文献情報
文献番号
202022047A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代創薬技術革新のための研究開発基盤整備を目的とした調査研究
課題番号
20IA2009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
坂巻 弘之(神奈川県立保健福祉大学 大学院ヘルスイノベーション研究科)
研究分担者(所属機関)
- 豊島 聡(武蔵野大学 薬学部・大学院薬科学研究科 レギュラトリーサイエンス研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,704,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年の医薬品開発は、抗体医薬に代表される遺伝子組み換えバイオ医薬品から、再生医療等製品に加え、核酸医薬品、ペプチド医薬品など、多様な治療手段(モダリティ)開発の検討が求められている。そこで、新たなモダリティ開発に関わる開発ならびに市場状況について公表資料をもとに現状を整理した。一方、新たに開発される再生医療等製品については、高額となるものも発売されることが予想されている。限られた医療財政の効率化のためには、高額なバイオ医薬のバイオシミラー(BS)の使用促進も重要である。BS使用促進においては、BS使用の現状や、BSに関わる医療関係者や患者の理解など現状を把握し、問題・課題を明らかにすることが重要である。そこでBSに関する市場状況等を整理した上で、医療関係者として薬局薬剤師ならびに薬局来局患者を対象にアンケートを行い、BSに関する認知状況等を把握するとともに、BS普及における課題を検討した。
研究方法
研究では、まず、モダリティ別の市場動向ならびにCMO(受託製造組織Contract Manufacturing Organization)等の動向等について公表資料をもとに考察した。BS普及に関するこれまでの取り組みについて、BS承認状況および売上データ、NDBオープンデータ等をもとにBS普及に関わる課題を考察した。BSに関するアンケート調査は、日本薬剤師会会員薬剤師が勤務する薬局の管理薬剤師および日本保険薬局協会会員企業の薬局店舗の管理薬剤師を対象としたwebアンケートおよびクオール株式会社の店舗薬局に来局した患者を対象としたwebアンケート調査を実施した。
結果と考察
モダリティ別の市場状況については、抗体医薬品のシェアが高まり、次いで、再生医療等製品、核酸医薬品が新たな市場を形成しつつあること、従来の低分子医薬品から、新たなモダリティに関わるCMOが登場しつつあることが明らかとなった。BSについては、2021年3月末までには15成分34銘柄が承認さており、BS全体の市場規模、使用件数は大きく増加しているが、BSの先行品に対する使用割合は、品目によるばらつきが大きく、診療報酬との関係もあると推察された。薬局薬剤師を対象とした調査では、2,887件の回答が得られ、回答薬剤師の所属する薬局の約7割がBSを含む処方せんを受け付けているが、BSに対する理解は必ずしも十分とは言えず、今後、薬局薬剤師を対象としたBSに関わる研修プログラム策定が必要と考えた。患者を対象とした調査では、1,005件の回答が得られ、BSの認知は1割程度であり、今後、患者ならびに一般生活者を対象とした啓発が重要と考えられた。
結論
抗体医薬品に加え、再生医療等製品、核酸医薬品が新たな市場を形成しつつあり、CMOの業態も多様化している中で、新しいモダリティに合わせた人材育成、イノベーション評価の仕組みなどの産業政策が必要である。BSの上市が進む中で、在宅自己注射が可能な製剤の上市も続いており、薬局薬剤師がBS調剤に関わることも増えることが予想される。その一方で、薬局薬剤師のBSに対する知識は、必ずしも十分とは言えず、薬局薬剤師を対象とした研修プログラム策定が必要である。同様に、患者においても、BSへの認知は高くなく、患者ならびに一般生活者を対象とした啓発が重要である。
公開日・更新日
公開日
2023-05-01
更新日
-