自動走行可能な自律制御運搬台車の機能安全の実証手順開発

文献情報

文献番号
202023012A
報告書区分
総括
研究課題名
自動走行可能な自律制御運搬台車の機能安全の実証手順開発
課題番号
19JA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 浩之(株式会社アラキ製作所 営業統括部 企画開発グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の背景として、高齢化・労働人口減少問題や更なる生産効率の向上を目的とした作業・物流の支援(省力化・省人化)のための自動化・自律化への必要性及びニーズが高まり、また様々な技術の急速な能力向上により協働ロボットをはじめとした人と機械の協調を前提とした機械・装置・システムの開発・導入が進むと見込まれる。また、平行して労働安全を目的とした機械安全実務を活用した機械設備の安全対策やその妥当性確認への取組み、国際規格に基づいた導入要点のまとめ等が推進されて来ました。(参考文献:厚生労働省HP掲載、機能安全活用テキスト)しかしながら、それらは固定された装置や機械構成が前提となっている事が多く、特に自動走行可能な自律制御機械に対しての、開発・導入に向けた要点や、リスクアセスメント事例、安全確保についての安全機能の要求水準を満たす具体的な指針は不足していると言えます。本研究では、Safety2.0の概念に基づき、リスクアセスメントを実践し保護方策を織り込んだ実証試験機にて自律制御時の各種データを収集し、それを元に機能安全の要求水準を満たす実証手順の開発を目的としています。
研究方法
令和元年度(初年度)では、初めに現在の国内外規格を、自律(AI)制御装置の導入を前提に精査(ハード・ソフト両面の安全機能の要求水準を確認)し、最新技術や環境、客先ニーズに照らし合わせてリスクアセスメントを実践。ここまでの作業を繰り返し試験装置の構想を検討。現在導入が進められている各メーカーの装置・システムには様々な開発が織り込まれているが、試験装置は最低限自律制御が可能な、LRF (Laser rangefinder)を使用したSLAM (Simultaneous Localization and Mapping)制御と、デプスカメラによる画像処理を使ったシステムを採用。安全機能については、身近な自動車産業の生産ラインに実装可能なレベルを目標とし、弊社工場内通路にて実証試験を行う事とした。令和2年度(本報告)に於いて実際に試験装置を製作し実証試験を開始した。初年度に行った作業も実証試験や装置の動作確認と並行して継続、随時リスク及び評価を見直した。収集データの内容については、専門家・有識者にアドバイスを頂きながら妥当性を都度確認しセンサの検出精度や自律制御(AI)の算出結果と人の認識の違いを、どう実証手順に織込むか協議して来ました。実証手順の入り口として、リスクアセスメントの実践事例集(簡単なデータベース)の提示を行い導入時の負担を減らしながら想定すべき様々な条件を解り易くした。続いて、リスクアセスメント結果を踏まえて、リスクの抽出及び規格対応の漏れを防ぐため単純な手法だがチェックシートを作成する準備を同時に進めた。(Fig.4,5 未だ製作中)最終年度では、これらを実際に運用し機能安全の要求水準の達成度、残留リスクについての理解度を調査する。実証試験は自律制御時の経路計画・障害物回避運動・停止の各動作のバラつきに着目して実施している。最終年度にて、収集データから実証試験の判断基準を検討する。
結果と考察
安全機能の実証手順開発には、先ずは適切なリスクアセスメントの実践が不可欠であると考えます。しかし、従来のリスクアセスメントでは専門家や経験豊富な人材の支援が無ければリスク低減の妥当性を検証する事は困難で、危険源の同定漏れや保護方策に対するリスク低減の評価が不適切になりがちと考えられました。前提条件や様々な情報をリスクアセスメント時点に準備する事で後の3ステップメソッドによる保護方策検討からの反復的なリスク低減プロセスを短縮出来たと共にリスクアセスメントを実践する者の能力差の影響を少なく出来たと考えられます。また、リスクアセスメント段階で評価に必要な測定ポイントをリストアップする事で装置の構想・設計段階でリスク低減方策の基準が明確になり安全機能の要求水準に対するバラつきや対策の漏れ・抜け防止に繋がると考えます。
結論
初年度にも同じ結論にしていますが、実際に実証試験を開始すると、尚更に事前の資料準備や前提条件の整理の重要性を感じました。後工程(我々の業界では社内の部署間からエンドユーザーまで含めて言います)へ必要な情報を展開する事で、適切なリスクアセスメントを実践するための様々な効果が得られます。また、規格・規定を確認する事で機能安全の要求水準が明確になり評価ポイントを絞り込む事が出来、妥当性の評価の正確性が向上する。評価の内容、結果についてのまとめは最終年度に実施しますが、特定の装置に限定し必要資料をセット化する事は有効な手段と考えます。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202023012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,250,000円
(2)補助金確定額
2,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,424,341円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 1,327,000円
合計 5,751,341円

備考

備考
研究計画書(新規申請)作成時(令和元年9月、三次公募対象)には「試験機製作」までが初年度での計画分でしたが、実際は研究開始時期及び計画の遅延や社会情勢により初年(2020年3月末)度内には計画していた物品の殆どが受入れる事が出来ませんでした。そのため、初年度実績報告時に計上出来ず、過剰分は一旦返納させて頂きました。増額分は主に初年度内に受入れ・検収が出来ず、実績報告にて計上出来なかった物品費になります。また、人件費・謝金・旅費についてはコロナ禍の影響も有り計画時の対面から遠隔に変更し実質経費は発生しませんでした。

公開日・更新日

公開日
2022-03-14
更新日
-