健康食品の安全性確保に資する情報提供、品質確保、被害情報収集体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
202024006A
報告書区分
総括
研究課題名
健康食品の安全性確保に資する情報提供、品質確保、被害情報収集体制の構築に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 剛(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 山田 浩(静岡県立大学 薬学部)
  • 朝倉 敬子(東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野)
  • 梅垣 敬三(昭和女子大学生活科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
13,749,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命の延伸に健康食品の利用が推奨される一方で、健康食品の品質管理は徹底されていない。粗悪な製品の利用や、医薬品と併用は重篤な健康被害を生じる可能性があることから、製品側および利用者側の双方において適切な利用環境を整え、さらには健康被害が生じた際の迅速な行政対応が重要である。申請者は「健康食品」の安全性・有効性情報サイト(HFNet)を介して、安全性を重視した情報提供、分担研究者(山田、梅垣)は健康食品利用による有害事象(健康被害)の因果関係評価法(アルゴリズム)の開発を行ってきた。本研究は、これまでの研究成果を社会実装するための検討である。
研究方法
研究1)HFNetにおける健康食品と医薬品との相互作用情報の充実および実態の把握
健康食品と医薬品との相互作用に関する情報蓄積を継続的に進め、HFNetに掲載する。本年度は150件の掲載を行う。また、薬剤師、管理栄養士を対象にHFNetにおける医薬品と健康食品の相互作用情報の活用実態について調査を行う。
一般向けコラムの充実、Facebook、Twitterを介した情報提供を積極的に行うことにより、消費者自身による被害の未然防止に資する情報提供を目指す。
研究2)健康食品(錠剤・カプセル状)の製造管理および原材料の安全性の確保
前年度までに作成した健康食品の製造管理(GMP)および原材料の安全性確保に関するガイドラインについて引き続き作業を行い、2020年6月の食品衛生法の施行に対応する。また、1~2年度目の調査結果を基に、健康食品の品質確保のためのガイドラインの策定に資する資料を作成する。
研究3)有害事象の迅速・簡便な収集のためのアルゴリズムの実用化
前年度までに作成したアルゴリズムと報告フォーマットについて引き続き有用性の確認作業を行い、2020年6月の食品衛生法の施行に対応する。また、被害報告フォーマットの導入およびその後の行政対応へのガイドライン策定に資する検討を行う。
3班合同による新たな取り組み)一般消費者への対策として、種村班(保健機能食品に関する専門家と非専門家のリスク認知の差を解消した効果的なリスクコミュニケーション推進を目的とした研究)と協力しHFNetにおける難解語の解消、藤井班(健康食品等の安全確保に必要な技術的課題への対応と効果的な情報発信のための研究)と協力し、HFNetを活用した効果的な情報提供について検討する。
結果と考察
研究1)HFNetに掲載した健康食品と医薬品との相互作用情報150件の掲載を行った。また、HFNet内の素材情報データベースに掲載している医薬品と健康食品の相互作用情報のニーズ調査を行った結果、薬剤師(481名)、管理栄養士(299名)におけるHFNetの認知度はいずれも30%であり、その内、HFNetを利用しているものは約8割、HFNet内の相互作用情報を活用しているものは約5割程度、知っていたが利用していないものは約3割であった。
研究2)「厚生労働省告示第121号(令和2年3月31日)指定成分等含有食品の製造又は加工の基準」及び「指定成分等含有食品に関する留意事項について(令和2年4月17日付け薬生食基発0417号第1号)」を統合し、必要に応じて用語を修正し「錠剤、カプセル状等食品の製造又は加工の基準」の素案を作成した。これをさらに、令和元年度の研究成果である「原材料・製品の安全性点検フローチャート」と組合せ、製品設計、安全性点検、GMPを網羅する「錠剤、カプセル状等食品の安全性確認ガイドライン」の素案を作成した。
研究3)実臨床に即して模擬患者を用い、医療従事者および健康食品製造販売事業者において有害事象情報収集のための報告フォーマットおよび因果関係評価アルゴリズム票を試用し、その実用性評価、課題の抽出を行った結果、報告フォーマットでは評価者間での項目一致率はおおむね高かったが、一部の項目で回答にばらつきが見られた。因果関係評価アルゴリズム票では、重篤度判定では71~82%の一致率となった。
3班合同)「プエラリア・ミリフィカ」を題材とし、藤井班を中心に「検索語解析結果に基づくホームページの内容の検討」を、種村班を中心に「Suitability Assessment of Materials評価」「平易化表現の検討」を行い、コラム改修を行った。これらの改修をベースに指定成分等4素材のコラムおよびリーフレットを作成した。
結論
本研究課題は2020年6月1日に施行された改正食品衛生法に対応するものであるが、それだけにとどまらず、健康食品全般に対応可能するものである。本研究における成果が厚生労働行政に役立ち、健康食品の利用による健康被害の未然防止につながることを期待する。また、引き続きHFNetを活用して情報提供を行う。

