文献情報
文献番号
200808003A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトES細胞を用いた安全な人工血液の開発に関する研究
課題番号
H18-創薬・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
湯尾 明(国立国際医療センター 研究所 血液疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血液成分の輸注は現代医療において不可欠であるが、ボランティアからの供給には限りがあり、感染症の媒体となる危険も有る。従って、クリーンな環境で安定して血液細胞成分を生成する技術を開発していくことは極めて重要である。また、骨髄の造血幹細胞から血液細胞成分を増幅する試みは長年研究されてきたが、造血幹細胞は体外では充分に増幅しないことも確認された。これらのことを踏まえて、本研究では無限増殖能を有するヒトES細胞から無フィーダー環境において血液細胞産生を試みた。
研究方法
細胞は、京都大学再生医科学研究所で樹立されたサルES細胞(CMK-6)、ヒトES細胞(KhES-3)、ヒトiPS細胞(253G1)を用いた。血液細胞分化培養においては、前半の細胞凝集塊(sphere)形成に引き続いて後半の接着平面培養に移行する2段階無フィーダー培養を試みた。
結果と考察
ヒトES細胞を用いての分化誘導においては、第1段階のsphere形成は、6種類の増殖因子・サイトカイン(IGF-II, VEGF, SCF, Flt3-L, TPO, G-CSF)存在下に3日間行われ、その後、ゼラチンコート培養皿の上にて第2段階の接着平面培養に移行した。接着したsphereからは2週間程度で嚢状構造物(sac-like structure)が形成され、構造物の内部に球状細胞(血液細胞)が充満した。産生された血液細胞は、CD45陽性、CD34わずかに陽性、CD11b、CD33陽性の比較的成熟した骨髄系(食細胞系)の血液細胞で、そのうち、形態、細胞組織化学染色、表面抗原などから30-50%が好中球と考えられた。これらの好中球は、in vitroでは遊走能、貪食能、活性酸素産生能を示し、in vivoでも遊走能を発揮した。このような成熟好中球が効率よく産生できるES細胞の分化誘導システムは、霊長類では世界初であり、顕著な成果が得られたと言える。また、ヒトiPS細胞からも嚢状構造物を経て血液細胞の産生が確認された。さらに、サルES細胞の系において、活発に増幅するCD34、 CD45、VE-cadherin陽性細胞が確認された。
結論
ヒトES細胞を用いて、高効率な2段階無フィーダー血液細胞、好中球分化誘導法を確立した。また、ヒトiPS細胞でも同様の手法の有効性を確認した。
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
-