ヒトES細胞由来心筋細胞の表面マーカー探索および大量培養・純化システムの構築

文献情報

文献番号
200811006A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトES細胞由来心筋細胞の表面マーカー探索および大量培養・純化システムの構築
課題番号
H19-生物資源・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
日高 京子(国立循環器病センター 研究所バイオサイエンス部)
研究分担者(所属機関)
  • 森崎 隆幸(国立循環器病センター 研究所バイオサイエンス部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はES細胞より大量にかつ効率よく心筋細胞を得るために、心筋およびその前駆細胞で発現するマーカーを探索し、大量かつ効率的な分化誘導系とともに純度の高い単離法を開発することを目的とする。そこで(1)懸濁培養をベースとした高効率分化誘導条件の検討と、(2)候補マーカーXと磁気ビーズを用いたMACSによる簡便かつ大量化可能な分離法の確立、(3)ヒトES細胞の培養と分化条件の最適化を目的とした。

研究方法
本年度における研究はマウスおよびヒトES細胞を用いて行った。胚様体形成は従来のハンギングドロップ法に加え、EBチップ法、懸濁培養法、2次元培養法などを用いた。分化程度や分離細胞の純度の評価はRT-PCRのほか、免疫染色による方法を用いた。Nkx2.5 EGFPノックインES細胞を用いた場合は、GFP陽性の割合を持って分化程度を評価した。
結果と考察
(1)懸濁培養をベースとした分化誘導法。昨年度に引き続き大量に胚様体形成を行う目的で、懸濁培養による形成法を試みた。通常の血清を含む条件では不均一な胚様体しか得られなかったが、ある無血清条件で比較的均一な、心筋への分化能力も十分な胚様体を得ることができた。
(2)磁気ビーズを用いた大量調製法の確立。候補マーカーXを用いたMACS分離法により自律拍動開始直後の胚様体からX陽性の細胞を高い純度で回収することができた。収率はFACSを用いた場合よりも高く、MACSの処理能力から理論的には10^9オーダーの細胞が処理可能となる。効率の高い誘導法と組み合わせることにより心筋細胞を大量に得ることができると思われる。得られた細胞は腎臓被膜下への移植によりin vivoでの生存も確認した。
(3)ヒトES細胞の培養と分化誘導検討。ヒトES細胞を用いて分化誘導の検討を行った。(1)と同様に無血清培地で比較的均一な胚様体を得ることはできたが、効率の良い心筋分化条件はさらに検討が必要である。
結論
マウスES細胞を用いてES細胞由来心筋細胞の大量調製へ向けての一定の成果が得られた。具体的には懸濁培養を用いた胚様体形成による心筋細胞分化法と簡便かつスケールアップ可能なMACSによる細胞分離法を確立した。ヒトES細胞での検討は培養・分化の容易な株の選択も含め、今後の課題としたい。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-