新型インフルエンザ用ワクチンの有効性・安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
200808009A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ用ワクチンの有効性・安全性確保に関する研究
課題番号
H18-創薬・一般-033
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 田代眞人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 河岡義裕(東京大学医科学研究所)
  • 影山努(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 原田勇一(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 長谷川秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 高橋宜聖(国立感染症研究所 免疫部)
  • 神谷齊(国立病院機構三重病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルス由来の新型インフルエンザの発生が危惧されている。本研究はパンデミック発生前に新型インフルエンザワクチンの供給体制の完成、新型ワクチン開発研究の推進、さらには次世代の経鼻粘膜ワクチンおよび培養細胞ワクチンの開発と実用化に繋げる基礎的研究情報提供を目指している。
研究方法
1.GMP-LLCMK2細胞にける各亜型ワクチン株の増殖効率の評価
2.マウスにおけるクレード2.3.4-H5N1ワクチンの効果評価
3.経鼻接種ワクチン用新規アジュバントの検討
4.季節性インフルエンザワクチンの小児での効果検
結果と考察
1.H5N1ワクチン株の選定と弱毒化H5N1ワクチン株バンクの充実
・新たにワクチン候補として検討すべきクレードのウイルスを特定した。
・リバースジェネティクス法により弱毒型ワクチン製造株を追加作製した。
2.製造効率の良いワクチン株の作製。
・H5N1ワクチンシードウイルスのMDCK細胞での増殖性は、HA/NA機能バランスを変えることで向上可能であった。これによって、ワクチン製造効率の調節が可能である。
3.ワクチン製造用としてのGMP-LLCMK2細胞の有用性の検討。
・ヒト用ワクチン株作製用の細胞株GMP-LLCMK2細胞では、H5亜型のみならず、H6,H7,H9亜型インフルエンザワクチンを効率よく作製できる。季節性ワクチンおよび複数の亜型ウイルスワクチン製造株作製へ応用可能である。
4.マウスにおけるクレード2.3.4-H5N1弱毒化アルムアジュバントワクチンの評価
・Clade2.3.4のA/Anhuiワクチン株は、他のクレードのH5N1ウイルスに対して、広い交叉免疫性を示す。これによって、特定のワクチン株での製造も可能であることが示唆された。
5.天然物由良のキノコ菌糸体抽出物をアジュバントとした経鼻接種ワクチンのインフルエンザ感染防御効果の検討。
・キノコ由来熱性抽出物Phellinus LinteusはH5N1経鼻接種ワクチンのアジュバントとして有用であることが示唆され、現行の二重鎖RNAアジュバントの後継となりうる。
6.小児におけるワクチン接種量と抗体応答の検証
・0.25mLの接種量でのA/H1及びA/H3亜型インフルエンザに対する免疫応答は、海外ワクチンの方が国産ワクチンよりも高い。しかし、0.5mLでは差が無く、またB型インフルエンザに対してはいずれも低かった。この情報は、小児への新型ワクチン接種量の検討に有用である。
結論
わが国においても、ヒト用のH5N1弱毒化ワクチン株の作製と供給体制が前進した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200808009B
報告書区分
総合
研究課題名
新型インフルエンザ用ワクチンの有効性・安全性確保に関する研究
課題番号
H18-創薬・一般-033
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 田代眞人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 河岡義裕(東京大学医科学研究所)
  • 影山努(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 原田勇一(国立感染症研究所 ウイルス第3部 )
  • 長谷川秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 高橋宜聖(国立感染症研究所 免疫部)
  • 神谷齊(国立病院機構三重病院)
  • 城野洋一郎((財)化学及血清療法研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高病原性H5N1鳥インフルエンザ由来の新型インフルエンザによるパンデミックの発生が危惧されている。本研究はパンデミック発生前に新型インフルエンザワクチンの供給体制の完成、新型ワクチン開発研究の推進、さらには次世代の経鼻粘膜ワクチンおよび培養細胞ワクチンの開発と実用化を目指している。
研究方法
・新型インフルエンザワクチンの開発、承認申請における品質規格と国際基準の策定
・異なるクレードのH5N1ウイルスからリバースジュネティクス(RG)法で弱毒化ワクチン候補株を作製し、その不活化アジュバントワクチンの効果をマウスで検証
・RG用プラスミドベクターの改良と効率の検証
・RG法に使用するヒト用ワクチン株作製用として、LLC-MK2細胞(CCL-7.1)を特定し、ICHガイドラインに沿った安全性試験の実施
・経鼻粘膜ワクチン用アジュバントpolyI:polyC12Uの効果検討
・国産季節性ワクチンを用いて、小児での接種量と抗体応答の検討
結果と考察
・ヒト用新型インフルエンザワクチン株作製用に安全性、品質の検証された培養細胞LLC-MK2細胞のバンク構築に成功した。LLC-MK2細胞はH5亜型のみならず、A/H6,A/H7,A/H9および季節性ウイルス A/H1,H3,B型も効率よく増やすことを確認した。これによって、わが国でもRG法を用いたヒト用インフルエンザワクチン株の供給が可能となった。
・RGワクチンの品質管理基準、安全性評価基準に関する国際基準ガイドラインを策定し、それらの導入体制の準備ができた。
・異なるクレードの国家備蓄H5N1ワクチンの交叉防御効果、交叉免疫性をマウスで評価し、広い交叉免疫性を確認した。これによって、H5N1ワクチンによる初期免疫の重要性を示唆した。
・RG法に用いるDNAベクターの改良により、高効率でH5N1弱毒化ウイルスの作製が可能となった。
・不活化経鼻ワクチン用アジュバントpolyI:polyC12Uを特定した。これによって、経鼻粘膜インフルエンザワクチンの実用化へ前進した。
・小児へ0.25mLの接種量でのA/H1及びA/H3亜型インフルエンザに対する免疫応答は、海外ワクチンの方が国産ワクチンよりも高い。しかし、0.5mLでは差が無く、またB型インフルエンザに対してはいずれも低かった。この情報は、小児への新型ワクチン接種量の検討に有用である。
結論
わが国においても、ヒト用のH5N1弱毒化ワクチン株の作製と供給体制ができた。マウスにおける各クレードのH5N1不活化ワクチンの効果を検証できた。小児へのワクチン接種量を詳細に検討した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200808009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・ヒト用インフルエンザワクチン株製造用GMP-LLCMK2細胞は、H5,H6,H7,H9亜型および季節性インフルエンザH1, H2, B型ウイルスを効率よく産生し、有用性が高い。