公開日・更新日

公開日
2021-10-14
更新日
2021-10-15

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202024006B
報告書区分
総合
研究課題名
健康食品の安全性確保に資する情報提供、品質確保、被害情報収集体制の構築に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 剛(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 山田 浩(静岡県立大学 薬学部)
  • 朝倉 敬子(東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野)
  • 梅垣 敬三(昭和女子大学生活科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、若年女性を中心としたプエラリア・ミリフィカを含む健康食品の摂取を原因とする健康被害が多数報告されたことを受け、食品衛生法の一部を改正する法律が公布された。その中には、「健康被害の発生を未然に防止する見地から、特別の注意を必要とする成分等を含む食品について、事業者から行政への健康被害情報の届出を求める。」ことが含まれており、事業者においては、特別の注意を必要とする成分等を含む食品を製造するにあたって品質の確保が重要となる。
本研究により、事業者が法律を遵守するにあたり必要な品質確保、被害情報収集体制構築に資する研究を行うとともに、消費者における健康食品の利用実態を把握し、消費者および専門家が必要とする情報を充実させる。
研究方法
研究1)HFNetにおける健康食品と医薬品との相互作用情報の充実および実態の把握
研究期間中を通じ、健康食品と医薬品との相互作用に関する情報蓄積を継続的に進め、日々発信する。具体的にはPubMed、医学中央雑誌で文献検索を行い、50件/年(150件/3年)の追加を目指す。
初年度において、実際に健康食品と医薬品を併用している消費者に対してインターネットアンケート調査を行い、その実態を把握する。2年度目以降は、その情報を基に、特に注意すべき併用については、HFNetで積極的に情報の提供を行うほか、リーフレットなどの手段を用い、適宜情報提供を行う。
研究2)健康食品(錠剤・カプセル状)の製造管理および原材料の安全性の確保
健康食品(錠剤・カプセル状)の製造管理および原材料の安全性の確保のため、初年度は、健康食品の製造管理(GMP)および原材料の安全性確保について幅広く事業者団体等からの意見の聴取を行い、実態を把握する。2年度目は現行制度の問題点、GMP導入にあたっての障害、さらには、GMPを導入できない事業者のための品質確保のための代替案を検討する。3年度目に、1~2年度目の調査結果を基に、健康食品の品質確保のためのガイドラインの策定に資する資料を作成する。
研究3)有害事象の迅速・簡便な収集のためのアルゴリズムの実用化
初年度は作用の強い成分を含む健康食品の利用による健康被害の因果関係を把握するための調査を行う。2年度目は作用はそれほど強くないものの汎用されている健康食品の利用による健康被害の因果関係を把握するための調査を行う。これらの検討において、医療関係者および食品業界の有識者に意見を伺い、適宜、調整し最終的なものとする。1~2年度目の結果より状況に応じた改修を行い、3年度目に被害報告フォーマットの導入およびその後の行政対応へのガイドライン策定に資する検討を行う。
結果と考察
研究1)平成30年度100件、令和元年度126件、令和2年度150件と、3年間で376件の相互作用情報をHFNetに追加した。
また、「未成年者におけるサプリメントと医薬品の併用実態調査」「薬剤師を対象とした患者におけるサプリメントと医薬品の併用実態調査」「HFNet利用者におけるニーズ把握のための実態調査」「薬局における健康食品および食事・栄養摂取に関する相談の実態調査」「女性ホルモン様作用を標榜するサプリメントの利用および健康被害に関する実態調査」「痩身、性機能改善を目的としたサプリメントの利用および健康被害の実態調査」「薬局における健康食品および食事・栄養摂取に関する相談の実態調査」「指定成分等の認知度調査」「HFNetにおける健康食品と医薬品との相互作用情報のニーズ調査」を行った。
研究2)医薬品医療機器等法、平成17年に通知された食安発0201003号「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」及び「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドラインについて」等、各種GMPを精査・比較し、指定成分等含有食品GMPの告示案を作成した。また平成30年度研究成果の指定成分等のGMP素案を改良し、いわゆる健康食品に対応した告示案を作成した。
研究3)これまでに作成してきた報告フォーマットを基に検討を重ね、指定成分等含有食品による健康被害報告フォーマットを作成した。また因果関係評価アルゴリズムにおいては、実用化に向けて、報告基準スクリーニングとして用いる場合の明確な定義づけが必要と考えられた。
結論
本研究課題は2020年6月1日に施行された改正食品衛生法に対応するものであるが、それだけにとどまらず、健康食品全般に対応可能するものである。本研究における成果が厚生労働行政に役立ち、健康食品の利用による健康被害の未然防止につながることを期待する。また、引き続きHFNetを活用して情報提供を行う。

