農林水産業における災害の発生状況の特性に適合した労働災害防止対策の策定のための研究

文献情報

文献番号
202023004A
報告書区分
総括
研究課題名
農林水産業における災害の発生状況の特性に適合した労働災害防止対策の策定のための研究
課題番号
H30-労働-一般-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
横山 和仁(順天堂大学 医学部衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 垰田 和史(滋賀医科大学社会医学講座衛生学部門)
  • 久宗 周二(神奈川大学 工学部 経営工学科)
  • 山田 容三(愛媛大学大学院農学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2018年度からの第13次労働災害防止計画は、労働災害を減らし安心して健康に働ける職場の実現を掲げている。林業では、死亡災害を2022 年までに15%以上減少させると目標があるが、農業および水産業については定められていない。林業労働災害は減少傾向にあるが、伐木作業、高齢化、小規模事業林、非熟練労働者がリスクとなっている。水産業は、労働人口減少と高齢化と共に、非適切な生活・労働空間、船員法不順守、船体動揺や海中転落、機械への巻き込まれなどが指摘されている。農業では、特殊車両(トラクター等)、農薬、高作業負荷、高齢化等が問題となっている。今回は、農林水産業について、(1)法令にもとづく各種事業体の労働安全衛生体制(労働安全衛生法、船員法等)、(2)職業保健としての特性(自営を含む)、(3)行政組織間・産官学・地域連携の視点から、労災・健康障害の要因と対策を明らかにすることを目的とする。
研究方法
当該年度は、行政組織間・産官学連携を含む労災・健康障害予防策とモデル事業を提言するための検討を進めた。研究は対象となる第一次作業分野毎に検討をおこなった。すなわち農業法人(横山)、小規模農家(垰田)、漁業(久宗)、および林業(山田)の各領域である。
結果と考察
農業法人では、農作業従事者による自主改善活動モデル事業を行った。また、全国の労働安全衛生コンサルタントのうち農作業安全アドバイザーに対しインタビューを行い、農作業場における労働安全対策の実情や問題点に関するヒアリングを行った。その結果、本モデル事業のような労働安全衛生の自主改善活動は、農作業従事者の啓発に有用であり、継続化、システム化することで、現状に適した労働安全衛生教育として展開でき得る可能性が示唆された。小規模農家では、外国人研修生テキスト対応「外国人労働者を雇用される方のためのパンフレット解説 農作業事故防止ここがポイント」を、一般農業従事者向け研修や農業大学校での農作業安全授業で試用し、評価を受けるとともに、一般農業従事者向け農作業安全解説書の企画内容を検討した。その結果、概ね、農作業安全に関する基礎的教育に利用可能と判断できた。聞き取り意見を踏まえて、農業従事者向けの「農作業安全教本」の構想に着手した。今後はテキストを使っての教育・研修の実施が課題と考える。漁業では、陸上並みの安全衛生体制を目指す船員の健康確保に向けて、その実用化のために神戸マリナーズ厚生会病院と神奈川大学、船会社と社会実験を開始して、遠隔によるストレスチェック、産業医の長時間労働者に対する指導、遠隔による安全衛生委員会の実施を行っている。船社5社と実験を行い、ストレスチェックは合計で57名の船員が行い、3社で集団分析をした。2社で安全衛生委員会を行い、2隻で遠隔による船の巡視をおこない、映像と音声とも問題なく、船社と産業医両社とも高い評価を得た。特殊な条件下で推進が困難な船員労働安全衛生であるが、英知を集めて一歩ずつ向上している。林業では、林業向け自主改善活動WIFM(Work Improvement on Forest Management)の試行で得られた結果を基に改善例の再検討を行い、さらに最新の安全技術や安全装備類を新たに取り入れ、30項目の改善例に改良した。また、林業安全ゲームについては、修正版の試行を行った。その結果、林業経験年数によって会話数と会話の内容に変化が確認されるとともに、会話を促進し教育効果を高めるためにはゲームマスターが重要であり、熟練度の異なるプレーヤーが一緒にプレーすることが職場内の縦のコミュニケーションを高めるために効果的であることが明らかになった。
結論
第一次産業における多業種について、労働安全衛生を推進する事業としていくつかのモデル事業を試みた。業態毎に有用性が確認できたため、今後も継続的に実施するには関連省庁の関係者の連絡、各協同組合等の協力、安全衛生の向上が生産性の向上につながるという継続的な啓発をある程度人的資源、経営資源、物資の面から支援する必要があることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202023004B
報告書区分
総合
研究課題名
農林水産業における災害の発生状況の特性に適合した労働災害防止対策の策定のための研究
課題番号
H30-労働-一般-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
横山 和仁(順天堂大学 医学部衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 垰田 和史(滋賀医科大学社会医学講座衛生学部門)
  • 久宗 周二(神奈川大学 工学部 経営工学科)
  • 山田 容三(愛媛大学大学院農学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
