病院薬剤師へのタスク・シフティングの実態と効果、推進方策に関する研究

文献情報

文献番号
202022044A
報告書区分
総括
研究課題名
病院薬剤師へのタスク・シフティングの実態と効果、推進方策に関する研究
課題番号
20IA1008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
外山 聡(新潟大学 医歯学総合病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 眞野 成康(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
働き方改革における医師の業務負担軽減策の1つとして、病院薬剤師へのタスク・シフティングの重要性が指摘されている。厚生労働科学研究「病院における薬剤師の働き方の実態を踏まえた生産性の向上と薬剤師業務のあり方に関する研究」(研究代表者:武田泰生)によると、病院薬剤師の病棟業務・対人業務の比率は、依然、調剤業務よりも小さい。このため、病院薬剤師へのタスク・シフティングは、薬剤師が確保されている一部の施設で行われているに過ぎないと考えられる。また、医師から薬剤師へ薬剤関連業務をシフトすることで、医師の業務負担軽減のみならず、医薬品適正使用や医療安全の推進の効果が期待される。しかし、病院薬剤師へのタスク・シフティングに関しては、ごく少数の報告が散見されるのみで、効果が明確にされていない。
このため、令和 2 年度においては、病院薬剤師へのタスク・シフティングに関するパイロット調査を行なった。これより、病院薬剤師へのタスク・シフティングがどの程度の施設で実施されているか、さらに、医師から薬剤師への業務移管に伴い、医師や薬剤師の業務時間がどの程度変化したかを把握することを目的に、研究を実施した。
研究方法
2020 年 11 月 1 日現在の全国の病院(ただし、新型コロナウイルス感染症対応のために臨時に設置された病院を除く) 8,252 施設を対象に、調査票形式のパイロット調査を実施した。
調査項目は、「 I. 施設の概要」「 II 医療従事者の勤務環境の改善、タスク・シフティングの体制・制度」「 III. 薬剤部門の人員配置・充足状況と業務」「 IV. 病院薬剤師への他職種からのタスク・シフティング」から成る。調査項目 I 、 II は、回答施設の概要や体制を求めるものであり、項目 I は、回答率の向上と調査費用の適正化を図るために、令和 2 年度厚生労働行政推進調査事業費補助金タスク・シフティング推進事業「タスクシフティング・シェアリングの取り組みに関する調査」と合同で実施した。項目IV では、病院薬剤師へのタスク・シフティングの取り組みについて、5事例まで回答を求めた。
結果と考察
調査対象とした8,252施設中、1,989施設から回答が得られた。うち1,056施設が他職種から病院薬剤師へのタスク・シフティングを行っており、述べ2,306のタスクシフトの事例が収集できた。
薬剤師へのタスク・シフティングで業務移管をする職種は、医師のみが全事例の約半数、看護師のみが入院で2割程度、外来では5%程度、残りは複数の職種であった。タスク・シフティングの取り組みにおける薬剤師の業務内容は、「処方提案・薬物治療管理」(処方関連)と「調剤、医薬品の調製」(薬剤調製)を合わせると、入院では7割、外来では4割であった。
タスク・シフティング1事例当たりの薬剤師の業務時間は、第1四分位数と第3四分位数の比で10倍程度、最小値と最大値では1,000倍もの大きな違いかあった。1週間の業務時間の中央値は、DPC病院で5~10時間程度、療養型病院や精神科病院で1.5時間程度、一般病院等他の病院では2時間程度であった。
タスク・シフティングにより、薬剤師の業務時間は増加し、他職種の業務時間が減少することが期待できるが、業務時間の薬剤師の増、他職種の減を合算した総時間が減少した取り組みは全体の4割弱、逆に総時間が増加した事例も3割程度は存在した。
100床当たりの薬剤師数を、タスク・シフティングを実施していない病院と、複数の取り組みを実施している病院で、病院の種別毎に比較すると、一般病院、精神科病院では、複数実施の施設の薬剤師数が多かった。一方、DPCの大学病院本院群、DPC特定病院群の施設では、タスク・シフティング実施状況が異なっても、100床当たりの薬剤師数に違いはなかった。すなわち、薬剤師の配置以外の、タスク・シフティングの推進に係る施設特性の存在が示唆された。令和3年度の研究でこの施設特性を明らかにし、病院薬剤師へのタスク・シフティングの推進に関する政策形成につなげたい。
結論
研究目的で「病院薬剤師へのタスク・シフティングは、薬剤師が確保されている一部の施設で行われているに過ぎないと考えられる。」と記した。実際には、1,989の回答施設のうち、1,056施設で実施されていたが、その業務量は、中央値で見る限り、DPC特定病院群でも10時間程度と多くない。勤務医1名以上の負担軽減となる取り組み施設は114と推定され、実効的に特組まれている施設は一部であった。
ただ、タスク・シフティングの取り組み状況と、薬剤師の配置に明確な関係が見られなかった。薬剤師の配置以外の、タスク・シフティングの推進に係る施設特性を明らかにする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202022044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
5,872,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,828,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 3,172,359円
間接経費 2,700,000円
合計 5,872,359円

備考

備考
補助金確定額が千円単位であるため生じた、支出合計の差額359円は、自己資金を充当した。

公開日・更新日

公開日
2021-12-27
更新日
-