臨床応用可能な人工血小板としてのH12結合微粒子のin vivo評価

文献情報

文献番号
200808008A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床応用可能な人工血小板としてのH12結合微粒子のin vivo評価
課題番号
H18-創薬・一般-026
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康夫(慶應義塾大学医学部 内科学)
  • 武岡 真司(早稲田大学理工学術院 医工学)
  • 後藤 信哉(東海大学医学部 内科学)
  • 鈴木 英紀(東京都臨床医学総合研究所 循環器病研究部門)
  • 鎌田 徹治(慶應義塾大学医学部 解剖学)
  • 梶村 眞弓(慶應義塾大学医学部 医化学)
  • 村田 満(慶應義塾大学医学部 中央臨床検査部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工血小板/血小板代替物のプロトタイプであるH12(ADP)小胞体(フィブリノーゲンのγ鎖C末端アミノ酸配列(HHLGGAKQAGDV: H12)をその表面に担持させ、アデノシン5’-二リン酸(ADP)を内包させたリポソーム)の機能と安全性について、前(平成18、19)年度に引き続き、in vivo実験系を中心に検討を加え、人工微粒子の体内動態や物性などを解析した.
研究方法
14C(ADP)と3H(cholesterol)で2重標識したH12(ADP)小胞体を調製し、ラットでの体内動態を検討した。膜の物性(流動性と被覆層数)を変化させた小胞体を調整し、その機能をin vitro(形態的観察を含む)、in vivoで解析した.小胞体投与の影響について、酸化ストレスの鋭敏な指標のheme oxygenase-1を用いて網内系(肝臓/脾臓)への負荷を解析した(ラット).また、凝固/血液生化学検査への影響について血小板減少モデル動物(ラット/ウサギ)で検討した.in vitro流動系を用いて動脈血栓形成への影響を、また小胞体とその標的となるaIIbb3の結合動態(発現細胞を用い)を、解析した.
結果と考察
小胞体(至適投与量、40mg/kg)の血中濃度は経時的に減少したが、ADPの内包化はH12の有無にかかわらず安定的に保持され、脾臓/肝臓に集積され、ADPは尿へ、小胞体は糞へ排泄され、網内系の飽和はみられなかった.同様の投与量では、網内系への酸化ストレスも一過性で、臨床検査値への影響も観察されなかった。小胞体の機能(ADP放出能)は膜流動性と被覆層数に影響され、現行の規格が最適な物性を有することが確認された.また、小胞体は動脈血栓形成を増強しないこと、活性化αIIβb3(活性化血小板)に特異的に結合することが確認された.
結論
本研究により絞り込まれたH12(ADP)小胞体が、その機能と安全性について、人工血小板の候補微粒子としての次の要件を十分満たす性能を有することが確認された.すなわち、1)血小板を代替する止血機能を有する、2)流血中で血栓を誘発しない、3)止血部位でのみ作用する、4)十分な血中濃度を保ち、血液適合性を維持できる、ことなどである。多方面からの安全性評価とともに微粒子の止血機能の最適化を行い、人工血小板の実用化を目指してゆく.

