薬剤耐性HIV/AIDS症例救済のための新規な機序による抗HIV薬剤の開発研究

文献情報

文献番号
200808012A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性HIV/AIDS症例救済のための新規な機序による抗HIV薬剤の開発研究
課題番号
H19-政策創薬・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 亙(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野村 伸彦(富山化学工業株式会社綜合研究所第3研究部)
  • 田中 晴雄(いわき明星大学薬学部薬学科)
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センタ ー)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存の抗HIV薬剤に対する薬剤耐性を克服するための新規な阻害機序による抗HIV薬剤を開発し実用化することを目的とする。
研究方法
本研究班では(1)開発グループと(2)実用化グループの2つのサブグループに分かれて研究を進めた。開発グループでは合成展開による阻害活性の増強と阻害活性の作用機序の解析、抗HIV活性を指標にしたin vitro 評価系での低分子化合物ライブラリの再評価、Vif阻害剤スクリーニング系の開発とその基盤としての基礎的研究等に取り組んだ。一方、実用化グループでは2系統の新薬候補化合物、低分子候補化合物Dおよび接合・侵入阻害剤アクチノヒビン(AH)の実用化に向けた開発研究、新薬の効果を評価するためのサルモデルの開発に取り組んだ。
結果と考察
本年度は下記の研究成果を上げた。
(1)開発グループではVif阻害剤開発基盤技術の開発および低分子ライブラリの抗HIV阻害活性による探索を実施した。
(2)実用化グループでは
1.新規阻害剤候補化合物Dはpre-integration complexに作用していることが推測され本化合物をPIC阻害剤と仮称した。また、ヒト血清アルブミンの影響を受けない化合物D類縁化合物28 個を同定した。ラット反復投与毒性試験による有効性,体内動態,安全性を確認した。SIVmac239に対してもPIC阻害剤が有効であることを確認した。
2.AHの2量体化により、抗HIV活性の上昇並びにAH単量体非感受性株の克服に成功した。AHの結晶構造を解明した。AHはマイトジェン活性を示さないことを確認し、ウサギ膣に対して、副作用を示さないことを確認した。
3.カニクイザル細胞での増殖が著しく速い馴化型ウイルスの分子クローンの構築を行い、その馴化により誘導された変異を同定した。
結論
今まで作用機所が明確でなかった低分子化合物Dの作用機序がPICであることを明らかにした。まだ分子標的の同定には至っていないが、今後作用機序の解析を進めるにあたり重要な成果である。AHの結晶構造が解明され、より高活性の物質の開発に成功した。これらの新規候補化合物をin vivoで評価をするためのサル感染モデルの開発研究も進んでおり、次年度以降のサル実験を計画している。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-