文献情報
文献番号
202022052A
報告書区分
総括
研究課題名
身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20IA1013
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 然太朗(山梨大学 大学院総合研究部 医学域 基礎医学系 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
- 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
- 橋本 有生(早稲田大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は令和元年に「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(以下ガイドライン)」を発出して1年が経過した時点での身寄りがない人への対応の実態、ガイドライン活用状況や活用状況を踏まえた改善を検討することを目的とした。
研究方法
アンケート調査は、医療機関4000、自治体500(配布枚数1500)、社会福祉協議会800、日本介護支援専門員協会46支部へ質問票を郵送し回収した。日本相談支援専門員協会員へはメールでアンケートを送付し回収した。ヒアリング調査は、地域医療支援病院の医療ソーシャルワーカー2名、自治体の成年後見利用促進・高齢福祉担当者1名、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業専門員1名に実施した。加えて、アンケート調査で得られた困難事例を類似性に基づき集約した。困難事例の代表的なストーリーラインを作成し、「ガイドライン」では対応できない課題を抽出した。
(倫理面的配慮) 調査は山梨大学医学部倫理委員会の承認(2281)を得た。
(倫理面的配慮) 調査は山梨大学医学部倫理委員会の承認(2281)を得た。
結果と考察
アンケート調査の結果、身寄りのない人の入院は地域によって偏在していており、身寄りがない人の入院や、相談が多いのは三大都市圏であった。身寄りがない人の入院の際に生じる困りごとについて、自治体は親族調査や制度申請に関する役割、社会福祉協議会が金銭管理や入院費の支払いに関する役割、病院は医療に係る意思決定に関する役割を担うという、ある程度の役割分担がなされていた。「ガイドライン」は各関係機関で活用されている一方で、「ガイドライン」が広く周知されていない現状も明らかとなった。今後、身寄りがない人へ必要な医療が提供できるようにするために「医療機関や施設等への啓発」が望まれる。「ガイドライン」が発出されても、周知が不十分であり、「ガイドライン」では対応できないことも多くあるため、対応する機関や人によって身寄りのない人への対応が異なる現状がうかがえる。今後、「ガイドライン」をさらに周知するとともに、「ガイドライン」を部分的に補足・修正をして、身寄りがない人への対応を、ある程度標準化することが望まれていた。加えて、親族やキーパーソン頼みの現在の医療の体制から、本人だけで医療を受けることが出来る体制へ変えていくことも今後の要望として抽出された。
ヒアリング調査の結果、「身寄りがない人」の家族関係の整理と対応方法、患者の預金をおろす等の代理行為や金融機関との連携方法、親族調査の際の個人情報の取り扱い方、身寄りがない人の入院や医療の対応についての役割分担の明確化、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及啓発が「ガイドライン」を補足する事項として抽出された。
アンケート調査で得られた困難事例から「ガイドライン」では対応できない課題を分析した。困難事例を分析した結果、「身寄りのない人」の家族関係や、何らかの理由で制度やサービスが利用できない時の代理行為の法的解釈や、患者情報がない中の医療の倫理的な判断方法が、「ガイドライン」では対応できない課題として抽出された。
ヒアリング調査の結果、「身寄りがない人」の家族関係の整理と対応方法、患者の預金をおろす等の代理行為や金融機関との連携方法、親族調査の際の個人情報の取り扱い方、身寄りがない人の入院や医療の対応についての役割分担の明確化、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及啓発が「ガイドライン」を補足する事項として抽出された。
アンケート調査で得られた困難事例から「ガイドライン」では対応できない課題を分析した。困難事例を分析した結果、「身寄りのない人」の家族関係や、何らかの理由で制度やサービスが利用できない時の代理行為の法的解釈や、患者情報がない中の医療の倫理的な判断方法が、「ガイドライン」では対応できない課題として抽出された。
結論
身寄りのない人の入院は地域によって偏在しており、三大都市圏での事例が多かった。身寄りのない人の入院に関する病院、自治体、社会福祉協議会の役割分担はある程度なされていた。「ガイドライン」は各関係機関で活用されている一方で、「ガイドライン」が広く周知されていない現状も明らかとなった。
「ガイドライン」を補足する事項としては、「身寄りがない人」の家族関係の整理と対応方法、患者の預金をおろす等の代理行為や金融機関との連携方法、身寄りがない人の入院や医療の対応についての役割分担の明確化、ACPの普及啓発が抽出された。
今後の課題は、「身寄りのない人」の家族関係の法的解釈、何らかの理由で制度やサービスが利用できない時の代理行為の法的解釈、患者情報がない中の医療の倫理的な判断方法、親族調査の際の個人情報の取り扱い方等があった。
今後、「ガイドライン」をさらに周知するとともに、「ガイドライン」を部分的に補足・修正をして、身寄りがない人への対応をある程度標準化することが望まれていた。
親族の存在に関わらず、誰もが「身寄りのない人」になる可能性があるため、「身寄りのない人」に限定した医療の体制づくりに留まらず、長期的には、本人だけで医療を受けることができる体制づくりが必要である。
「ガイドライン」を補足する事項としては、「身寄りがない人」の家族関係の整理と対応方法、患者の預金をおろす等の代理行為や金融機関との連携方法、身寄りがない人の入院や医療の対応についての役割分担の明確化、ACPの普及啓発が抽出された。
今後の課題は、「身寄りのない人」の家族関係の法的解釈、何らかの理由で制度やサービスが利用できない時の代理行為の法的解釈、患者情報がない中の医療の倫理的な判断方法、親族調査の際の個人情報の取り扱い方等があった。
今後、「ガイドライン」をさらに周知するとともに、「ガイドライン」を部分的に補足・修正をして、身寄りがない人への対応をある程度標準化することが望まれていた。
親族の存在に関わらず、誰もが「身寄りのない人」になる可能性があるため、「身寄りのない人」に限定した医療の体制づくりに留まらず、長期的には、本人だけで医療を受けることができる体制づくりが必要である。
公開日・更新日
公開日
2025-05-23
更新日
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