トランスクリプトソーム解析による医薬品の副作用機構の解明と、その副作用感受性診断、及び創薬への応用

文献情報

文献番号
200809005A
報告書区分
総括
研究課題名
トランスクリプトソーム解析による医薬品の副作用機構の解明と、その副作用感受性診断、及び創薬への応用
課題番号
H20-バイオ・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 竜也(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 大塚 雅巳(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
34,734,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の副作用、特に副作用感受性に関する個人差が臨床現場で大きな問題になっている。問題は、その副作用の発症機構が充分に理解されていないため、新薬候補品の副作用、及び患者の副作用感受性を予測出来ない点である。そこで本研究で我々はトランスクリプトソーム解析を用いて医薬品の副作用発症機構を解明し、新薬候補品の副作用、及び副作用感受性に関する個人差を予測する方法を確立する。
研究方法
薬剤性間質性肺炎研究が遅れていたのは、その動物モデルが確立されていなかったためである。我々は、TNF-α(薬剤性間質性肺炎において重要な役割を果たしている)、及び低用量ブレオマイシン(高用量ブレオマイシン単独で、間質性肺炎症状が現れる)をあらかじめ投与したマウスに、レフルノミドやエタネルセプトを投与すると、間質性肺炎症状が現れることを見出し、薬剤性間質性肺炎モデルを確立したと考えている。
 そこで我々は、他の薬剤性間質性肺炎を起こす薬剤、及びその他の薬剤をこのモデルで検討し、このモデルが新薬候補品の間質性肺炎副作用を予測するシステムとして使用出来るかを検討する。
結果と考察
今年度我々は、我々が確立した薬剤性間質性肺炎に関する動物モデル(TNF-α、及び低用量ブレオマイシンを投与したマウスにさらに薬剤を投与し、間質性肺炎様症状が誘導されるかを調べる)において、薬剤性間質性肺炎を起こす種々の薬剤の効果を検討し、全ての薬剤が間質性肺炎様症状を起こすことを見出した。以上の結果は、このモデルが新薬候補品の間質性肺炎副作用を予測するシステム、及び間質性肺炎治療薬の評価システムとして有用であることを示している。
 一方我々はゲフィチニブなどが抗炎症タンパク質(SOD、Nrf2、HSP)の発現を強く抑えることを見出していた。そこで本年度我々は、これらタンパク質のノックアウトマウスにおける薬剤性間質性肺炎(上記のモデル)を調べ、これらのノックアウトマウスが薬剤性間質性肺炎を起こしやすいことを見出した。以上の結果から、ゲフィチニブなどはこれら抗炎症タンパク質を低下させることにより薬剤性間質性肺炎を起こしていることが考えられる。
 
結論
このように平成20年度の我々の研究により、これまでほとんど分かっていなかった薬剤性間質性肺炎誘導機構がかなり明らかになり、また我々の確立した動物モデルが有用であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-