・異なるクレードの国家備蓄H5N1ワクチンの免疫原性、交叉防御効果をマウス実験で評価し、有効性を確認した。
・経鼻粘膜インフルエンザワクチン用の最適なアジュバントを特定し、実用化へ前進した。
臨床的観点からの成果
小児に対するワクチン接種量0.25mLでのA/H1及びA/H3亜型インフルエンザに対する免疫応答は、海外ワクチンの方が国産ワクチンよりも高い。しかし、0.5mLでは差が無く、またB型インフルエンザに対してはいずれも低かった。この情報は、H5N1ワクチンの小児への接種量策定にとって有用である。
ガイドライン等の開発
RGワクチンの品質管理基準、安全性評価基準に関する各種国際ガイドライン策定に参画し、国際基準の導入体制の準備ができた。
その他行政的観点からの成果
ヒト用インフルエンザワクチン製造用種株作製用のGMP-LLCMK2細胞のバンク構築に成功した。さらに、国立感染症研究所にGMP準拠のワクチン株作製施設が完成したことから、わが国でもヒト用のH5N1ワクチン株の供給が可能となった。
その他のインパクト
GMP-LLCMK2細胞バンク構築の成功により、培養細胞を基剤としたインフルエンザワクチン製造の基礎研究が開始できた。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Horimoto T, Takada A, Fujii K, et al.
The development and characterization of H5 influenza virus vaccines derived from a 2003 human isolate.
Vaccine , 24 (17) , 3669-3676  (2006)
原著論文2
Masaki Imai, Ai Ninomiya, Harumi Minekawa, et al.
Development of H5-RT-LAMP (Loop-Mediated Isothermal Amplification) system for rapid diagnosis of H5 avian influenza virus infection.
Vaccine , 10 , 6679-6682  (2006)
原著論文3
Masaki Imai, Ai Ninomiya, Harumi Minekawa, et al.
Rapid diagnosis of H5N1 avian influenza virus infection by newly developed influenza H5 hemagglutinin gene-specific Loop-Mediated Isothermal Amplification method
J.Virol. Method , 141 , 173-180  (2007)
原著論文4
Ai Ninomiya, Masaki Imai, Masato Tashiro, et al.
Inactivated influenza H5N1 whole-virus vaccine with aluminum adjuvant induces homologous and heterologous protective immunities against lethal challenge with highly pathogenic H5N1 avian influenza viruses in a mouse model.
Vaccine , 25 , 3554-3560  (2007)
原著論文5
Nagata N, Iwata N, Hasegawa H,et al.
Pathology and virus dispersion in cynomolgus monkeys experimentally infected with severe acute respiratory syndrome coronavirus via different inoculation routes
Int J Exp Pathol , 88 (6) , 403-414  (2007)
原著論文6
Ichinohe T, Nagata N, Strong P, et al.
Prophylactic effects of chitin microparticles on highly pathogenic H5N1 influenza virus.
J Med Virol , 79 (6) , 811-819  (2007)
原著論文7
Ichinohe T, Tamura S, Kawaguchi A, et al.
Cross-Protection against H5N1 Influenza Virus Infection Is Afforded by Intranasal Inoculation with Seasonal Trivalent Inactivated Influenza Vaccine
J Infect Dis. , 196 (9) , 1313-1320  (2007)
原著論文8
Ichinohe T, Kawaguchi A, Tamura S, et al.
Intranasal immunization with H5N1 vaccine plus Poly I:Poly C(12)U, a Toll-like receptor agonist, protects mice against homologous and heterologous virus challenge.
Microbes Infect , 9 (11) , 1333-1340  (2007)
原著論文9
Ichinohe T, Nagata N, Strong P, et al.
Prophylactic effects of chitin microparticles on highly pathogenic H5N1 influenza virus.
J Med Virol , 79 (6) , 811-819  (2007)
原著論文10
Masaki Imai, Kazunori Kawasaki, et al.
Cytoplasmic domain of influenza B virus BM2 protein plays critical roles in production of infectious virus
J. Virol , 82 , 728-739  (2008)
原著論文11
H Kamijuku, Y Nagata, X Jiang, et al.
Mechanism of NKT cell activation by intranasal coadministration of alfa-galactosylceramide, which can induce cross-protection against influenza viruses
Mucosal Immunol , 1 , 208-218  (2008)
原著論文12
Keiichi Makizumi, Kazuhiko Kimachi, Katsuhiko Fukada,et al.
Timely production of A/Fujian-like influenza vaccine matching the 2003–2004 epidemic strain may have been possible using Madin–Darby canine kidney cells.
Vaccine , 26 , 6852-6858  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-