多様なエイズウイルス株の感染を制御する宿主応答の同定

文献情報

文献番号
200808019A
報告書区分
総括
研究課題名
多様なエイズウイルス株の感染を制御する宿主応答の同定
課題番号
H20-政策創薬・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
森 一泰(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 保富 康宏(医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所 エイズ研究センター )
  • 中村 紳一朗(滋賀医科大学 動物生命科学研究センター)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 宮澤 正顯(近畿大医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズウイルス感染に対する防御免疫の誘導が確認されている生ワクチンを用いてHIVワクチン開発を実現するための条件となる二つの課題: HIV感染を防御する宿主応答の解明とHIVの高い変異性と多様性に対する有効性を検討について研究を行う。
研究方法
サルエイズウイルス (SIV) 感染により1-2年でエイズ発症するアカゲザル(ビルマ系とラオス系)を宿主とする動物モデルを用いた。ウイルススパイクのN型糖鎖修飾を減少させ弱毒化した変異株を生ワクチンとした。ウイルス多様性に対するワクチン効果を調べるために2種類の感染実験、ワクチンと同株のウイルスをチャレンジウイルスに用いる実験、ワクチンとはサブタイプが異なるウイルスをチャレンジウイルスに用いる実験を行った。ワクチン効果は宿主でのウイルス感染レベル:血漿ウイルスRNA量の測定により行った。ワクチン効果に影響を与える宿主因子としてMHCクラスI,クラスII遺伝子アリルを解析した。
結果と考察
ウイルススパイク表面タンパクの5または3カ所のN型糖鎖修飾を減少させた4種類の変異株はいずれも生ワクチンの性質を示した。同型ウイルス感染に対するワクチン効果は非常に高く、初期感染から慢性感染期まで、すべての動物においてウイルス感染は強く抑制された。ところが、ワクチンウイルスと比べアミノ酸レベル10-30%異なるサブタイプが異なるウイルスに対する効果は同型ウイルス感染に比べ低くなり、サル2系統間に違いが見られた。ビルマ系では初期感染は非ワクチン群と比べ1/1000から1/100,000以下に抑制されたが、慢性期ではウイルス感染は検出限界以下に抑制された。ラオス系では初期感染ではビルマ系と比べ高い抑制効果が見られたが、慢性期においてウイルス感染が上昇し持続感染する個体が見られた。本実験から、感染防御には初期感染の抑制と慢性期での感染制御の2段階があること、それぞれに働く宿主応答が存在し、特に後者における違いがサル2系統間で明らかとなった。
結論
糖鎖修飾変異生ワクチンが誘導する防御免疫は、サブタイプが異なるウイルスに対し有効であることから、その解明は多様性が問題となるHIVに対するワクチン開発に貢献することが期待された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-