宿主側及びウイルス側要因からみたHIV感染症の病態解明と新規医薬品・診断薬品の開発によるエイズ発症防止の研究

文献情報

文献番号
200808013A
報告書区分
総括
研究課題名
宿主側及びウイルス側要因からみたHIV感染症の病態解明と新規医薬品・診断薬品の開発によるエイズ発症防止の研究
課題番号
H19-政策創薬・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 愛吉(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塩田 達雄(大阪大学 微生物病研究所)
  • 松下 修三(熊本大学 エイズ学研究センター)
  • 市村 宏(金沢大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先進工業国においては、抗レトロウイルス療法(ART)が普及し、治療を受けているHIV感染者の予後は著しく改善した。しかし、先進工業国と途上国との治療状況のギャップは極めて大きく、HIVに対するワクチン開発のめども立っていない。HIVに対する人の自然免疫や獲得免疫に関する基礎研究と日本や途上国の現状に即した応用研究が極めて重要である。本研究は(1)ゲノム情報を駆使した宿主因子の解明、(2)HIVに対する細胞性及び液性獲得免疫の解析とその応用、(3)ケニアやタイ、日本の臨床現場と直結したウイルスと宿主の研究である、ことを特徴とする。
研究方法
日本人HIV-1感染者において、病態進行が標準的な群と緩慢な群について網羅的な一塩基多型の頻度を比較検討した。病態進行と相関する血中ウイルス量(VL)が高値の患者群と低値の群で、HIV由来の抗原に対する末梢血単核球の遺伝子発現解析を行った。白人においてネビラピンの代謝に関係すると報告されたCYP2B6 Q172Hの遺伝子多型をアジア(タイ)人のHIV感染者コホートで検討した。ケニア人小児HIV感染者で、env-V3領域のアミノ酸配列によりHIV-1のコレセプター使用を予想し、臨床データと比較した。試験管内で、NBD-556とsCD4の耐性ウイルスを誘導し、野性型のHIVと比較した。
結果と考察
網羅的手法により、日本人HIV-1感染者においてリンフォトキシンの13番目のアルギニンをシステインに置換する多型が、有意に病態進行の遅延と相関することが明らかになった。マイクロアレイを用いた解析により、VLに影響する宿主因子の候補が明らかとなってきた。ネビラピンを含むARTにより血中ウイルス量が検出限界以下まで低下したタイのHIV-1感染者の解析では、CYP2B6 Q172Hの遺伝子多型とCD4陽性細胞の回復速度には相関がなかった。非B亜型HIV-1に感染したケニアの小児において、コレセプターの変化は病態進行によるものと考えられた。耐性誘導の結果から、NBD-556はsCD4と非常に近い形で結合していることが示唆された。
結論
リンフォトキシンαの遺伝子多型が、有意に病態進行の遅延と相関することが明らかになった。VLに影響する宿主因子についてさらに絞り込み、定量PCR法による確認を行う。非B亜型HIV-1に感染したケニアの小児において、コレセプターの変化は病態進行によるものと考えられた。HIVに対する抗体療法を開発するために、毒性が低くより効果の強い誘導体の開発を目指していく。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-