赤血球・酸素輸液の有効利用を目的としたヒト組換型アルブミン修飾製剤の開発

文献情報

文献番号
200808007A
報告書区分
総括
研究課題名
赤血球・酸素輸液の有効利用を目的としたヒト組換型アルブミン修飾製剤の開発
課題番号
H18-創薬・一般-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
末松 誠(慶應義塾大学医学部 医化学教室)
研究分担者(所属機関)
  • ライアン マーシャル ベートマン(慶應義塾大学医学部 医化学教室 )
  • 片山 富博(愛媛大学医学部)
  • 中城 圭介(ニプロ株式会社 医薬品研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は「PEG-hrAlbを救急救命で使用可能な酸素供給補助製剤」として確立することを目的とし,脳・肝臓等の臓器微小循環機能評価を申請者らが独自に開発した単一微小血管酸素分圧計測技術・組織NO生成バイオイメージング計測技術及び体内残存赤血球のメタボローム解析などの最先端技術を駆使して前臨床性能評価を行う.最終年度となるH20年度では製剤の物性評価・安全試験を更に検討し,加えて前臨床試験を行った.
研究方法
合成したPEG-rHSAの40°C及び60°Cにおける保存安定性及び120万luxhrの曝光条件での光安定性について評価を行った.動物実験に関してはWistar雄性ラットを麻酔後,全血液量の40 %を脱血し,ショック状態とした.脱血終了から30分間後に脱血量と同量の輸液を5分かけて投与し,血圧の変化を観察した.また,輸液投与の5分前と投与終了後30分後に右大腿動脈から約100 uL採血し,血液ガスを測定した.
結果と考察
PEG- rHSA原薬は添加剤なしでは室温保存よりも冷蔵または冷凍保存での安定保存が適していると推察された.今後,安定化剤を添加した製剤での安定性を評価して保存条件を決定していく必要がある.一方,前臨床試験として出血性ショック状態モデルを作製して輸液を行った結果,出血性ショック時PEG-rHSAを投与した場合にはrHSAを投与した場合と比較してより少ない濃度でもほぼ同様の効果が得られることが示された.血圧の測定,血液ガスの測定から,出血性ショックモデルにおいて,PEG- rHSAはrHSAと比較して少ない濃度で状態を回復させ維持できることが示された.今後,最適な輸液量を決定するために更なる検討が必要であると考えられた.
結論
製剤の特性評価および前臨床試験を実施し,救命救急への応用を目的とした安全かつ効果的な輸液製剤であるPEG-rHSAを新たに開発した.PEG-rHSAは組織への酸素輸送を維持し,臓器の代謝を維持することを示した.

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200808007B
報告書区分
総合
研究課題名
赤血球・酸素輸液の有効利用を目的としたヒト組換型アルブミン修飾製剤の開発
課題番号
H18-創薬・一般-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
末松 誠(慶應義塾大学医学部 医化学教室)
研究分担者(所属機関)
  • ライアン マーシャル ベートマン(慶應義塾大学医学部 医化学教室)
  • 中城 圭介(ニプロ株式会社 医薬品研究所)
  • 片山 富博(愛媛大学医学部 臓器病態制御医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はショック時に投与されるヘモグロビン含有製剤の投与量を必要最低限とし,かつ最大の組織ガス交換効率を発揮するヒト組換型アルブミン修飾製剤を創製し血液製剤の確保と使用量最適化に資する技術開発を行うことを目的とした.
研究方法
脳・肝臓等の臓器微小循環機能評価を行うにあたり,独自に開発した組織NO生成バイオイメージング計測技術,代謝物を網羅的に一斉解析可能なメタボローム解析法,及び体内残存赤血球のメタボローム解析などの最先端技術を駆使して前臨床性能評価を行うことで早期実現に向けた検討を行った.
結果と考察
前臨床試験に先駆けて製剤の物性評価・安全試験を検討した.その結果,分子量5000および10000のPEGにおいて,rHSA分子あたりのPEG結合数を合成段階でのPEG -NHSの添加濃度により制御することが可能であることが明らかになった.さらに合成プロトコールに従って調製したPEG-rHSAはサンプル間の物性値にばらつきがほとんど認められなかったことから,物性の安定した製剤の調製を達成したことが示唆された.長期保存,加速,温度及び光苛酷試験による安定性実証から製剤の十分な安定性を確認した.次に体内動態の実測と排泄予測を行った結果,PEG-rHSAをショック病態の補助製剤として用いる際,PEG-rHSAの投与量軽減につながることが示唆された.PEG-rHSAの生体内作用機序を明らかにするために脳局所微小血管のNO産生量を生体計測から実証した.
結論
脳微小循環のNOイメージングおよび肝臓・心臓におけるcGMP値の測定により,出血性ショックモデルにおいて,PEG-rHSAは血液粘度を維持することで血管のNO生成量を増加させ,血管を拡張させるために有効である.PEG-rHSAの投与は肝臓および心臓のNO生成量を増加させるために有効であることが明らかになった.以上から,PEG-rHSAは微小血管において,血管を拡張することで酸素運搬能を維持するための人工酸素運搬体として利用可能であることが示された.

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200808007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新たな酸素運搬体製剤の開発を行うと共に,評価系に多様な最新技術を利用することで,これまでにない詳細かつ信頼性のある製剤評価が可能になった.特に出血性ショックからの蘇生,主に酸素代謝による組織内代謝物を網羅的に解析する手法(メタボローム解析法)を用いて,製剤の有効性を評価した.一方,本研究で開発した輸液製剤は従来のヘモグロビンをベースとした酸素運搬体とは全く異なるコンセプトで開発され,実験結果より十分な蘇生能力を有することを示し,当該分野における新たな可能性を示した.
臨床的観点からの成果
酸素輸液の原料となるヘモグロビンは現在のところ期限切れ輸血の赤血球を用いているが、組換型ヒトヘモグロビンの量産が不可能である現在、補助製剤として本製剤を用いることにより,必要最低量のヘモグロビン製剤で微小血管への酸素運搬効率を増加できる期待があり、血液製剤の有効利用に繋がる技術と位置づけられる.
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
将来の献血事業に対して,ヒトや動物由来の成分を極力含まない新たな輸液製剤としての研究展開が期待される.
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishikawa,H., Naito, T., Suematsu, et al.
Curriculum vitae of intestinal intraepithelial T cells: their developmental and behavioral characteristics.
Immunological Reviews , 215 (1) , 154-165  (2007)
原著論文2
Tsunehiro Shintani, Takuya Iwabuchi, Makoto Suematsu, et al.
Cystathionine β-Synthase as a Carbon Monoxide-Sensitive Regulator of Bile Excretion
HEPATOLOGY , 49 , 141-150  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-