長時間労働を行う医師の健康確保の手法等に関する研究

文献情報

文献番号
202022037A
報告書区分
総括
研究課題名
長時間労働を行う医師の健康確保の手法等に関する研究
課題番号
20IA2004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
谷川 武(順天堂大学大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革が推進され、令和6年(2024年)4月より、時間外・休日労働に関する上限規制が設けられる予定であるが、その上限規制下でも、一部の条件を満たす医師は年間1,860時間(月155時間相当)に達する時間外・休日勤務の長時間労働に従事することが見込まれる。平成28年(2016年)、令和元年(2019年)に実施された全国の医師を対象とした医師の勤務実態の調査では約10%が時間外/休日勤務1,860時間超の長時間労働に従事しており、令和6年の上限規制が実施される時点でも相当数の医師が長時間労働に従事すると予想される。
長時間労働を行う医師に対する健康確保措置として「有効な休息・睡眠の確保」を前提に「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」が「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル作成委員会」により作成、公開された。本マニュアルでは、これまでの産業保健の知見を踏まえ、適切な「睡眠および疲労の状況についての確認」を含めた「効果的な面接指導の実施」および「効果的な代償休息の付与」を提案しているが、将来的な「長時間労働の医師への健康確保措置」の方策として睡眠呼吸障害のスクリーニングに於ける簡易ポリソムノグラフ検査あるいは、精神運動覚醒テスト(Psychomotor Vigilance Test PVT)、アクチグラフ等の客観的評価の実施を提案している。そこで、本研究では、客観的な評価手法としてのウェブ版PVTの開発を行った。
研究方法
令和2年度の研究として、
(1)ウェブ版PVTの開発
(2)ウェブ版PVTと機器版PVTの性能上の比較
(3)様々な覚醒状態の被験者による機器版PVTおよびウェブ版PVTの比較
を実施した。
結果と考察
(1)ウェブ版PVTの開発
ウェブ版PVTとして、スマートフォンで実施可能なアプリ(3分間バージョン)を開発した。開発されたウェブ版PVTは、従来の機器版PVTと同様に赤字でSTARTおよびミリ秒単位のカウントアップが表示され、3分間のPVTが終了すると結果が示される。
(2)ウェブ版PVTと機器版PVTの比較
 ウェブ版PVTでは、スマートフォンあるいはPCの性格上、一定の反応時間が加算されることが避けられないと予想されるが、非常に安定した数値が得られた。
(3)様々な覚醒状態における機器版PVTおよびウェブ版PVTの比較、ウェブ版PVTの慢性の睡眠不足あおよび疲労の客観的評価のための活用可能性の検証
 被験者を募り、様々な覚醒状態で機器版PVTおよびウェブ版PVTを実施し、データ収集し、機器版PVTとウェブ版PVTの数値を比較検証することを試みた。Reaction Timeの平均±標準偏差は、機器版PVTが231.3±31.5、ウェブ版PVTでは286.9±37.6とウェブ版は有意に長い傾向が見られた(p<0.001)。さらに、Bland-Altmanプロットを実施したところ、Coef = -0.11 (95%信頼区間 -0.16 to -0.06)とReaction Timeが大きい領域(PVTの成績が悪い領域)で両PVTの差が大きくなる傾向が観察された。しかし、100msecあたり11msec程度であり、許容範囲と考えられた。
結論
令和2年度(3年計画の1年目)はウェブ版PVTを開発し、従来から活用されている機器版PVTと比較し、十分活用可能であることが示唆された。さらに様々な条件におけるウェブ版PVT実施を通して知見を集積する予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-07-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202022037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,371,965円
人件費・謝金 598,160円
旅費 0円
その他 2,707,171円
間接経費 1,153,000円
合計 6,830,296円

備考

備考
研究に使用の物品及び、システム構築の委託費について予算が超過したため、自己資金1,830,296円を投入した。

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
-