災害時等の産業保健体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202023005A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時等の産業保健体制の構築のための研究
課題番号
H30-労働-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
立石 清一郎(産業医科大学 保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
  • 久保 達彦(広島大学大学院医系科学研究科 公衆衛生学)
  • 岡崎 龍史(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 真船 浩介(産業医科大学 産業生態科学研究所 精神保健学研究室)
  • 吉川 悦子(高橋 悦子)(日本赤十字看護大学 看護学部)
  • 中森 知毅(労働者健康安全機構 横浜労災病院 救命救急センター 救急災害医療部)
  • 三田 直人(労働者健康安全機構 横浜労災病院 救命救急センター 救急災害医療部)
  • 鈴木 克典(産業医科大学 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの産業保健スタッフが災害事象に遭遇した経験はなく、体験したとしても繰り返し聞き対応をすることは極めてまれであるため、知識の集積と伝承を行うことが大変困難であるとされてきた。しかしながら、本研究は災害対応について実践された複数のケースを集積し経験者らの中にある暗黙知を形式知に変えていくものであり、疑似的な経験ができるようなコンテンツを多く準備することで産業保健スタッフが災害に対するイメージを持ちやすくなり企業のBCP策定に対して貢献することが可能になる。
さらに、自らが被災しながら地域住民のサポートをせざるを得ない自治体職員や医療職職員については特別な配慮が必要である可能性が高い。また、これらの機能不全が長引けば必要な手続きが遅れたり慢性疾患の管理がおろそかになったりすることで結果的に企業の負担が増大するため、産業保健ニーズを抽出し支援スキームをまとめることは、周辺の企業が本来業務に復帰することに資する。
研究方法
令和2年度の分担研究として、7つの研究を行った。すべての研究が昨年の研究に引き続きの発展的研究である。
結果と考察
【研究1】実効性のある自治体職員への災害産業保健のための方策:自治体職員向けの災害産業保健マニュアルを作成することができた。また、災害時の個人・組織の負担集中を見出すための質問紙を開発することができた。
【研究2】医療機関の外部支援モデルの策定:医療機関のスタッフは受援を負担に感じることが多いため必要な受援ニーズを収集するためのコーディネーターの先行派遣による2段階派遣の重要性について検討した。
【研究3】新興感染症に対する企業の意識調査:通常の災害に比較して医療的な情報が企業担当者に不足していることが明確になり、情報提供型の支援の重要性が示唆された。
【研究4】産業精神保健における災害時の支援技法と受援体制に関する文献的検討:労働者自身によるセルフチェックと自発的な相談を支援するためのリーフレット,産業保健スタッフ向けに支援技法の紹介資料を用意した。
【研究5】災害産業保健マニュアルの作成~災害産業保健ニーズの収集~:災害時に産業保健活動を実践するための事前チェックリストが開発された。
【研究6】産業保健スタッフに対するコンピテンシー調査:「状況に応じた実践力」、「組織調整力」、「産業保健専門職としての一貫性」のコンピテンシーカテゴリー(22項目)が整理された。天井効果のある4項目を加え26項目のコンピテンシー項目を一覧表が作成された。
【研究7】災害産業保健における教育講習会の検討:上記研究成果報告を踏まえ、災害産業保健ケースを用いたグループ討議での実践力向上の有効性が支持された。
結論
本研究班の最終的な目的は「災害産業保健分野の体系化」、「体系化に基づいた研修会の実施」「災害産業保健チームの構築」である。「災害産業保健分野の体系化」については上記研究により知識ベースの体系化をすることができた。「体系化に基づいた研修会の実施」は知識レベルの研修会およびケースを用いた研修会いずれも受講者からの高い評価と、一定の研修有効性が示唆された。「災害産業保健チームの構築」研修会参加メンバーのうち、26名が継続的な災害産業保健チームの一員として貢献できる枠組みの希望があった。研究班メンバー19名を加え、45名の災害産業保健派遣チームD-OHATディーオーハット(Disaster Occupational Health Assistant Team)が構成された。事務局は研究代表者の所属である産業医科大学両立支援科学が担当することとなった。また、3段階の派遣については、新型コロナウイルス感染症対策で急速に発達したウェブミーティングなどの手法で、面談などはオンラインで対応できるようになったことから、遠隔対応の方法もあると考えられる。災害時に被災地に入るのは容易ではなく、特に派遣メンバー候補のほとんどが企業の産業保健スタッフであることを考えると、現地に入ることを所属する会社が拒否する可能性もあることから、活動内容の幅を持たせたチームにすることで、より災害時に貢献できるメンバーが増えることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202023005B
報告書区分
総合
研究課題名
災害時等の産業保健体制の構築のための研究
課題番号
H30-労働-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
立石 清一郎(産業医科大学 保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
  • 久保 達彦(広島大学大学院医系科学研究科 公衆衛生学)
  • 岡崎 龍史(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 中森 知毅(労働者健康安全機構 横浜労災病院 救命救急センター 救急災害医療部)
  • 三田 直人(労働者健康安全機構 横浜労災病院 救命救急センター 救急災害医療部)
  • 鈴木 克典(産業医科大学 感染制御部)
  • 吉川 悦子(高橋 悦子)(日本赤十字看護大学 看護学部)
  • 真船 浩介(産業医科大学 産業生態科学研究所 精神保健学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模自然災害、局地的自然災害、テロリズム、工場爆発、犯罪など、その種類は無数にあり、危機対応に従事する労働者は、特定企業の労働者に留まる場合から、自治体職員、医療機関や多くの企業の労働者を巻き込んだ事態に至る場合がある。危機に対応する労働者の健康を確保するためには以下の要素が必要である
1.オールハザードモデル
2.マニュアル整備
3.人材育成
4.専門機関の整備
そこで、本研究では、
a. 諸外国の体制を参考に、日本の実情に合ったAll-hazardsモデルと産業保健専門職の位置づけを提言すること
b. 現在存在するマニュアルをすでに発生した事例をさらに検討することによって改訂するとともに、メンタルヘルス支援を強化すること。また、感染症のアウトブレイクを想定したマニュアルを開発すること
c. 災害発生時に機能する産業保健専門職の研修を強化して、全国に広げていく方法を検討すること
d. 危機において専門的な支援体制の有り方について検討し、提言を行うこと。その際、労働者健康安全機構などの既存の組織の活用した派遣の枠組みを前提とすること
を目的とする。



