検体検査の精度の確保等に関する研究

文献情報

文献番号
202022035A
報告書区分
総括
研究課題名
検体検査の精度の確保等に関する研究
課題番号
20IA2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
矢冨 裕(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 毅(東京大学 医学部附属病院)
  • 宮地 勇人(東海大学医学部)
  • 村上 正巳(群馬大学大学院医学系研究科 臨床検査医学講座)
  • 大西 宏明(杏林大学 医学部臨床検査医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子関連検査を含む検体検査の品質・精度を確保するための「医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)」が関連政省令と合わせ、平成30年12月に施行された。本研究では、法令改正後の検証と今後の課題を検討し、推進方策や省令改正の方向性等について提言を行うこととした。
研究方法
各検査機関に対する『精度管理実態調査』(アンケート調査)を企画、実行した。さらに、各委員が、現在の立場、専門性を踏まえ、独自の調査・解析を実施した。並行して、WEB・対面のハイブリッド形式の会議を計9回開催し、また、メールも活用しながら、全委員で意見交換を行い、報告書をまとめた。
結果と考察
・我が国の検査施設において、法令改正の趣旨は着実に浸透してきていることが確認され、この度の法令改正は、我が国の検体検査の精度確保において重要な役割を果たしていると考えられた。
・検体検査の精度のさらなる向上のためには、法令改正において努力義務とされた事項の充実が求められるが、これに関しては、検査実施施設にかかる負担を考慮し、保険診療における評価などのインセンティブや支援を検討する必要がある。
・高度な医療を担う特定機能病院等では、内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検等は施設要件に加えるなど、より高いレベルの精度管理を求める検討を開始するべく、次の段階として、求めるべき具体的要件や解決すべき課題等、技術的側面を含めてその実現性の整理を進めていくことが適切と思われる。
・一方、診療所や小規模の医療機関における検体検査の精度管理に関しては、まだ課題が存在し、取組の余地があると思われるが、これは、(医療機関においては)精度管理に関わる基準が法令上存在しなかったところに今回の法令改正がなされたことを考慮するとやむを得ない部分があると考えられる。今後、これらの医療機関の実態に整合した、きめ細かい精度管理システムの構築等について、国や関連団体が尽力・支援することにより課題に取り組んでいく必要があると考えられた。
・衛生検査所に関しては、既に以前より良好な精度管理が実践されていたが、今回の法令改正により、日本衛生検査所協会としてさらにより良い精度管理拡充体制を構築している。一方、今回の法令改正により過度な負担増加があったとの意見が出されている。各地に存在する衛生検査所は、施設の大小、有する機能など多種多様であり、検体検査の精度の向上、医療経済への貢献の両立という観点からのより柔軟な運用・対応を含め、今後の課題と考えられた。
・外部精度管理調査事業に関しては、これまでもいくつかの問題点が指摘されていたが、今回の研究においても再確認された。今後、日本医師会や日本臨床衛生検査技師会などの広域外部精度管理調査に関して、調和・協調によりさらなる充実を目指す必要性があると考えられる。また、遺伝子関連検査に関する外部精度管理調査の拡充は喫緊の課題である。
・検査室の第三者認定・認証に関しても、医療機関、衛生検査所ともに着実に拡充している現状が確認された。ISO 15189と(日本臨床衛生検査技師会と日本臨床検査標準協議会による)精度保証施設認証制度の普及が大きい要因と考えられる。特定機能病院において、IS0 15189認定が着実に普及している現状に鑑み、これを施設要件に取り入れること等の検討を開始するべく、求めるべき技術的水準、実現に向けての課題等について費用面や実施体制等を含めさらに整理することが適切と考えられた。
・遺伝子関連検査の精度管理に関しては課題が多く、これは今回のCOVID-19禍でも浮き彫りになった。2020年度下半期に実施された厚生労働省委託事業「新型コロナウイルス感染症のPCR検査等にかかる精度管理調査業務」では重要な結果が示され、同様な事業の今後の継続が期待される。遺伝子関連検査に関しては、新たな厚労科研等を立ち上げるなど、さらなる課題検討を行う必要性があると考えられた。
・今回実施された、がん遺伝子パネル検査に使用されるFFPE検体に関連する様々な精度管理に関する実態調査・意識調査の結果により、適切な検体保管のための基準設定、FFPE検体の管理台帳等の作製、および精度管理のための診療報酬上の評価等の必要性が明らかになった。同検査を担当する病理部門でのマンパワー不足も指摘され、今後の重要な課題と考えられた。
・検体検査の精度管理に関わる人材育成に関しても、各関連団体が積極的に取り組んでいる現状が確認され、法令改正の成果の一つと考えられる。しかし、遺伝子関連検査に携わる人材の育成を中心に、さらに加速させる必要があると考えられた。
結論
この度の法令改正は、我が国の検体検査の精度確保において重要な役割を果たしていることが確認できたが、同時に、今後の課題も明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202022035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遺伝子関連検査を含む検体検査の品質・精度を確保するための「医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)」が関連政省令と合わせ、平成30年12月に施行された。
本研究では、法令改正後の検証と今後の課題を各種調査・報告を元に抽出し、分析・検討を加え、推進方策や省令改正の方向性等について提言を行った。
臨床的観点からの成果
我が国の臨床検査とくに検体検査の品質・精度の向上に資することが期待される。また、ゲノム医療に関する法制化の動きがある中で、ゲノム医療が関わる検体検査に関する検討材料として活用されることも期待される。
ガイドライン等の開発
現時点ではなし
その他行政的観点からの成果
現時点ではなし
その他のインパクト
臨床検査に関する制度推進議員連盟第2回勉強会において、本研究に関する講演を行った(2021年6月7日)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
2024-05-23

収支報告書

文献番号
202022035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,500,000円
(2)補助金確定額
2,148,000円
差引額 [(1)-(2)]
352,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,222,265円
人件費・謝金 0円
旅費 130,548円
その他 246,000円
間接経費 550,000円
合計 2,148,813円

備考

備考
新型コロナ感染症拡大のため、会議はすべてWEB開催(ハイブリッド開催を含む)とし、また関連学会出席も大幅に減ったため、旅費支出が想定をはるかに下回った。関連団体訪問・意見聴取等の活動も制限せざるを得なかった。アンケート調査に関してもWEBの有効活用により委託費を大幅に削減することができた。とはいえ当初予定していたアンケート調査も的確に実施することができ、また充実したWEB会議を計9回開催し、研究目的を達成することができた。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
2021-12-09