公開日・更新日

公開日
2021-10-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202024006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本課題は2020年6月1日に施行された改正食品衛生法に対応するものであるが、それだけにとどまらず、健康食品全般に対応可能するものである。本研究における成果は厚生労働行政に役立ち、消費者における健康食品の利用による健康被害の未然防止に資するものである。本研究成果については「健康食品」の安全性・有効性情報データベースを活用して引き続き、専門家および消費者への情報提供に役立てる。
臨床的観点からの成果
健康食品と医薬品との相互作用は治療効果に影響を及ぼすだけでなく、副作用を増強するなど重篤な健康被害をもたらす可能性が高い。医師・薬剤師を対象とした相互作用に関する情報提供は相互作用を原因とする健康被害の未然防止に資するものである。
ガイドライン等の開発
本課題の研究成果は食品衛生法改正(第8条)に対応するものであり、薬事・食品衛生審議会 (食品衛生分科会新開発食品調査部会)(2019年7月1日、2020年1月20日)において資料として用いられている。
その他行政的観点からの成果
本課題の研究成果は食品衛生法改正(第8条)に対応するものであり、厚生労働省ホームページに掲載されている「指定成分等含有食品の製造又は加工の基準」「健康食品の摂取に伴う有害事象情報提供票」は当研究課題の成果である。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/kankeihourei_00001.html
その他のインパクト
令和元年度より2年にわたり、藤井班、種村班、千葉班の3班合同で、消費者が健康食品を適切に活用し、健康被害を未然に防止するための適切な情報提供について検討した。
具体的には、健康食品をテーマとして、一般消費者を対象としたリスクコミュニケーションを2回(令和元年8月28日、同10月19日)開催した。また、第17回日本機能性食品医用学会総会(令和元年12月8日)、第18回日本機能性食品医用学会総会(令和2年12月20日)において3班合同シンポジウムを開催し、専門家を対象とした講演も行った。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
指定成分等含有食品(関係法令等)告示第121号および健康食品の摂取に伴う有害事象情報提供票
その他成果(普及・啓発活動)
2件
消費者を対象としたリスクコミュニケーションを2回開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kobayashi E, Nishijima C, Chiba T, et al
The prevalence of dietary supplement use among elementary, junior high, and high school students: A nationwide survey in Japan.
Nutrients  (2018)
原著論文2
Nishijima C, Chiba T, Sato Y, et al
Nationwide online survey method to estimate ongoing adverse events caused by supplement use: Application to diarrhea.
Food Hyg Saf Sci.  (2018)
原著論文3
小島彩子、佐藤陽子、千葉剛他
「健康食品」の安全性・有効性情報の収載データ分析から示される健康食品と医薬品の併用における注目すべき有害事象
食品衛生学雑誌  (2018)
原著論文4
小林悦子、佐藤陽子、千葉剛他
健康食品による被害未然防止のための注意喚起情報の収集および解析
食品衛生学雑誌  (2018)
原著論文5
Chiharu Nishijima C, Tsuyoshi Chiba, Yoko Sato, et al
Nationwide online survey enables the reevaluation of the safety of Coleus forskohlii extract intake based on the adverse event frequencies.
