医療機関における治療と仕事の両立支援の推進に資する研究

文献情報

文献番号
202023018A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における治療と仕事の両立支援の推進に資する研究
課題番号
20JA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
立石 清一郎(産業医科大学 保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 柴田 喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 白土 博樹(国立大学法人 北海道大学 大学院医学研究院)
  • 江口 尚(北里大学 医学部)
  • 田中 文啓(産業医科大学 医学部 第2外科)
  • 高橋 都(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がんサバイバーシップ支援部)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機関における両立支援は、医療職が「仕事のことがわからない」、などの理由から低調な状況が続いている。一主治医の意見書が「本人・主治医・事業者のコミュニケーションツール」であることから、効果的な意見書は事業者の視点も理解したうえで記載される必要がある。産業医が事業者に提案し実施された就業上の配慮についての事例検討では、事業者の義務である「安全配慮」、本人の申し出に基づく「合理的配慮」、事業者が配慮では解消されない就業能力低下を解決するための「要求業務量の変更」に分類された(立石、2018)。「労働者の症状・意向を踏まえつつ事業者にとって意思決定に資する意見書」を作成するためには、以下の3つの条件が必要である。①医療スタッフが仕事のことをイメージできるような簡便なツールが示されていること、②「症状」(医療者文脈での理解の整理)ごとに、多様な「配慮例」(事業者文脈での解決策の提示)が示され医療職が、事業者が発行する勤務情報提供書などを参考に、簡便に配慮事項を検討することに資するツールが示されること、③症状と配慮の関係性を明確にし、事業者に受け入れやすい意見書作成の研修会を実践すること。
研究方法
この3つの条件を解決するために、令和2年度の分担研究として、以下を行った。【研究1】映像コンテンツの作成【研究2】症状別配慮集【研究3】意見書を作成する医療面接の教育コンテンツ作成【研究4】合理的配慮の観点から症状ごとの就業配慮の整理【研究5】放射線・化学療法等に関する配慮事項の検討【研究6】手術を含む集学的療法の際の就業上の留意点の整理。
結果と考察
【デジタルコンテンツについて】
主な目的は、「主治医が職場のことをイメージできること」である。新型コロナウイルス感染症の流行により、種々の条件が重なり多くが撮影不可となり新たに撮影を許可いただける事業場のリクルートを行った。現在収集されているものが、化学工場、ライン作業、食品工場などであり、通常の事務作業や土木建築などの撮影実施を行いたい。また、後述する症状別配慮集に記載される危険作業や高負荷作業の多くは収集できる見通しが立ち意見書を作成するための映像資機材は十分収集できると考える。
【症状別配慮集について】
 医療の場面においては、患者と診察するときにプロブレムリストを作成し、そのリストごとに主訴、他覚的所見、評価、解決計画を検討する枠組み(SOAP)が定着している。医療職に意見書を作成する枠組みとしては、同様の枠組みを提示するほうが理解を得られやすく、患者の主訴や他覚的所見プロブレムを整理できるマトリクス表を整理した。横軸には症状や他覚的所見を並べ、意見書に必須である職場で配慮すべき作業内容を縦軸に並べ必要な配慮内容を記載するというシンプルな構成である。この方法論はシンプルで理解しやすいという半面、注意すべき点が多数存在することが必要である。
【研修について】
 そこで、令和3年度について遠隔研修会を企画することを前提として、両立支援診療ビデオと難病等に関する合理的配慮の漫画を作成した。両立支援診療ビデオは、緩和ケアのイーラーニングでの緩和ケア診療ビデオに着想を得て作成を行った。多くの医療職が、両立支援のイメージがわかないことから、両立支援をイメージできるような診察ビデオを作成し限定公開を行っている。評価については、目的通り、両立支援のイメージを持つことができるようになったという意見が得られている。現状では、大腸がんのケースを作成し、意見書を作成するまでの流れが理解できるようになっているが、テロップを省いた研修会で使用できるバージョンも作成したので、これをもとに研修会の構成を令和3年度に検討し実施を行う。
結論
 医療機関における両立支援を拡充するために、意見書の構造的に作成するための研究を行っている。職場が見えるデジタルコンテンツや研修プログラムについては新型コロナウイルスの流行により当初予定の変更が余儀なくされたが、意見書を作成するための十分な資機材は準備できた。今後は、遠隔での研修ができるような準備を行い実践していく。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202023018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,361,000円
(2)補助金確定額
6,167,899円
差引額 [(1)-(2)]
5,193,101円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 812,960円
人件費・謝金 0円
旅費 23,340円
その他 2,710,599円
間接経費 2,621,000円
合計 6,167,899円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、新規職員の採用ができなかったこと、ほとんどすべての旅程が実施できなくなったことが主因である。

公開日・更新日

公開日
2022-03-14
更新日
-