疾患関連創薬バイオマーカー探索研究

文献情報

文献番号
200809006A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患関連創薬バイオマーカー探索研究
課題番号
H20-バイオ・指定-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山西 弘一(独立行政法人 医薬基盤研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 康央(独立行政法人 医薬基盤研究所)
  • 中山 敬一(九州大学 生体防御医学研究所)
  • 平野 久(横浜市立大学大学院 国際総合科学研究科)
  • 山田 哲司(国立がんセンター研究所)
  • 寒川 賢治(国立循環器病センター研究所)
  • 南野 直人(国立循環器病センター研究所)
  • 高坂 新一(国立精神・神経センター 神経研究所)
  • 下田 智久(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
300,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際的な新薬開発競争に際して、シーズとなる疾患関連バイオマーカーの発見、知的財産権の確保は、今後のわが国の医薬品産業の発展に不可欠である。多くの疾患の原因は遺伝子の最終産物であるタンパク質の異常によって起こっているため、病気の診断や治療に有用なタンパク質バイオマーカーの開発は最重要課題である。本研究では、国民に有効で安全な新規医薬品を速やかに提供し医薬に貢献するという観点から、がん、生活習慣病、神経疾患等を対象とした疾患バイオマーカーの開発を目的とする。
研究方法
上記の目的のため以下の方法の開発およびその手法を用いた疾患バイオマーカー探索を行った。1.同位体標識法(iTRAQ法)、2.2DICAL法、3.リン酸化タンパク質解析技術、4.ファージ抗体ライブラリ技術
結果と考察
1.ヒト卵巣がん培養細胞から抽出したタンパク質を用いてiTRAQ法でプロテオーム解析を行った。質量分析装置(MS)は異なる原理の機器を4種類用いて行った。その結果、各機種で1500から1800種類のタンパク質を同定したが、すべての装置で共通して検出されるタンパク質は少なく、タンパク質の網羅的解析のためには複数種のMSを用いる必要があると考えられた。
2.膵臓がん患者血漿を用いて2DICAL法によるプロテオーム解析を行い、抗がん剤ゲムスタビンによる副作用マーカーの同定を行った。その結果、血中ハプトグロビンが血液毒性予測の有用なマーカーであることが示された。
3.極めて高い純度でリン酸化ペプチドを精製する方法を開発した。その結果、100マイクログラムのタンパク質から700種類以上のリン酸化ペプチドを同定できた。この手法を用いれば、疾患関連リン酸化タンパク質の同定が可能と考えられた。
4.独自に構築したファージ抗体ライブラリ技術を駆使することで、わずか数週間で特異抗体を作製することが可能となった。その手法により、二次元電気泳動を用いた乳癌組織のプロテオーム解析から同定されたタンパク質に対する抗体を作製し、組織マイクロアレイの免疫染色を行った結果、乳癌バイオマーカー候補タンパク質が同定された。この迅速抗体作製技術はバイオマーカー候補タンパク質の検証に有用であると考えられた。
結論
上記の複数の手法を用いることで新しい疾患バイオマーカータンパク質の発見が可能であることが考えられた。今後はこれらの手法を用いて病気の診断や治療に有用なタンパク質バイオマーカーの開発を目指す予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-