薬剤性腎障害の非侵襲性マーカーの探索と臨床的重要性の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200809003A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤性腎障害の非侵襲性マーカーの探索と臨床的重要性の解明に関する研究
課題番号
H20-バイオ・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
増田 智先(京都大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 深津 敦司(京都大学医学部附属病院 腎臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
51,523,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎障害を誘発・増悪させる潜在的要因を持つ患者への様々な薬物の使用には、腎機能(尿細管薬物輸送能)を正確に把握した上で患者個々に応じた薬物投与設計に加え、薬剤性腎障害の速やかな発見と適切な対応が望まれている。本研究では、ヒト尿検体、腎生検組織を用いたプロテオミクス、トランスクリプトーム、病理解析を並行して、より迅速かつ的確な薬剤性腎障害の非侵襲性マーカー探索とその臨床的重要性を解明するという計画を立案した。
研究方法
(1)ラット薬剤性急性腎不全(AKI)モデル尿を用いたプロテオーム、トランスクリプトーム及びメタボローム解析を進め、尿中バイオマーカー候補分子の探索を行った。(2)慢性腎不全モデルラット腎より単離した近位尿細管を用いたトランスクリプトーム解析を行い、薬物を使用しない場合における腎不全進展のバイオマーカー探索とそれを標的とした病変進展の治療効果について検討を進めた。(3)ヒト腎生検組織を用いた尿中プロテオーム解析並びにトランスクリプトーム解析を行い、微量組織検体を用いた解析系の確立を行った。
結果と考察
ラット単離近位尿細管を用いたマイクロアレイ解析によって、慢性腎不全進展に関連する重要遺伝子の同定に成功した。特に、末期腎不全期においては、mTOR阻害薬が近位尿細管の保護効果を有することを見いだした。バンコマイシン及びシスプラチン腎症モデルラット尿を用いたメタボローム解析及びプロテオーム解析から、個々の薬物による腎症を反映しうる分子の特定を行い、低分子化合物についてはLC-MS/MS法による3化合物の同時測定系を確立した。さらに、ヒト腎生検組織を用いたマイクロアレイ解析系の確立を行うと同時に、ヒト尿検体を用いた網羅的なELISA系の実施によって、一部炎症性タンパク質の尿中への漏出が近位尿細管上皮細胞の障害と対応すること、このタンパク質は軽度シスプラチン腎症モデルラットを用いたマイクロアレイ解析でも発現亢進することが見いだされ、新しい尿中バイオマーカーとして期待されることが強く示唆された。
結論
当初の計画を順調に達成することができ、次年度以降の継続にあたり研究計画の変更は不要であると結論するに至った。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-