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200808008B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床応用可能な人工血小板としてのH12結合微粒子のin vivo評価
課題番号
H18-創薬・一般-026
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康夫(慶應義塾大学医学部 内科学)
  • 武岡 真司(早稲田大学理工学術院 医工学 )
  • 後藤 信哉(東海大学医学部 内科学)
  • 鈴木 英紀(東京都臨床医学総合研究所 循環器病研究部門)
  • 鎌田 徹治(慶應義塾大学医学部 解剖学)
  • 梶村 眞弓(慶應義塾大学医学部 医化学)
  • 村田 満(慶應義塾大学医学部 中央臨床検査部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工血小板/血小板代替物の候補微粒子として絞り込まれたH12(ADP)小胞体 (フィブリノーゲンのγ鎖C末端アミノ酸配列 (HHLGGAKQAGDV: H12) をその表面に担持させ、アデノシン5’-二リン酸(ADP)を内包させたリポソーム) について、in vivo実験系を中心に、その機能と安全性を検討した.
研究方法
H12結合ナノ微粒子(アルブミン重合体、リポソーム:粒径250 + 80 nm)を検討し、以下の知見を得て、生理的な血小板刺激物質のADPを内包化したH12(ADP)小胞体を、人工血小板の最終候補として絞り込んだ。
結果と考察
1)血小板凝集計などのin vitro解析、ブスルファン惹起血小板減少症動物モデル(ラット、ウサギ)でのin vivo解析により、小胞体は、血小板凝集依存性にADPを放出することで、血小板輸血に匹敵する止血機能(出血時間の短縮、出血量の軽減)を発揮した。2)静注された小胞体は、流血中の血小板を活性化することなく、CTスキャン解析(ラット)で、出血部位に特異的に集積した。3)RI標識小胞体の体内動態解析(ラット)で、小胞体は有効な血中濃度を数時間維持し、脾臓や肝臓で異化された。至適投与量での網内系(ラット)の酸化ストレス負荷は些少でかつ一過性であった.4)超微細形態的観察、発現細胞を使用した分子結合解析、in vitro、in vivo(ラット)流動系での画像解析等での基礎的検討結果は、いずれも小胞体の活性化血小板特異性を支持した.5)小胞体のADP放出能やADP内包安定性は、小胞体膜の物性(流動性、被覆層数)に依存し、機能至適化が現行試験物で十分達成されていることが確認された.
結論
本研究により絞り込まれたH12(ADP)小胞体が、その機能と安全性について、人工血小板の候補微粒子としての要件(血小板に匹敵する止血機能を有し、流血中で血栓を起こさずに、保存期間が長くかつ厳密な保存条件を要さずに、血液適合性に優れて、有効な血中濃度を長く維持できる)を十分満たす可能性を有することが確認された.多方面からの安全性評価とともに微粒子の止血機能の最適化を継続的に行い、人工血小板の実用化を目指してゆく。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200808008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ナノ粒子を特異的に出血部位へ集積させて止血効果を発現させ、血小板凝集をトリガーとして粒子から内包物を放出する機構を明らかにしたことは、国際的、学術的にも類をみない独創的な研究である。
臨床的観点からの成果
血小板輸血の適応である出血予防と止血治療を有効に代替でき、かつ、感染や免疫反応などの血液製剤に特有の副作用のない安全な人工物が開発されたことは、受血患者に大きな福音をもたらすであろう。
ガイドライン等の開発
該当せず
その他行政的観点からの成果
人工血小板の開発促進は、血液法(H15年施行)に明記され、血液事業の効率化のみならず、緊急災害時の備えの観点からも血液行政の最重点課題であるため、この成果の社会的意義は大きいと考えられる。
その他のインパクト
公開シンポジウム:人工血液をつくる(平成18年2月11日、19年2月10日、20年2月11日、計3回開催)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
6件
総説
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
37件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
公開シンポジウム:人工血液をつくる(平成18、19、20年度開催)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okamura, Y., Takeoka, S., Eto, K., et al.
Development of fibrinogen γ-chain peptide-coated, adenosine diphosphate- encapsulated liposomes as a synthetic platelet substitute
J. Thromb. Haemost. , 7 (3) , 470-477  (2009)
原著論文2
Okamura, Y., Goto, T., Niwa, D., et al.
Fabrication of free-standing albumin-nanosheets having hetero-surface
J. Biomed. Mater. Res. A , 89 (1) , 233-241  (2009)
原著論文3
Shintani, T., Iwabuchi, T., Soga, T., et al.
Cystathionine b-synthase as a CO-sensitive regulator of bile excretion
Hepatology , 49 (2) , 141-150  (2009)
原著論文4
Tamura N., Kitajima I., Kawamura Y., et al.
Important regulatory role of activated platelet-derived procoagulant activity in the propagation of thrombi formed under arterial blood flow conditions
Circ J. , 73 (3) , 540-548  (2009)
原著論文5
Okamura, Y., Fujie, T., Nogawa, M., et al.
Hemostatic effects of polymerized albumin particles carrying fibrinogen γ-chain dodecapeptide as platelet substitutes in severely thrombocytopenic rabbits
Transf. Med. , 18 (1) , 158-166  (2008)
原著論文6
Okamura, Y., Utsunomiya, S., Suzuki, H., et al.
Fabrication of freestanding nanoparticle-fused sheets and their hetero-modification using sacrificial film
Colloids and Surf A: Physicochemical and Engineering Aspects , 318 (2) , 184-190  (2008)
原著論文7
Morikawa, T., Kajimura, M., Ichikawa, M., et al.
Three-dimensional imaging of growing thrombus in vivo
Microvascular Reviews and Communications , 2 (1) , 8-12  (2008)
原著論文8
Matsumoto, A., Kamata, T., Takagi , J., et al.
Key interactions in integrin ectodomain responsible for global conformational change detected by elastic network normal-mode analysis
Biophys J. , 95 (6) , 2895-2908  (2008)
原著論文9
Li M, Zhao MQ, Kumar SS, Xie LX, et al.
Protective effect of tetramethyprazine and salvianolic acid B on apotosis of rat cerebral micorvascular endothelial cell under high shear stress
Clin. Hemorl. Microcirc. , 38 (2) , 177-187  (2008)
原著論文10
Chung, J., Suzuki, H., Tabuchi, N., et al.
Identification of tissue factor and platelet-derived particles on leukocytes during cardiopulmonary bypass by flow cytometry and immunoelectron microscopy
Thromb. Haemost. , 96 (4) , 368-374  (2007)
原著論文11
Okamura, Y., Fujie, T., Maruyama, H., et al.
Prolongation effects of hemostatic ability of poly(ethylene glycol)-modified polymerized albumin particles carrying fibrinogen γ-chain dodecapeptide
Transfusion , 47 (8) , 1254-1262  (2007)
原著論文12
Fujie, T., Okamura, Y., and Takeoka, S.
Ubiquitous transference of free-standing polysaccharide nanosheet in the development of a nano-adhesive plaster
Adv. Mater. , 19 (8) , 3549-3553  (2007)
原著論文13
Okamura, Y., Handa, H., Suzuki, H., et al.
New strategy of platelet substitutes for enhancing platelet aggregation at high shear rates; cooperative effects of a mixed system of fibrinogen γ-chain dodecapeptide- or glycoprotein Ibα-conjugated latex beads under flow conditions
J. Artif. Organs , 9 (2) , 251-258  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
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