研究方法
上記課題を解決するために7つの研究を遂行した。
結果と考察
【研究1】実効性のある自治体職員への災害産業保健のための方策:自治体職員向けの災害産業保健マニュアルを作成することができた。また、災害時の個人・組織の負担集中を見出すための質問紙を開発することができた。また、災害産業保健の事前協定型提供方式の協定書ひな型を作成することができた。
【研究2】医療機関の外部支援モデルの策定:医療機関のスタッフは受援を負担に感じることが多いため必要な受援ニーズを収集するためのコーディネーターの先行派遣による2段階派遣の重要性について検討した。
【研究3】新興感染症に対する企業の意識調査:通常の災害に比較して医療的な情報が企業担当者に不足していることが明確になり、情報提供型の支援の重要性が示唆された。
【研究4】産業精神保健における災害時の支援技法と受援体制に関する文献的検討:労働者自身によるセルフチェックと自発的な相談を支援するためのリーフレット,産業保健スタッフ向けに支援技法の紹介資料を用意した。
【研究5】災害産業保健マニュアルの作成~災害産業保健ニーズの収集~:災害時に産業保健活動を実践するための事前チェックリストが開発された。
【研究6】産業保健スタッフに対するコンピテンシー調査:「状況に応じた実践力」、「組織調整力」、「産業保健専門職としての一貫性」のコンピテンシーカテゴリー(22項目)が整理された。天井効果のある4項目を加え26項目のコンピテンシー項目を一覧表が作成された。
【研究7】災害産業保健における教育講習会の検討:上記研究成果報告を踏まえ、災害産業保健ケースを用いたグループ討議での実践力向上の有効性が支持された。
結論
本研究班の最終的な目的は「災害産業保健分野の体系化」、「体系化に基づいた研修会の実施」「災害産業保健チームの構築」である。「災害産業保健分野の体系化」については上記研究により知識ベースの体系化をすることができた。「体系化に基づいた研修会の実施」は知識レベルの研修会およびケースを用いた研修会いずれも受講者からの高い評価と、一定の研修有効性が示唆された。「災害産業保健チームの構築」研修会参加メンバーのうち、26名が継続的な災害産業保健チームの一員として貢献できる枠組みの希望があった。研究班メンバー19名を加え、45名の災害産業保健派遣チームD-OHATディーオーハット(Disaster Occupational Health Assistant Team)が構成された。事務局は研究代表者の所属である産業医科大学両立支援科学が担当することとなった。また、3段階の派遣については、新型コロナウイルス感染症対策で急速に発達したウェブミーティングなどの手法で、面談などはオンラインで対応できるようになったことから、遠隔対応の方法もあると考えられる。災害時に被災地に入るのは容易ではなく、特に派遣メンバー候補のほとんどが企業の産業保健スタッフであることを考えると、現地に入ることを所属する会社が拒否する可能性もあることから、活動内容の幅を持たせたチームにすることで、より災害時に貢献できるメンバーが増えることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-03-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202023005C

収支報告書

文献番号
202023005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 382,435円
人件費・謝金 521,562円
旅費 99,423円
その他 1,693,968円
間接経費 1,150,000円
合計 3,847,388円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、事務職員の採用ができず、ほとんどの旅程がキャンセルとなった。

公開日・更新日

公開日
2022-03-14
更新日
-