分子シャペロン誘導剤の認知症治療への応用の研究

文献情報

文献番号
200808021A
報告書区分
総括
研究課題名
分子シャペロン誘導剤の認知症治療への応用の研究
課題番号
H20-政策創薬・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田平 武(国立長寿医療センター 研究所(H20.4.1-H20.12.31)、順天堂大学大学院認知症診断・予防・治療学講座(H21.1.1-H21.3.31))
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 喬(大阪大学大学院医学系研究科精神医学)
  • 今泉 和則(宮崎大学医学部解剖学講座)
  • 原 英彰(岐阜薬科大学生体機能解析学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性による認知症の共通したメカニズムとして、アンフォールディング異常蛋白の蓄積が挙げられる。アンフォールディング蛋白の蓄積を抑止する反応として小胞体(ER)ストレス反応があるが、そのうち分子シャペロン誘導は蛋白のフォールディングを是正して、異常蛋白の蓄積を止める。本研究はこのシャペロン誘導剤を開発し治療に応用する試みである。
研究方法
レポーターアッセイを用いてコンパウンドライブラリーからスクリーニングし、分子シャペロンBiPの誘導剤を得たので、BiP inducer X(BIX)と命名した。BIXのBiP 誘導特異性をRT-PCRなどで検討した。BIXのin vitroにおける薬効メカニズム解析は、レポーターアッセイ系やERストレス分子のノックアウトマウス由来細胞(MEF)を用い、薬効判定はERストレスを負荷した神経芽細胞腫を用いた。脳梗塞モデル動物として、中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)を用い、BIXを脳室内投与し、脳梗塞に対する効果を調べた。
結果と考察
BIXはBiPと若干のGRP94やcalreticulinなどのシャペロンのみを誘導し、他のERストレス分子を誘導せず、治療薬として応用可能と考えられた。BIXのBiP誘導を起こす作用点として、ATF6系路とBiPのプロモーター領域にあるERストレスエレメント(ERSE)である事が示された。神経芽細胞腫に対するBIXの投与は、tunicamycinによるERストレスを軽減し、アポトーシスを抑止することが示された。MCAOモデルでは、BIXは神経症状の軽減、脳梗塞域の面積の減少及び脳浮腫の軽減をもたらし、その効果は梗塞の周辺領域penumbraに認められた。このようにBIXは脳梗塞その他のERストレスを緩和し病変を軽減する作用があり応用が期待されるが、現時点では脳室内投与が必要であり、静脈投与ないし経口投与できる策剤への改変が必要である。
結論
分子シャペロン誘導剤BIXは、分子シャペロンBiPを特異的に誘導し、ERストレスによるアポトーシスをin vitroおよびin vivoで抑止することが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
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