分子シャペロン複合型ヒトがんワクチン開発

文献情報

文献番号
200810002A
報告書区分
総括
研究課題名
分子シャペロン複合型ヒトがんワクチン開発
課題番号
H20-ワクチン・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 昇志(札幌医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥越 俊彦(札幌医科大学 医学部)
  • 田村 保明(札幌医科大学 医学部)
  • 佐原 弘益(麻布大学 獣医学部)
  • 和田 卓郎(札幌医科大学 医学部)
  • 平田 公一(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(次世代ワクチン開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
30,239,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 癌治療の新たな方法として癌抗原ペプチドを用いた細胞障害性T細胞 (cytotoxic T lymphocytes, CTL) が認識するHLA結合ワクチン(T細胞ワクチン)開発は、大きな期待が持たれているところといえる。しかし、これらペプチドワクチン単体ではその免疫原性は充分でなく、これらの安全な免疫原性増強法が強く期待されている。
 我々は、Heat Shock Protein(HSP)等、分子シャペロンによる樹状細胞等を介した免疫賦活機構を研究してきたが、最近、細胞外からくわえたHSP-抗原ペプチド複合体が飛躍的に樹状細胞内プロセシングを通して、抗原特異的CTL応答を効率的に誘導し、がんワクチンとしての免疫原性を大きく高めることを見いだした。
 本研究は、このようなHSPに代表される分子シャペロン―抗原複合体の樹状細胞内でプロセシング機構を更に明らかにし、高力価ヒトがんT細胞ワクチン確立と臨床応用を目指すものである。
研究方法
 本研究ではHSP-抗原複合体による樹状細胞内でプロセシングの時間的、空間的解析などを解析する。この成果を基盤にした臨床応用への具体的な研究を続けて行う。具体的にはHSP90あるいはORP150 (oxgen-regulated protein 150)を用いて、これらと抗原ペプチド複合体が樹状細胞内でどのように最終的にCTLに提示されるのかを決定する。また、HSP-ペプチド複合体の細胞表面受容体構造の決定を試みる。
 以上の研究成果にふまえGMPグレードのHSPを作製し臨床試験への導入に向けたプロセスに入る。
結果と考察
 本研究ではHSPを介した樹状細胞内での抗原ペプチド、抗原蛋白のクロスプリゼンテーションの機構を明らかにすることができた。すなわちヒトHsp90およびORP150分子シャペロンと癌抗原ペプチド複合体は、樹状細胞による癌抗原の交叉提示を促進し、効率よく強力なCTLを誘導することが可能である。現在バキュロウイルスのシステムを用いてGMPグレードのHsp90の作成を行っている。このHsp90を用いて癌抗原ペプチドとの複合体を作成し、世界に先がけてHSP90-癌ワクチンの臨床試験を行う。
結論
 以上のような研究成果はHLA class I拘束性のワクチンの飛躍的な抗原性の増強がHSPなどを利用して可能であることを示したものである。臨床への応用も可能となる基礎成果も示された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
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