血小板の高効率試験管内生産に向けた基盤技術の確立

文献情報

文献番号
200808020A
報告書区分
総括
研究課題名
血小板の高効率試験管内生産に向けた基盤技術の確立
課題番号
H20-政策創薬・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高木 智(国立国際医療センター(研究所) 地域保健医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 江藤 浩之(東京大学医科学研究所幹細胞研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、各種造血系疾患の治療に用いられる血小板製剤の安定な供給を目指し、臍帯血幹細胞やES細胞などの未熟な細胞から試験管内での血小板生成を目指すものである。造血幹細胞やES細胞からの巨核球系細胞の誘導効率や巨核球系細胞の増殖能はさほど高くなく、成熟血小板の十分な産生系の確立には至っていない。巨核球系細胞群や造血幹細胞の新しい制御系として注目されるLnk/SH2B3依存性制御系やその発現をコントロールすることで、造血前駆細胞から巨核球への高効率な分化、増殖誘導を達成し、高効率な試験管内での血小板産生法確立を目指す。
研究方法
マウスの実験結果から、SH2ドメインのミスセンス変異にPHドメインの欠失とC末端領域の欠失を組み合わせることにより、効率の良いドミナントネガティブ変異体として機能し、造血幹細胞の生着能増強に有効であることを示している。これらの知見を基盤として、ヒトLnk/SH2B3変異体を作製する。発現を抑制するsiRNAを作製する。これらをヒト臍帯血造血幹細胞に導入し、巨核球分化誘導や血小板産生に対する効果を確認する。マウスES細胞から血小板を誘導する系を用いて効果を検討する。
結果と考察
ヒトLnk/SH2B3変異体を作製した。細胞株で抑制効果の高かったsiRNAを用い、ヒト臍帯血由来造血幹細胞のLnk/SH2B3 mRNA量をコントロール群の約20%にまで低下させることができた。それらの効果について臍帯血幹細胞やマウスES細胞を用いた培養系で検討を開始した。フィブロネクチン、VCAM、MAdCAM等の上で巨核球の培養を行い、血小板産生への影響を解析した。生成された血小板について接着や凝集等の機能を検討し、培養で生成した血小板活性を保つ基盤となる知見を得た。

結論
本年度は、巨核球前駆細胞の効率的な増幅に役立つ可能性のあるLnk/SH2B3発現抑制及び機能阻害分子の作成、血小板放出の制御機構と細胞外基質との関連、ES細胞から生成された血小板機能の検討及び血小板の機能維持に有用な知見の獲得に成果があった。今後は、ヒトLnk/SH2B3の発現や機能の阻害による造血細胞の骨髄への遊走・生着の変化の観察や巨核球および血小板への分化誘導系への検討を行い、造血前駆細胞・造血幹細胞における増殖分化制御機構を明らかにしていくとともに血小板産生技術の改変へ展開を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
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