文献情報
文献番号
202024005A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な高吸収化機能性食品の開発支援を目指した、安全性評価のための指標の抽出と標準化に向けた研究
課題番号
H30-食品-若手-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
長野 一也(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,047,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、機能性食品の中でも、リスクに直結する可能性がある「吸収性を改善(曝露量が増加)した機能性食品」に着目し、独自の「物性-動態-毒性の連関解析手法」を適用することで、安全な高吸収化機能性食品を開発する際の指標(動態学的因子など)の抽出を目的とする。具体的には、独自処方の高吸収性非晶質クルクミンを開発する中で、吸収特性(水溶性/消失速度など)の異なる製剤を多数有しているため、それらの物性と動態、毒性を比較することで、高吸収化製剤の安全性を評価するうえでの指標を抽出し、開発する際の安全性評価の標準化・ガイドライン策定に資する知見の収集が期待される。
研究方法
物性評価には、Viscosizer-TDを用いて、拡散係数を解析した。また、動態評価のうち、吸収はラットを用いて、Area Under Curveを比較し、排泄はLC-MS/MS系を活用して定量した。毒性は、老化マウスを活用して評価した。
結果と考察
上記の目的を達成するために、1年目では、各項目について解析するためのアッセイ系の足がかりが構築できた。また、2年目では、アッセイ系の最適化とともに、実際に、様々な非晶質製剤を比較することで、品質に関わる知見や評価指標を抽出できた。さらに、本年度(3年目)では、以下の通り、品質に関わる知見や評価指標を引き続き抽出しつつ、対応策を含めた知見が収集できた。
1) 「各製剤中のCURの拡散速度」を指標に、非晶質性の質(高水溶性の維持)を担保しうることを提示。
2) 分散剤の使い分けで、吸収プロファイル(速効型/徐放型)を制御しうることを提示。
3) CURは、既知経路である胆汁酸排泄のみならず、尿中にも排泄されていることが提示。
4) 老化によって、より高感度に非晶質CURの毒性を観察できると仮説したものの、本実験系では、安全性の高感度な評価指標を見出すことはできなかった。
1) 「各製剤中のCURの拡散速度」を指標に、非晶質性の質(高水溶性の維持)を担保しうることを提示。
2) 分散剤の使い分けで、吸収プロファイル(速効型/徐放型)を制御しうることを提示。
3) CURは、既知経路である胆汁酸排泄のみならず、尿中にも排泄されていることが提示。
4) 老化によって、より高感度に非晶質CURの毒性を観察できると仮説したものの、本実験系では、安全性の高感度な評価指標を見出すことはできなかった。
結論
これらの成果をまとめて考えることで、安全な高吸収化機能性食品の開発のためには、以下の対応策を講じることが重要な可能性を提示した。
1. [水溶性]と[安定性]の解析から、高水溶性非晶質製剤の品質を担保するためには、①アルミ蒸着袋のように、「包装」を考慮するか、②水溶性と製剤的安定性のバランスで「分散剤:PGFEの配合量」を調整するか、③非晶質化させるための「適切な分散剤の選択」を考慮することが、高吸収化非晶質製剤の品質担保に対する対応策になりうる。
2. [動態]と[水溶性・吸収性]の解析から、単に、水溶性を高めて、吸収性を亢進(AUCが大きい)させることだけではなく、その質(最高血中濃度や徐放性)を考慮し、高分子ポリマーや分散剤を使い分けることによって、吸収プロファイル(速効型・徐放型)を変化させることができるため、安全で有用な製剤設計を最適化することが可能である。
3. [蓄積性]と[代謝]、[毒性]の解析から、安全性評価においては、労力のかかる亜急性毒性試験(90日間の反復連日投与試験)や慢性毒性試験(12ヶ月間の反復連日投与試験)だけに頼るのではなく、MS4の蓄積性や、代謝や排泄の程度や速度を評価項目として理解することが、高確度で理論的な毒性発現予測につながりうることを提示した。
※ 行政評価でも指摘されている汎用性評価を見据え、CUR以外の成分への適用を試みた結果、同様の非晶質処方により、レスベラトロール/シリマリンも水溶性が向上することから、更なる検証は必要なものの、本事業の成果は、他成分に対しても適用できる可能性が提示された。
1. [水溶性]と[安定性]の解析から、高水溶性非晶質製剤の品質を担保するためには、①アルミ蒸着袋のように、「包装」を考慮するか、②水溶性と製剤的安定性のバランスで「分散剤:PGFEの配合量」を調整するか、③非晶質化させるための「適切な分散剤の選択」を考慮することが、高吸収化非晶質製剤の品質担保に対する対応策になりうる。
2. [動態]と[水溶性・吸収性]の解析から、単に、水溶性を高めて、吸収性を亢進(AUCが大きい)させることだけではなく、その質(最高血中濃度や徐放性)を考慮し、高分子ポリマーや分散剤を使い分けることによって、吸収プロファイル(速効型・徐放型)を変化させることができるため、安全で有用な製剤設計を最適化することが可能である。
3. [蓄積性]と[代謝]、[毒性]の解析から、安全性評価においては、労力のかかる亜急性毒性試験(90日間の反復連日投与試験)や慢性毒性試験(12ヶ月間の反復連日投与試験)だけに頼るのではなく、MS4の蓄積性や、代謝や排泄の程度や速度を評価項目として理解することが、高確度で理論的な毒性発現予測につながりうることを提示した。
※ 行政評価でも指摘されている汎用性評価を見据え、CUR以外の成分への適用を試みた結果、同様の非晶質処方により、レスベラトロール/シリマリンも水溶性が向上することから、更なる検証は必要なものの、本事業の成果は、他成分に対しても適用できる可能性が提示された。
公開日・更新日
公開日
2021-11-29
更新日
-