抗不整脈薬の臨床評価方法に関する研究

文献情報

文献番号
199700450A
報告書区分
総括
研究課題名
抗不整脈薬の臨床評価方法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
早川 弘一(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 薬物療法等有用性向上推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床電気生理学的手法の進歩により、不整脈の診断法・治療法が進歩した今日では、抗不整脈薬の臨床評価法においても、その催不整脈作用や生命予後に対する影響などを明らかにすることが要求される。すなわち、実際の臨床的需要に適合した臨床試験が必要であり、1984年に示された「抗不整脈剤の臨床評価法に関するガイドライン」を今日の国際的医療レベルに対応したものに改訂することを目的とする。また、この改訂されたガイドラインに基づき施行されるであろう臨床試験の成績も国際的に通用するものにする。
研究方法
国内外の臨床試験評価法、特にICHに対応して作成されたものを参考とし、臨床試験の段階別に検討し、合理的な改訂ガイドラインを作成、報告する。以下の研究協力者の協力を仰ぎ個別の作業をすすめるとともに全体会議を開催し合意をはかる方式により改訂作業を行った。主任研究者の早川弘一(日本医科大学)はガイドライン原案作成に参加し研究の統括を行う。また、以下の8名が研究協力者として参加した。研究協力者とその役割分担は以下のごとくである。飯沼宏之(心臓血管研究所)、松尾博司(埼玉医科大学)、小川聡(慶応義塾大学)は不整脈の実験的、臨床的評価法の原案作成を担当。宮原英夫(北里大学)は統計解析の立場から原案作成に参加。また、先のガイドライン作成時の主任研究者であった春見建一(昭和大学)と杉本恒明(関東中央病院)は再審査、再評価、井上博(富山医科薬科大学)は臨床試験実施上の問題を担当し、新博次(日本医科大学)は主任研究者早川弘一の補佐の役割で研究協力者として参加した。参考とした資料は1.新医薬品の臨床評価に関する一般指針(平成4年)、2.抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン(平成3年)、3.致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間(平成7年)、4.guidelines for the clinical evaluation of Anti-arrhythmic Drugs(FDA1978年)、5.CPMP:NOTE FOR GUIDANCE ON ANTIARRHYTHMICS(EU1966年)、6.ICH4:General considerations for clinical trials(1997年)、7.抗不整脈剤の臨床試験に関するFDA指針について(薬理と治療1980年)、8.アメリカ製薬工業協会臨床評価指針(薬理と治療1977年)、9.ICH4: Timing of non-clinical safety studies for the conduct of human clinical trials for pharmaceuticals(1997年)である。
結果と考察
平成9年度の研究として3回の全体会議を開催し、ガイドライン改訂の基本的考え方を討議した。その結果、ICHの合意をふまえ海外のガイドライン、国内の他領域のガイドラインを参考とし、新ガイドラインの骨子を組み立てることが合意された。また、各研究協力者に専門的立場から助言をいただく方式でまとめる方針を決定した。具体的には第I相試験は早川弘一、新博次、第II相試験、第III相試験では、薬効の評価で重要となる電気生理学的検査について飯沼宏之、小川聡、井上博、ホルター心電図について早川弘一、新博次、心血行動態評価法は松尾博司、第IV相試験について杉本恒明、春見建一、統計に関しては宮原英夫が中心となり原案を作成し、順次、全体会議で検討が開始された。その結果、わが国で従来行われている有用度判定は非客観的であり、客観的指標による評価を行う。適応症については、基本的には従来と同様、頻脈性不整脈(心室性ないし上室性)とするが、個別の不整脈に対する適応症も認める。また再審査(IV相)ではmortalityも評価することなどの基本方針を決定した。また、現在までに入手可能であった海外のガイドラインを検討した結果、CPMP"NOTE FOR GUIDANCE ON ANTIARRHYTHMICS" (The European Agency for the Evaluation of Medical Products
, Human Medicine Evaluation Unit)として1995年に承認されたガイドラインを参考とすることが合意された。平成9年度として、臨床評価法の中核となる第II相試験の原案作成の作業が終了した。
不整脈の臨床電気生理学的診断法・治療法の進歩により、抗不整脈薬の薬効評価法も対応可能なものとしなければならない。また、ICHの合意にみるごとく評価の客観性を高めるとともに、長期予後への影響を評価する臨床試験を視野に入れた改訂が必要であることが認識された。本年度に引き続き『抗不整脈剤の臨床評価法に関するガイドライン』を今日の国際的医療レベルに対応したものに改訂し、治験成績も国際的に通用しうるものとすることを目標とし、改訂作業を継続することが必要である。
結論
ガイドライン改訂の必要性は高く、作業継続により早期の改訂が望まれる。

公開日・更新日

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