抗痴呆薬の臨床評価ガイドラインの作成に関する研究

文献情報

文献番号
199700449A
報告書区分
総括
研究課題名
抗痴呆薬の臨床評価ガイドラインの作成に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
本間 昭(東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 薬物療法等有用性向上推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国において抗痴呆薬の開発が活発に行われているが、必ずしも標準化された試験方法によらないことが多い。我が国においても国際的に共通の方法によって実施可能な試験方法の確立がICHの観点からも望まれている。本研究では、欧米の抗痴呆薬に関する臨床評価を参考とし、国際的かつ我が国において実施可能な抗痴呆薬の臨床評価ガイドラインの作成を行うことを目的とした。
研究方法
本研究では、研究協力者による班会議を複数回開催し、既に公式ガイドラインとして公表されているものを参考として、我が国のガイドラインに盛り込まれるべき事項の検討を行い、ガイドライン案のとりまとめを行った。
結果と考察
抗痴呆薬の臨床評価に関するガイドライン案を作成するにあたって、概ね以下のような検討を行った。まず対象となる疾患としてアルツハイマー型痴呆と血管性痴呆が含まれることを確認した。診断基準については、前者では既に国際的に確立した臨床診断基準があるため、それを用いることで問題ないと判断したが、血管性痴呆については国際的に評価の定まった、かつ臨床試験に実際的に応用可能な臨床診断基準が確立されていないため問題となった。しかしながら、現在のこの分野の医学水準等を考えれば、既存の診断基準を採用する以外の最善の策はないとの結論に達した。なお、本疾患の診断基準については、今後さらに検討することとした。
選択基準については、軽度及び中等度痴呆を対象とすることが望ましく、有効性評価では独立して実施された認知機能検査と全体的評価(global assessment)の双方で臨床的に有意な変化が示されることが必要であるとの意見で一致した。我が国では、既に欧米で用いられているものと比較可能である認知機能検査法が作成されているため、これを参考としたが、全体的評価法については日本独自のものを作成することにした。その結果、全体的評価の対象となる症候の範囲は、認知機能障害、機能的(道具的)日常生活動作能力を含む日常生活動作能力及び痴呆に伴う行動心理学的症候(behavioral and psychological signs and symptoms of dementia)とすることで意見が一致した。評価者の適合性では種々の問題が提起されたが、一定の経験を有し、一定のトレーニングを受けた医師及び言語聴覚士などの認知機能検査に習熟した専門家が、全体的評価と認知機能検査をそれぞれ独立して実施することで合意した。全体的評価を評定する医師と患者の担当医が同一であってもよいかという問題については、ICHの観点から治験担当医師は患者の担当医とは独立させる必要があるとの意見が出されたが、現在の国内の医療環境等を鑑み、「原則として別々に評価すべき」ということにした。治験期間は前期第II相試験では、12週間以上、後期第II相試験及び第III相試験では24週以上とした。また、プラセボとの比較試験を後期第II相試験で少なくとも1試験を実施し、第III相試験では必ず実施する必要があるとの意見で一致した。治験担当医師一人あたりの症例数については、従来の経験等により6症例以上が妥当であるとした。
結論
我が国においても国際的に共通の方法によって可能な治験を実施できるよう留意し、上記検討事項をふまえガイドライン案を作成した。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)