宿主細胞の細胞内免疫機構に基づく新規エイズ治療薬の開発

文献情報

文献番号
200808010A
報告書区分
総括
研究課題名
宿主細胞の細胞内免疫機構に基づく新規エイズ治療薬の開発
課題番号
H19-政策創薬・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山本 直樹(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梁 明秀(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 澤崎 達也(愛媛大学 無細胞生命科学工学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症の成立には宿主タンパク質とHIVタンパク質間の相互作用が複雑に関わっており、その理解は重要である。本研究ではとくに無細胞蛋白合成系とαスクリーン、TOF/MS、などの技術を駆使し、宿主因子によるウイルスタンパク質の直接的な翻訳後修飾に焦点を置いた研究を行った。本研究の最終の目的は、その過程で薬剤治療の新たな標的足りうる宿主因子の同定と薬剤耐性が起こりにくい治療法の確立を目指すことにある。
研究方法
GST融合リコンビナントPin1タンパク質を用いることにより、HIV感染細胞内において特異的にリン酸化されるタンパク質をGST-pull down法にて分離した。共通して感染細胞特異的にリン酸化を受けるスポット(バンド)に関しては、ゲル内消化を行ないペプチド化した資料をESI-Q-TOF-MS質量分析計にて解析を行った。さらに小麦胚芽を用いた無細胞タンパク質合成システムと化学増幅型ルミネッセンス プロキシミティー ホモジニアスアッセイであるAlphaScreen手法を用いた。また無細胞タンパク質合成システムを利用して調製した生理活性を持つ複合体を本手法で試験し、機能解析を行った。
結果と考察
我々はこれまでSOCS1 がGagのNCとMA領域に結合し、Gagの安定化の誘導、膜への輸送とウイルス産生を促進することを示してきた。今年度は、Pin1がGagのNC領域にindirectに結合し、Gagの重合化とHIV-1の粒子形成を抑制すること、aPKCがHIV-1p55Gagのp6領域をリン酸化し、極性細胞におけるウイルス粒子の出芽とその方向を制御すること、RINGフィンガー蛋白質BCA2がHIV-1粒子産生を阻害すること、を見出した。さらに少なくとも、Vif, Vpu、Vprにそれぞれ36種類、19種類、114種類の宿主のプロテインカイネースが結合すること、などの成果を得た。
結論
HIV感染に必須のいくつかの新たな宿主因子の同定に成功した。これらの研究は現在のHIV感染症治療の最大の弱点である、薬剤耐性の起こりにくい抗HIV薬開発や難渋を極めているワクチン開発に寄与すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-