医療安全に寄与する患者参加の推進に資する研究

文献情報

文献番号
202022046A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に寄与する患者参加の推進に資する研究
課題番号
20IA1009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
永井 庸次(公益社団法人全日本病院協会)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 藤田 茂(東邦大学 医学部 医学科 社会医学講座)
  • 西澤 寛俊(公益社団法人全日本病院協会)
  • 飯田 修平(公益社団法人 全日本病院協会)
  • 小谷野 圭子(公益財団法人東京都医療保健協会 練馬総合病院 質保証室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療安全における患者参加の概念整理を行うとともに、国内外の医療安全の向上を意図した患者参加活動の実態を把握し、患者参加を効果的に推進する方法を明らかにすることを目的とした。
研究方法
令和2年度はCOVID-19の感染拡大と政府の緊急事態宣言の発出により、研究活動の開始が遅れたほか、一部の調査を中止・延期するなど、研究計画の大幅な見直しが求められた。調査を中止した分は、他の調査の充実により補うことにした。
病院の患者相談窓口の担当者等を対象にしたインタビュー調査、センターの担当者を対象にしたインタビュー調査、全国の病院を対象にしたアンケート調査、患者参加に関する文献調査を実施し、その他として、患者団体を対象にしたインタビュー調査のインタビュー先の選定を進めた。また文献調査により、関連するシステマティックレビューを抽出し、アンケート調査の項目作成に活用した。
結果と考察
(1)病院の患者相談窓口の担当者等を対象にしたインタビュー調査
①患者参加の定義
「患者参加」を明確に定義している病院は東邦大学医療センター大森病院のみであった。入院患者向けの冊子(安全な医療のためのお願い)に、「患者参加の医療安全とは、患者さんの名前の確認や治療部位の確認、薬の投与などの際の確認段階で、私たちの思い込みや勘違いが原因となる間違いが発生することがあり得ますので、これらの確認の際に患者さんにも参加いただいて、発生する間違いをなくすようにご協力いただくことです」と記載されていた。
②Shared Decision Making(SDM)
SDM への関心はあり、検討グループを起ち上げたり、研修会の話題として取り上げたりしている。しかし、明確に実践方法を提示し、教育・訓練をしている病院は認められなかった。
SDMは正解のない医療に適用されるものであり、議論の余地のないような医療に適用する必要はないと考えるとの意見も聞かれた。
(2)センターの担当者を対象にしたインタビュー調査
① 体 制
患者等の苦情・相談を受ける担当者は、非常勤の看護師が多かった。いずれの都県も、1 日当たり2~3 名が勤務し、相談に当たっていた。多くの担当者は、医療安全支援センター総合支援事業により開催されている研修会に参加もしくは参加を予定していた。
医療対話推進者養成研修に参加した担当者はいなかった。
(3)全国の病院を対象にしたアンケート調査
有効回答率は16%(1,302/8,294)であった。全体の約7割、300床以上の急性期病院に限定すると約9割に、3日間の医療対話推進者養成研修を受講した職員が在籍していた。医療対話推進者の配置効果として、苦情等に対応する現場職員の負担が減った(33%)とする意見が最も多かった。
患者相談窓口は、病院の規模・機能に関わらず、兼任の看護師や医療ソーシャルワーカーを配置する病院が多かった。500床以上の急性期病院は専任の看護師を配置する傾向が見られたが、他は専任者を配置せず、兼任者を中心に配置していた。
回答者の約4割が医療安全支援センターの存在を認知していなかった。400床以上の急性期病院の約半数は、過去1年以内にセンターから1件以上の情報提供を受けた経験があった。しかし、全体では、約8割が情報提供を受けた経験が無いと回答した。
患者参加の概念や用語の意味を明示的に定めている病院は全体の14%であったが、経営理念・目標等に患者参加の推進を位置付けている病院は34%であった。患者の意向や価値観を意思決定に反映させる取り組みとして、患者等からDNARを取得する取り組みは66%、ACPは40%、SDMは29%の病院が実施していた。患者・家族のヘルス・リテラシーを向上させる取り組みとして、市民公開講座や疾病に関する勉強会、教材・パンフレットの提供、患者用パスの提供等は、いずれも約4割の病院が実施していた。患者同士または患者家族同士のピアサポートは約2割の病院が実施しており、その多くはがん患者を対象としたものであった。患者の声を病院の改善に反映させる取り組みとして、患者相談窓口・ご意見箱・患者満足度調査等を実施する病院は8割を超えたが、地域住民を経営層や各種委員会等に参加させている病院は4%であった。患者が主体的に医療安全管理活動に参加する取り組みとして、患者にフルネームを名乗ってもらう取り組みは72%、確認行為への患者の参加は41%、患者または家族による医療事故やヒヤリハットの報告システムは13%の病院が実施していた。
結論
病院の患者相談窓口の体制や活動と、病院の患者参加推進活動、および、病院とセンターの連携の実態等を明らかにした。今後は、得られた情報をさらに解析し、患者参加の定義や患者参加推進活動の要素等について明らかにする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-10-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202022046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
10,922,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,078,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,925,510円
人件費・謝金 3,736,512円
旅費 675,660円
その他 4,585,137円
間接経費 0円
合計 10,922,819円

備考

備考
自己資金 819円

公開日・更新日

公開日
2023-03-09
更新日
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