 小野寺 理恵( 大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 柿崎 真沙子(名古屋市立大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
【分担研究者の交替】 ■ 研究分担者(削除) 山本 景一(2018/4/1-2018/6/10) 長 雄一郎(2018/4/1-2018/9/30) 中谷 英仁(2018/4/1-2018/8/31) ■ 研究分担者(追加) 小野寺 理恵(2018/10/1-2021/3/31) 柿崎 真沙子(2018/11/1-2021/3/31) 【所属機関等の変更】 ・種村 菜奈枝(2020年8月1日付) 研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部・室長 ・小野寺 理恵(2020年7月1日付) 大阪市立大学 大学院医学研究科・特任講師

研究報告書(概要版)

研究目的
【分担研究1】
専門家と非専門家の効果的なリスクコミュニケーション推進のため、消費者への伝達方法、及びベネフィット情報の質のあり方を提言した。

【分担研究2】
ミス・コミュニケーションが生じる原因として、非専門家である一般消費者と専門家との間における共通基盤の違いがあり、この違いを平準化するため、難解語を特定し、平易化することを目的とした。さらに近年、ハザードに対する情報提供や対話を目的としたハザードコミュニケーション推進の一助としてピクトグラム活用が提案されている。ピクトグラムの活用により、『消費者向け情報』の安全性情報や予防的行動に繋がる情報へアクセスし易さを検証することを目的とした。
研究方法
【分担研究1】
(ア) リスク認知調査
日本人を対象にリスク認知(ベネフィット/リスクの情報提供の違いによる発信者に対する信頼度の変化を測定)無記名自己記入式質問紙調査を 2020 年 11 月に実施した。

(イ) 一般消費者へのメッセージ作成に関する留意点
平成 30 年度の機能性表示食品の届出表示およびキャッチコピー等の表示に関する実態調査後、令和元年度の「リスクコミュニケーションの推進方策に関する検討作業部」で討論を踏まえ、ベネフィット情報提供における論点を策定した。令和元年度から令和 2 年度にかけて、ベネフィットから見たリスクをテーマにリスクコミュニケーションを行った。最終的に、「リスクコミュニケーションデザインブック」として、効果的なリスクコミュニケーション推進のための企画から実施、その効果を評価方法、実例、及び専門家会議で協議した論点を盛り込んだ。

【分担研究2】
(ア) 難解語リストの作成
『消費者向け情報』に含まれる医学または臨床試験用語の専門用語を難解語の候補として抽出するための形態素解析用辞書の作成に成功した 。その後、当班が作成した形態素解析辞書と形態素解析器(MeCab)を使用し、『消費者向け情報』に含まれる難解語候補 525 語を抽出し、一般消費者を対象とした認知・理解度調査を実施した。

(イ) ピクトグラム開発とその有用性評価
2020 年 12 月に一般消費者 1200 名を対象に A 群(ピクトグラムあり)又は B 群(ピクトグラムなし)に 1:1 で無作為割付をした。6 種の安全性と予防行動情報ごとに、対象者に『消費者向け情報』提示後、ウェブ上で該当箇所をクリック回答させ、アクセス時間平均を t 検定、正答とピクトグラム有無との関連をカイ二乗検定で検討した。
結果と考察
【分担研究1】
(ア) リスク認知調査
本研究を通して、トピック性質が信頼度に与える影響は大きいことが明らかになった。本研究及び先行研究(吉川ら, 1989、楠見ら, 2013)を踏まえると、同一情報源が両論併記のベネフィットリスクコミュニケーションにおける発信者に対する信頼度は、片面(リスク)、両面(リスクベネフィット)、片面(ベネフィット)の順に高いことが明らかになった。

(イ) 一般消費者へのメッセージ作成に関する留意点
リスクコミュニケーションデザインブックは、健康に関するアドバイザー養成研修担当者、規制当局の担当者を対象とした、対象者の状態や特性に応じた効果的なリスクコミュニケーションを行うための企画、実施、振り返りの手順、及び各留意点やリスクベネフィット情報提供における論点を纏めたものである。リスクコミュニケーションの実施側を対象とした従来の研修冊子との違いは、専門家と非専門家のリスク認知の差を踏まえた対象者の状態のアセスメント及びそのアセスメント結果をコミュニケーションデザインへ反映する方法や、自己管理型又は他者管理型といったリスクの種類に留意した上で、リスクコミュニケーションを効果的に実施できるよう解説に努めた。

【分担研究2】
(ア) 難解語リストの作成
難解語 446 語および理解乖離語 1 語を特定した。

(イ) ピクトグラム開発とその有用性評価
6 種のピクトグラムのうち、2 種のピクトグラムで 2 群間の情報アクセス時間平均の有意な差が見られた(健康被害情報 、注意すべき対象者情報)。2 群間の情報アクセス後の正答で有意な差が見られたのは、1種のピクトグラムであった(注意すべき対象者情報)。
結論
専門家と消費者とのリスク認知は異なると言われており、リスクコミュニケーションの対象者である消費者のベネフィット/リスク認知を把握した上で、平易な言葉やピクトグラムを活用したコミュニケーションデザインすることが効果的なコミュニケーションの推進に繋がる。

公開日・更新日

公開日
2021-10-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ミス・コミュニケーションが生じる原因として、非専門家と専門家との間における共通基盤の違いがある。この違いを平準化するため、食品の有効性及び安全性に関する消費者向け情報に含まれる難解語候補を抽出するための形態素解析用辞書の作成に成功した。その後、消費者を対象とした認知・理解度調査を実施した上で、難解語または理解乖離語を特定した。さらに絵文字(ピクトグラム)を活用したハザードコミュニケーションを目的に食品ハザードピクトの有用性を検討した結果、今後の利活用の可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
従来のリスクコミュニケーションに対して、「ベネフィットからリスクを考える」という新たな観点を加味した上で、リスクのみならずリスクと表裏の関係であるベネフィットに関しても、誤誘導を生じさせることなく、一般消費者へ伝達するためのメッセージ作成に関する留意点を策定した。
ガイドライン等の開発
・食品ハザードピクトの開発
・リスクコミュニケーションデザインブック
 1)クロスカリキュラム制度を活用した高校編
 2)開催のための手引き書
 3)自己管理型リスク(ベネフィットから見たリスク)
   絵本教材と解説書
・情報提供文書に含まれる難解語リスト
その他行政的観点からの成果
食品健康影響評価の概念の中心であるリスク評価にベネフィットの視点を入れた評価を前提にベネフィットリスクコミュニケーションの意義についてメッセージの違いによるメッセージ送り手に対する信頼度を調査した結果、トピック性質が信頼度に与える影響は大きいことが明らかになった。専門家と消費者とのリスク認知は異なると言われており、リスクコミュニケーションの対象者である消費者のベネフィット/リスク認知を把握した上で、コミュニケーションデザインすることが効果的なコミュニケーションの推進に繋がると思われる。
その他のインパクト
・公開シンポジウム2件
・厚生労働省ホームページ|成果物の一般公開
○食品の安全確保推進研究事業(厚生労働科学研究)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kenkyu/index.html

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
リスクコミュニケーションや講演等を通じた活動

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-05-26
更新日
2022-06-10

収支報告書

文献番号
202024011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,619,000円
(2)補助金確定額
6,569,000円
差引額 [(1)-(2)]
50,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 270,304円
人件費・謝金 761,370円
旅費 0円
その他 4,010,888円
間接経費 1,527,000円
合計 6,569,562円

備考

備考
※補助金確定額と補助金対象経費実支出額の差額562円については、自己充当。

公開日・更新日

公開日
2022-07-01
更新日
-