新たな歯科医師臨床研修制度における評価方法の構築に向けた基盤研究

文献情報

文献番号
202022042A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな歯科医師臨床研修制度における評価方法の構築に向けた基盤研究
課題番号
20IA1007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
田口 則宏(鹿児島大学 学術研究院医歯学域歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 長島 正(大阪大学 歯学部附属歯学教育開発センター)
  • 河野 文昭(徳島大学 医歯薬学研究部)
  • 一戸 達也(東京歯科大学 歯学部)
  • 新田 浩(東京医科歯科大学 歯学部附属病院)
  • 大澤 銀子(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 秋葉 奈美(新潟大学 医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野)
  • 岩下 洋一朗(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科医師臨床研修制度は、平成18年度の必修化以降、これまで概ね5年毎に見直しが行われているが、近年の社会環境の変化や歯学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂等を踏まえて抜本的な見直しが必要な時期となっている。令和3年3月には歯科医師法第十六条の二第一項に規定する臨床研修に関する省令の改正が行われ、省令及び施行通知が発出された。それにともない、新たな到達目標に対して、各研修歯科医が到達目標に達したかどうかを適切に評価し、各臨床研修施設における修了判定に資する情報を創り出す方略の構築が必要であるが、現時点では明確な方針が打ち出されていない。そこで本研究では、全国の研修プログラムを管理する臨床研修施設に対して、研修評価方法の実態調査を行い、研修修了判定に資する評価方法、評価基準などを明確にしていく。その上で、令和2年度より新たな制度に移行した医師臨床研修における評価システムを参考にするために、外部有識者からのヒヤリングを実施し、情報収集することを通じて、令和3年度以降に予定されている歯科医師臨床研修制度の改正での新たな到達目標に対する具体的な評価内容や評価方法の検討を行うこととした。
研究方法
1)現状の歯科医師臨床研修における評価方法に関する実態調査
 平成18年に必修化されて以降、歯科医師臨床研修における評価方法のみに焦点を当てた調査は行われてこなかった。本研究では、現在各臨床研修施設で運用されている評価方法やその問題点、工夫点を明らかにするために、Web方式によるアンケート調査を行った。対象は、歯科医師臨床研修における全国施設の各研修プログラムにおけるプログラム責任者とし、2020年12月~2021年1月に実施した。
2)新医師臨床研修制度における評価システムに関する情報収集
令和2年度に新制度に移行している医師臨床研修の情報を歯科医師臨床研修に活かすことを目的とし、医師臨床研修制度に造詣が深く、EPOC2の開発にも関わってこられた北海道大学の高橋誠教授より情報収集する機会を持った。
結果と考察
1)現状の歯科医師臨床研修における評価方法に関する実態について、全国314施設を対象に調査を行ったところ158施設から回答が得られ、回答率は50.3%であった。歯科医師臨床研修の実施は、大学病院のように複数のプログラムを有し多くの研修歯科医を受入れる形態と共に、1~2のプログラムを有し少数の研修歯科医を受け入れている小規模施設での形態があり、今回の調査では両者の施設から情報が得られた。DEBUTの使用は全体の約2割にとどまり、多くは施設独自で作成した評価方法を使用していた。公的に行われる歯科医師臨床研修制度では社会が求める医療人を育成するために、一定の方法で研修歯科医の評価が行われることが望ましいが、現実には各臨床研修施設の背景や受け入れる研修歯科医や評価する指導歯科医の人数などによって効率的な評価方法が用いられていると考えられた。形成的評価は大半の研修施設で行われており、施設の規模や施設の擁する人的、物的資源を駆使して、様々な形で実施されている傾向であったが、形成的評価の結果は95%以上の施設で研修歯科医本人に対して対面でフィードバックされており、研修歯科医個々の成長に合わせて各施設で丁寧に育成している様子が推察された。総括的評価では、大きく研修歯科医の態度や研修意欲、省察力などの「総合的な評価」を重視する施設と「経験症例に対する評価」を重視する施設の種類に分けることができ、特に前者の割合が多い傾向であった。多面評価については施設によって認識が大きく異なり、概念そのものの理解が進んでいない部分も見受けられた。一方で、多面評価を導入している施設では苦労している点もあるものの、研修歯科医の学習意欲向上など具体的な効果も実感されており、今後歯科医師臨床研修において多面評価を普及させていく必要があると考えられた。
2)新たな医師臨床研修制度においては、到達目標の大幅な見直しが行われ、卒前教育との連続性を考慮し卒前から卒後に至る一貫した能力の成長過程を観察できるよう整合が図られていた。様々な研修実績を集約するシステムとしてEPOC2が開発され、令和2年度の新医師臨床研修制度の開始と同時に本格運用しているとのことであった。
結論
歯科医師臨床研修の評価方法については、各施設の背景に合わせた様々な評価方法が運用されていたが、社会が求める歯科医療人の育成を目指す本制度において、研修歯科医が持つべき基本的臨床能力の質を担保する共通の評価方法は認められなかった。今回の調査で、全国の臨床研修施設において研修歯科医の評価を行う際に重視している視点が明らかとなったため、新たな歯科医師臨床研修制度における評価方法を確立する上で貴重な情報が得られたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202022042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,392,000円
(2)補助金確定額
2,281,000円
差引額 [(1)-(2)]
111,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,320,943円
人件費・謝金 24,000円
旅費 0円
その他 385,000円
間接経費 552,000円
合計 2,281,943円

備考

備考
差異の943円は端数のため切り捨てました。

公開日・更新日

公開日
2021-05-26
更新日
2021-05-27