農林水産業について、(1) 法令にもとづく各種事業体の労働安全衛生体制(労働安全衛生法、船員法等)、(2)
職業保健としての特性(自営を含む)、(3) 行政組織間・産官学・地域連携の視点から、労災・健康障害の要因と対策を明らかにすることを目的とした。
研究方法
初年度は、各種事業体および農協等の団体や官公庁報告の事例の収集を行い、第2年度は、事例の収集例からグッドプラクティス、バッドプラクティスを抽出するとともに、労働安全衛生を推進する事業としてモデル事業を試み、第3年度は、行政組織間・産官学連携を含む労災・健康障害予防策とモデル事業を提言するための検討を進めた。研究は対象となる第一次作業分野毎に検討をおこなった。すなわち農業法人(横山)、小規模農家(垰田)、漁業(久宗)、および林業(山田)の各領域である。
結果と考察
農業法人については、農協が蓄積してきた労働安全に関するノウハウが生かしきれていない可能性が考えられた。この辺りの仕組みや制度の有り様で新規農業法人においても、機材による農作業事故の減少が期待できると考えられる。また、中小規模事業体を対象とした従来型の労働安全衛生教育について、現場の就労者の「気づき」を促すような、より単純化された仕組み作りが必要と考えられた。農作業従事者による自主改善活動モデル事業と全国の農作業安全アドバイザーへのインタビューでは、本モデル事業のような労働安全衛生の自主改善活動は、農作業従事者の啓発に有用であり、継続化、システム化することで、現状に適した労働安全衛生教育として展開でき得る可能性が示唆された。
小規模農家では、チェックリストの活用や、ヒヤリハットに関する体験発表などの事例を収集した。参加者の農作業安全に関する意識の高さや発表能力によって、効果が変動する可能性が考えられた。農業の安全衛生に関する基礎教育テキストとして、『外国人労働者を雇用される方のためのパンフレット解説「農作業事故防止
ここがポイント」』を作成した。この内容は、外国人農業労働者の安全衛生研修で使用するテキストの内容と照合させており、テキストの分量は45分以内で通読できるものという要件で作成した。一般農業従事者向け研修や農業大学校での農作業安全授業で試用し、評価を受けた結果、概ね、農作業安全に関する基礎的教育に利用可能と判断できた。聞き取り意見を踏まえて、農業従事者向けの「農作業安全教本」の構想に着手した。今後はテキストを使っての教育・研修の実施が課題と考える。
漁業では、WIB方式船内安全衛生マネジメントシステムによる自主的活動の促進に沿って、責任体制の明確化(トップの責任)自主的活動の促進(ボトムアップ)が具現化できた例があった。今後もマネジメントシステムを普及することにより、労働災害の減少と労働環境の向上が図れると考える。WIB講習会を実施した地区と、一度も行っていない地区とで7年間の労働災害件数を比較したところ、複数回実施した地区の方が労働災害は減少傾向であった。自主改善活動は低コスト、短時間で効果が上がる方法であり、今後も未実施地区でも実施することにより、労働災害の減少に役立つと考えられた。陸上並みの安全衛生体制を目指す船員の健康確保に向けて、その実用化のために社会実験を開始して、遠隔によるストレスチェック、産業医の長時間労働者に対する指導、遠隔による安全衛生委員会の試行を行った。映像と音声とも問題なく、船社と産業医両社とも高い評価を得た。特殊な条件下で推進が困難な船員労働安全衛生であるが、英知を集めて一歩ずつ向上がはかられた。
林業については林業向け自主改善活動WIFD(Work Improvement on Forest
Development)の原案を作成し、現場で試用することによりブラッシュアップを図った。同時に森林安全ゲームの試行および改良も行った。試行で得られた結果を基に改善例の再検討を行い、さらに最新の安全技術や安全装備類を新たに取り入れ、30項目の改善例に改良した。また、林業安全ゲームについては、修正版の試行を行った。その結果、林業経験年数によって会話数と会話の内容に変化が確認されるとともに、会話を促進し教育効果を高めるためにはゲームマスターが重要であり、熟練度の異なるプレーヤーが一緒にプレイすることが職場内の縦のコミュニケーションを高めるために効果的であることが明らかになった。
結論
第一次産業における多業種について、労働安全衛生を推進する事業としていくつかのモデル事業の有用性が確認できた。安全衛生の向上が生産性の向上につながるという継続的な啓発が必要であると考えられた。今後も事業を継続するには関連省庁の関係者や各協同組合等の協力をふくめ、人的資源、経営資源、および物資の面から支援が必要があることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2022-03-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202023004C

収支報告書

文献番号
202023004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
2,777,000円
差引額 [(1)-(2)]
223,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 543,275円
人件費・謝金 893,283円
旅費 331,780円
その他 319,527円
間接経費 690,000円
合計 2,777,865円

備考

備考
自己資金使用のため

公開日・更新日

公開日
2022-03-14
更新日
-