文献情報
文献番号
200808018A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト抗原提示システムの包括的解析に基づくエイズワクチン戦略の再構築
課題番号
H20-政策創薬・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
上野 貴将(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 荒木 令江(熊本大学大学院 医学・薬学研究部)
- 熊谷 泉(東北大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒト感染免疫系に関する基盤情報は非常に限られており、エイズワクチン開発の障壁となっている。中でも抗原提示に関わる分子群は動物種間で大きく異なるため、ヒト検体での情報の充実化が望まれている。本研究では、プロテオームを主体とした新しい蛋白化学的アプローチを試みて、ヒトで提示される極微量のHIV抗原を包括的に明らかにすることにより、エイズワクチン開発と厚生労働行政に貢献することを目指す。3年計画の初年度として、新しい方法論創製のための基礎的検討を重視する。
研究方法
(1)さまざまな病態にあるHIV感染者から提供していただいた血液検体を用いて、CTLの抗原特異性と抗ウイルス機能を解析した。(2)T細胞レセプター(TCR)の相補性決定領域を抗体へ移植するTCRグラフト抗体をデザインし、大腸菌発現系により調製して機能評価を行った。(3)3つの異なる質量分析システムを組み合わせて、ペプチドを高感度に定量する解析法として、MRM(Multiple Reaction Monitoring)法を検討した。
結果と考察
(1)日本人HIV感染者の検体を用いて、多くの抗原ペプチドに対するCTL応答をHLAテトラマー法で解析し、HIV抗原の階層性を明らかにした。HLA-B35拘束性CTLでは、Nefに対して最も主要な応答を示すが、感染急性期と慢性期で別の抗原ペプチドが認識されていた。(2)TCRと抗体の構造が類似している点に着目し、TCRの相補性決定領域を抗体に移植して、抗原ペプチド・MHC複合体(pHLA)を認識するTCRグラフト抗体を作製した。TCRグラフト抗体は、大腸菌発現系において不溶性画分に発現されたが、巻き戻し操作によって調製することに成功し、表面プラズモン共鳴測定によりpHLAへの結合能を確認した。(3)高感度定量的質量分析で、スタンダードサンプルにおける最も高感度な最適定量解析条件と解析プログラムを検討した。四重極飛行時間型ハイブリッド型質量分析計と四重極型タンデム質量分析計を用いて、10 att mol以下の感度で検出同定可能なシステムを立ち上げた。
結論
本年度は3年計画の初年度として、HIV感染者の基礎的データ取得、新しい材料作りとアッセイ法の検討を中心に研究した。その結果、(1)HIV感染者でCTLに認識される抗原ペプチドは病態進行とともに変遷すること、(2)TCRグラフティングによりペプチド・MHC複合体を特異的に認識する抗体工学スキームを確立したこと、(3)10 att molレベルで抗原ペプチドの構造と量を測定可能な質量解析法を立ち上げたことの3つの成果を得た。
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
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