Nutrients  (2019)
原著論文6
Chiharu Nishijima, Etsuko Kobayashi, Tsuyoshi Chiba et al
The attitude toward active and passive use of dietary supplements by Japanese high school students.
Nutrients  (2019)
原著論文7
Chiharu Nishijima, Etsuko Kobayashi, Tsuyoshi Chiba et al
Are There Adverse Events after the Use of Sexual Enhancement Nutrition Supplements? A Nationwide Online Survey from Japan.
Nutrients  (2019)
原著論文8
Etsuko Kobayashi, Chiharu Nishijima, Tsuyoshi Chiba et al
Concomitant Use of Dietary Supplements and Medicines among Preschool and School-Aged Children in Japan.
Nutrients  (2019)
原著論文9
小島彩子、佐藤陽子、千葉剛他
がん患者の健康食品摂取に関連した有害事象の症例報告に関するシステマティックレビュー
Yakugaku-Zasshi  (2019)
原著論文10
Akiyama H, Nose M, Takiguchi H, et al
Mutagenetic and anti-allergic studies for evaluation of extracts of Coptis Rhizome produced by an artificial hydroponic system.
J Nat Med.  (2019)
原著論文11
Nose M, Tsutsui R, Akiyama H et al
Evaluation of the safety and efficacy of Glycyrrhiza uralensis root extracts produced using artificial hydroponic and artificial hydroponic-field hybrid cultivation systems III: anti-allergic effects of hot water extracts on IgE-mediated immediate hy
J Nat Med.  (2020)
原著論文12
Hosohata K, Furushima D, Yamada H et al
Surveillance of drugs that most frequently induce acute kidney injury: A pharmacovigilance approach.
J Clin Pharm Ther.  (2018)
原著論文13
増子沙輝、千葉剛、山田浩他
東京都における長期データベースに基づく健康食品摂取に伴う健康被害事例の発現傾向の検討
臨床薬理  (2020)
原著論文14
牧之瀬翔平、千葉剛、山田浩他
健康食品の摂取に伴う有害事象情報の収集のための統一報告フォーマットの作成と医療従事者による実用性評価
臨床薬理  (2021)

公開日・更新日

公開日
2021-10-15
更新日
2023-06-21

収支報告書

文献番号
202024006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,872,000円
(2)補助金確定額
17,678,000円
差引額 [(1)-(2)]
194,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,100,693円
人件費・謝金 5,026,759円
旅費 26,300円
その他 3,402,103円
間接経費 4,123,000円
合計 17,678,855円

備考

備考
コロナ禍により、会議等がwebにて開催されたため、旅費等の支出が減った。

公開日・更新日

公開日
2023-06-27
更新日
-